岩手県・花巻市《BrewBeast》
ローカルをつなぐクラフトビール
土地の魅力を味わう、ブルワリーの物語とは?

岩手県花巻市のブルワリー「BrewBeast(ブリュービースト)」は、ただのクラフトビールではない。地域とのコラボレーションを通じて生まれる個性豊かなビールたちは、人と人、人と土地をつなぐ“潤滑油”のような存在。土地の魅力を味わう、クラフトビールの物語をご紹介。
クラフトビールで“驚き”を生み出す

自身が経営する飲食店はすべて自らの手でリノベーション。業種問わずコラボレーションしていくことで、ビールを地域の人やモノをつなげる潤滑油のような役割にしたいと考える
「生まれ育った街の魅力って絶対あるのに、若い頃は気づかないんですよね。外に出たときに、地元の魅力を知らなかった自分が恥ずかしいと思ったんです」と話すのは「BrewBeast」のオーナー・高橋亮さん。自身の経験から岩手・花巻の魅力を知ってもらう場として複数の飲食店を経営してきた。だが、そのよさはお客が店に足を運ばなければ伝わらない。そこで考えた次の一手が、花巻に訪れるきっかけになるようなクラフトビールの醸造だった。
「遊休不動産を活用したまちづくりの企画があり、そこで対象物件となったのが、十数年も空きビルになっていた酒の卸問屋。外壁にビールメーカーのロゴが大きく描かれているのを見て、ビールの卸で栄えた建物を、ビールで復活させたらおもしろいとなったわけです」。

誰もが美味しいと感じるビールは絶対に存在しないが、誰かに突き刺さるビールは必ず造れると、続々と新作を生み出す
つながらなかったものをつなげるコミュニケーションツール。そんなイメージを抱いて動き出した花巻初のクラフトビール計画だが、卸問屋のビルを取得する話はあえなく流れてしまう。「とはいえブルワリーをやると宣言していたので、やらなければうそつきになってしまう。そこでたどり着いたのが、花巻駅前にあるいまのビルだったんです」と、たった一人でブルワリーを立ち上げた高橋さん。
2019年の開業時は全国でクラフトビールブームが起こっていたが、風土を主張すると先入観にとらわれるという理由から、あえて花巻の名は隠して販売。

ジャケ買いしたくなるようなデザインをスタッフとセッションしながら考案。まれにアーティストとのコラボラベルも登場
「ジャケ買いしてもらい、飲むと旨いみたいな。どこで造っているのかを見たら、花巻? どこ? みたいな」と、郷土愛を逆手に取った戦略が功を奏していまがある。もともと飲食事業のひとつとして考えていたが「造り方次第でワイン、ウイスキー、日本酒と、いろいろなお酒の風味を表現できちゃうのがクラフトビールの魅力かな」と、ビールの知識がない状態からのスタートながら、すでに醸造の沼から抜け出せなくなりつつある。

クラフトビールをはじめて口にする人が多かった花巻だが、いまではブルワリー併設のビアバーが老若男女を問わず賑わうほどに成長
人や街をビールでつなげるためにも、街中でブルワリーを営むことが不可欠。そんな想いを抱く高橋さんは、年内に市街地に第2工場の建設を予定しているのだとか。「5000㎡ほどの広大な敷地なので、工場の目の前は人々が自由につながる芝生広場にしたいですね」と、クラフトビールを起点に花巻を“かっこいい田舎”にしたいと願っている。
商品ラインアップ
LIGHTNING

国産ビールの主流・ラガーと同じスタイルながら味わいは似て非なるもの。ホップ由来のシトラスフレーバーに稲妻が走る。
ESPRESSO STOUT

地元ロースターとコラボしたドリンカブルなスタウト。新鮮なエスプッレソとコーヒー豆を漬け込んだ深みのある味わい。
FRUIT OF THE DOOM

乳酸を出す酵母によりサワーのような酸味を実現。ローストした県産のコナラによるバニラの香りが、味に厚みをもたせている。
IMPACT

まずは飲んでほしい定番とあり、DIYで初手に買うインパクトドライバーから命名。4種のホップがフルーティさを織りなす。
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Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
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定休日|不定休
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text: Natsu Arai photo: Shiho Akiyama
2025年7月号「海旅と沖縄」