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日本のスパイスの歴史
|独自のスパイス文化が花開くまで

2026.1.5
日本のスパイスの歴史<br><small>|独自のスパイス文化が花開くまで</small>

独自の香りや味わいをもち、料理の風味や彩りを高めてくれるものとして、食卓に欠かせないスパイスやハーブ。いまでは料理への活用が主流だが、スパイスの歴史を見ていくと、はじめからそうではなかったようだ。たとえば、古代エジプトではピラミッドの建設時に、労働者が体力をつける強壮剤として「ニンニク」が食べられていたり、紀元前2500年前の中国では、スパイスを加えた香酒や香飯を神に供えていたりなど、世界では、薬用や祭事用などとしての役割を担っていたそう。では、日本はどうだったのだろうか。今回、エスビー食品制作協力のもと、日本×スパイスの歴史について縄文時代から遡る。

知恵とロマンが詰まった
スパイシーな関係をひも解く

「カラスザンショウ」や「エゴマ」の実が土器の表面に残る痕跡「圧痕」

いまから1万年以上前の縄文時代の日本にも、スパイスは存在していたとされる。縄文時代の各地の住居跡から「山椒」が発掘されているほか、土器の表面に残る痕跡「圧痕」には「カラスザンショウ」や「エゴマ」の実が残っているなど、身近な存在だったようだ。カラスザンショウの成分には、防虫効果があることから、貯蔵していた食料の虫除け剤として使用していたことがうかがい知れる。弥生時代になると、山椒以外にも、生姜やみょうがなども存在していたことが、『魏志倭人伝』の記述にある。しかし、自生はしていたが、日本では肉の臭みを消したり、風味を楽しむといった利用をしていたかはさだかではない。

『古事記』に記されていたスパイス

スパイスが日本の書物に登場したのは、712年に編纂された日本最古の歴史書『古事記』だ。山椒や生姜のことを指す「はじかみ」は、歯で噛んで辛いもの、顔をしかめる刺激的なものとして、「蒜(ニンニク)」は、滋養強壮のためのものとして伝わる。また、奈良時代の地方諸国の税に関する帳簿である東大寺正倉院文書の『正税帳』(734年)には、「胡麻子(ゴマ)」が、律令の施行細則をまとめた『延喜式』(927年)には「干薑(乾生姜)」や「芥子(からし)」が、日本最古の薬物辞典『本草和名』(918年)には「山葵(わさび)」が、平安時代中期に成立した長編小説『源氏物語』(1008年)には「蒜」が記されており、現在の日本で親しまれているスパイスの数々は、この時代から栽培、活用されていたことがわかる。

また、奈良時代には海外からもスパイスが上陸する。聖武天皇の宝物を納めた「正倉院」には、コショウやシナモン、クローブなど約40種がいまも保存されており、その目録として薬草名や使用法なども記載された『種々薬帳』も所蔵されている。

独自のスパイス文化が花開く

16世紀後半頃に「唐辛子」が日本に伝来して以降、日本で鎖国政策が採られたことで、独自のスパイス文化が花開く。たとえば唐辛子。当初「薬」として渡来し、江戸時代には日本橋・薬研堀町で、漢方薬を元に生薬を組み合わせた「七味唐辛子」として売り出されたところ、当時江戸で流行していた「蕎麦」の風味を高める「薬味」として人気を博し、日本全国へと広まった。「わさび」もまた、江戸で流行した「寿司」の薬味としてブームとなった。

約200年続いた鎖国が終わり、各国との交流が盛んになった明治時代。ここで、いまや日本の国民食と言っても過言ではない、「カレーライス」がイギリスから到来する。当時は高級西洋料理として、上流階級の食べ物であったが、文明開化による洋風化、栄養価の高い食べ物として学校給食や軍隊への採用、家庭向けのカレー粉の登場などにより、大衆化が進んだ。さらには、「カレーうどん」や「カレー蕎麦」、「カレーパン」など、日本生まれのアレンジされたカレー料理も誕生し、日本の食文化のひとつとして発展した。

四方を海に囲まれ、大小さまざまな川も各地に流れる、豊かな風土をもつ日本。新鮮な海、山の幸が比較的容易に手に入ることから、刺身にわさびや、冷奴に生姜など、スパイスは素材の味を生かす「薬味」としての活用が多かったようだ。伝統的な食文化を大切にしながらも、スパイスの香りや風味をしっかりと生かす海外の食文化も受け入れてきたことで、スパイスを自由に使いこなす豊かな食体験が、いまなお形成され続けているのではないだろうか。

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縄文〜弥生時代の
日本のスパイスの歴史

 
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日本のスパイスの歴史
01|独自のスパイス文化が花開くまで
02|縄文〜弥生時代
03|飛鳥〜平安時代
04|鎌倉〜安土桃山時代
05|江戸時代〜明治以降

text: Discover Japan cooperation & photo: S&B FOODS
2025年11月号「実は、スパイス天国ニッポン」

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