「伊達冠石」イサム・ノグチも魅了した伝説の石を求めて、宮城県の大蔵山スタジオへ
2019年新しく生まれ変わった渋谷PARCOにオープンした「Discover Japan Lab.」。そのメイン什器であるテーブルの台座には、伊達冠石を使用しています。世界で唯一、宮城県南部でしか採れない伊達冠石を求め、採石元である大蔵山スタジオを訪れました。
大蔵山スタジオ代表取締役
山田能資さん(右)
1980年、宮城県生まれ。ロンドンのアートスクール、セントラル・セントマーチンズ芸術大学グラフィックデザイン科卒業。2017年、大蔵山スタジオの代表取締役に就任
14sd/Fourteen stones design 代表
林 洋介さん(左)
1976年、京都府生まれ。何気ない日常から生まれる感覚を大切にし、デザインに常に新鮮な補助線を引くような新しいデザインのあり方を発信。Discover Japan Lab.の設計を担当した
2000万年という時をかけて大蔵山の大地にかたちづくられてきた伊達冠石は、宮城県南部、丸森町にある大蔵山採石場で採掘される、両輝石安山岩系に属する火成岩。「大蔵山スタジオ」は、大正末期に初代・山田長蔵が採掘をはじめたことにその起源をもつ、ここでしか採れない伊達冠石の採掘を行う採石元だ。
今回、Discover Japan Lab.の店内に象徴的に置かれるテーブルの台座にはその伊達冠石が使われる。空間設計をした14sdの林洋介さんは以前から石に惹かれていたのだという。
「設計をするにあたり石を使いたいと思いました。リサーチをしている中でご紹介していただいたのが大蔵山スタジオの伊達冠石でした。はじめて見たときからその表情の豊かさに圧倒されました」。
大蔵山スタジオ代表の山田能資さんはこの山で代々続く石材店の5代目。墓石、モニュメントという建築資材としてだけでなく、デザイン事業ではアート、デザイン、建築分野の専門家たちとのモノづくりをプロデュースし、いま世界的に注目を集める。
「日本には太古から巨石信仰があり、神として祀られるなど、石は神道と結び付いてきた歴史があります。私たちはこの土地で長年培ってきたクラフツマンシップとともに、自然と人の結び付きの大切さ、大昔から日本人がもっている石を奉る精神文化を伝えたいと思っています」。
そんな山田さんが大切にしているのは、高度経済成長期に掘り起こされ荒廃した山に土を埋め戻し、緑を植え、山の景観を整え“山に命を返す”ことに尽力してきた先代の想い。
「現代の人々にも大昔の人たちと同じように、難しいことは考えずにピュアに石に対面し対話をしてもらいたいと思っています。いにしえの人々がもっていた石とのつながりを現代のライフスタイルの中に取り戻すことが私たちの役割だと考えています」。
その想いに応え、石がもつ精神性を大切に空間を設計した林さん。
「商業施設で石を扱うことには多くの制約があったのですが、一つひとつ異なる表情の豊かさを大切に設計しました。ここに来て石に触れたことで、石は生き物なんだと強く思いました。石の発するエネルギーを感じていただける空間になっていると思います」。
イサム・ノグチをはじめ、長年、アーティストや建築家を魅了してきた伊達冠石。神秘的な魅力をぜひ店頭で感じていただきたい。
大蔵山スタジオ
住所|宮城県伊具郡丸森町大張大蔵字小倉10-1
https://okurayamastudio.com
※ツアーでのみ見学可。
詳しくはウェブをご覧ください
text: Takashi Kato photo: Kazuma Takigawa
2019年12月号 特集「人生を変えるモノ選び。」