TRADITION

〈鎌倉〜安土桃山時代〉
日本のスパイスの歴史

2026.1.6
〈鎌倉〜安土桃山時代〉<br>日本のスパイスの歴史

わさびや生姜、七味唐辛子……。いまや日本人の食生活に欠かせない「スパイス」は、どのようにして日本で親しまれるようになったのか。その歴史をひも解こう。今回はエスビー食品制作協力のもと、鎌倉時代〜安土桃山時代に日本でスパイスがどのように使われていたのか、その役割に迫る。

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〈鎌倉〜室町時代中期〉
料理文化の発展と
スパイスの利用の関係性

織田信長が徳川家康をもてなした本膳料理
【1582(天正10)年 5月15日】の再現模型/奥村彪生監修/ 御食国若狭おばま食文化館蔵

中国の禅宗寺院から「精進料理」が伝わった鎌倉時代。植物性の食材が中心で淡泊な味わいの料理をより美味しくするため、出汁を取り、醬油や味噌などで味をつけるといった調味技術が広まった。だが、スパイスはというと、ニンニクやネギなど「五葷」と呼ばれる香りの強い食材は、煩悩を刺激するとして避けられていた。

そして室町時代になると、いまの日本料理の原型ともいえる「本膳料理」が確立される。素材の味わいを生かすことをベースに、刺身にはわさび、肉料理には山椒など、風味づけや臭み消しといった料理全体に深みを出す役割をスパイスは担うようになっていった。いまの日本の食卓の礎となる味つけが垣間見えるのではないだろうか。

16世紀に制作された『酒飯論』。食事の様子。うつわを手に持って食べる作法も精進料理が元に
『酒飯論』/国立国会図書館デジタルコレクション

〈室町時代後期〜安土桃山時代〉
交易で広がった
新たな外来スパイスの世界

ポルトガルやスペインなどのヨーロッパ諸国が、新たな航路や大陸を発見し、世界の一体化が進んだ大航海時代。日本にも、種子島にポルトガル船が漂着し、鉄砲が伝来した1543年頃から、ポルトガルとの貿易「南蛮貿易」がはじまり、1550年頃には「クローブ」が持ち込まれたとされている。中国や東南アジアと日本をつなぐ「中継貿易」で栄えていた琉球王国からは、染色剤や薬品として「ターメリック」がもたらされた。

そして江戸時代になると、中国からスリランカが原産の「セイロンニッケイ」が生きた樹木として伝来した。さらに、鎖国政策が進み、多くの商館が閉鎖する中、長崎につくられた人工島・出島でのみ貿易が許されたオランダからは、「ナツメッグ」が輸入された。

唐辛子の普及は “鎖国”の影響?

唐辛子の日本への伝来は、諸説ある。16世紀中頃に鉄砲を伝えたポルトガル船の漂着によってもたらされた説、16世紀末に豊臣秀吉が朝鮮出兵をした際、家臣の加藤清正が持ち帰った説、そして17世紀初頭にポルトガルからタバコとともにもたらされた説だ。

(右)唐辛子売りは巨大な唐辛子の張り子を背負い、「とんとん唐辛子、ひりりと辛い~」という売り文句で呼び込みをしながら販売をしていたそう
『近世流行商人狂哥絵図』/ 国立国会図書館デジタルコレクション

いずれにせよ、日本では江戸時代になると「唐辛子」が庶民に普及した。当初は足袋に入れて霜焼け予防として使うなど、薬として使われていたが、次第に食用も台頭してくる。「七味唐辛子」の誕生だ。漢方薬を元に7種の生薬を組み合わせた七味は、当時江戸で流行していた「蕎麦」の風味を高めるものとして、瞬く間に江戸から全国へと広まった。唐辛子の姿をした商人「唐辛子売り」も現れたのだとか……。さらに、各地の風土に適応する唐辛子の栽培の容易さも、普及への一助となった。

「江戸のファストフード」として人気を博した蕎麦。薬味はわさびが定番だったが、温かいと辛さが消えてしまうため、七味が使用されるようになった

世界ではスパイスを求めて
争奪戦が勃発⁉

『アジア新図』/ColBase(https://colbase.nich.go.jp

大航海時代を経て、新たな航路が開拓されたヨーロッパでは、スパイスの用途が「肉の保存」になり大量消費が進む。さらに新大陸から新たな飲食物ももたらされたことで、食は「生存のためのもの」から「味を楽しむもの」に変化。そんな中、独自の香りをもつクローブやコショウなどの需要は一気に高まったが、その栽培は東南アジアの一部エリアに限定されていた。これらを求め、ヨーロッパ各国が熾烈な争奪戦を繰り広げた。

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江戸時代〜明治以降の
日本のスパイスの歴史

 
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日本のスパイスの歴史
01|独自のスパイス文化が花開くまで
02|縄文〜弥生時代
03|飛鳥〜平安時代
04|鎌倉〜安土桃山時代
05|江戸時代〜明治以降

text: Discover Japan cooperation & photo: S&B FOODS
2025年11月号「実は、スパイス天国ニッポン」

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