陶芸家《壷田和宏・亜矢》
高千穂の大自然で生まれる、
土の表情を映すうつわとは?
宮崎・高千穂の広大な土地に生活と創作の場を築いた壷田夫妻。登り窯で焼き、産地ごとの土の表情がよく出ているうつわは、「火と土と暮らす」という二人の生き方に通じるものがある。東京・渋谷パルコにて2025年1月10日(土)~1月18日(日)にかけて開催される「壷田和宏・亜矢 個展」。自然を映す、壺田夫妻のおおらかなうつわに出合ってみては。
※個展初日の入店について、一部時間帯に整理券が必要です。詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)、または公式オンラインショップをご確認ください。
Discover Japan公式オンラインショップでは、本展の一部作品を2026年1月13日(火) 20時より順次販売予定です。(店頭の販売状況により日程・内容が変更になる場合があります)
壷田和宏・亜矢(つぼたかずひろ・あや)
愛知県立芸術大学時代に出会って結婚した二人。3人の子どもを育てながら陶芸家の道を歩んできた。2009年に宮崎・高千穂に移住し、住居兼工房を自作。ヤギや猫も仲間入りし、暮らしを楽しんでいる。
火・土・水……自然と暮らしをつなぐうつわ

三重・伊賀の土を用いた焼き締めの土鍋、熊本・天草白磁の皿や乳鉢、そして地元・高千穂の黒原土でつくる素朴な鉢。さまざまな土を使い、薪窯で焼く壷田夫妻のうつわは、どれもおおらか。食卓が楽しく温かな空気に包まれる。
二人は愛知・瀬戸で出会い、伊賀を経て、16年前に宮崎県北部の高千穂に移住した。山の中腹にある約3万坪の敷地に自宅と工房をつくり、登り窯をつくった。当時は第三子が生まれたばかりというから驚くが、その末っ子も春から寮生活をはじめ、夫婦二人の暮らしに。自分たちのものづくりのリズムになってきたそうだ。この力強い自然のエネルギーとゆるやかな暮らしのリズムが、壷田夫妻のうつわに宿っている。

「広々として、空気が気持ちのいい場所でゼロからはじめたかった」と、高千穂の丘陵地に生活と創作の場をこしらえた。谷の向こうに阿蘇の山々が見える
瀬戸は日常使いのうつわを供給してきた1000年の歴史がある陶器の産地だ。伊賀は茶の湯の文化があり、土鍋の土が採れる地でもある。しかし高千穂にはうつわの文化的な土壌はなく、質実剛健といった感じだと和宏さん。
「伊賀にいた頃は灰かぶりやるび窯変など薪窯の作品らしさを求めていましたが、ここでは周りに響かない。そういうテクスチャーがなくても、ただ薪で焼くだけで美しいのだと気づきをもらいました」
装飾が削ぎ落とされ、本質的なところが見えてきたという二人に、高千穂の大地はすてきなギフトを用意していた。
“いま”の感覚を大事に、等身大のものづくり

高千穂に移住してから見つけた黒原土。かなり特殊な土で、ほかより低い温度で焼成する。工房では伊賀、唐津、天草などの土も用い、産地ごとの表情を生かす
高千穂に来て裏山の尾根筋を散歩しているときに思いがけず出合ったのが、二人が黒原土と呼ぶ土だ。岩石が露出する岩肌に、白く光る1㎝ほどの線があった。その真ん中が水晶の層で、周りが粘土になっている。棒で掘って持ち帰り、試しに猪口を焼いてみたらすごくいい。地元の土での焼物づくりを半ば諦めていた二人にとってうれしい発見だった。
一般的な陶器の土は、風化した岩石が何万年もかけて沼や湖などに堆積し、干上がってできる水肥粘土。しかし、高千穂の黒原土は造山運動の中で圧縮作用を受けた岩石が粘土になったようなもの。フレッシュで、粒子が揃っていない分暴れる土だが、思った通りにならないところがいいという。

「焼き上がりが独特の存在感を放っているのです。この土に出合うためにここに来たのかなと思えるほど」と和宏さん。
後にも幸運な出合いがあり、10tトラック3台分の黒原土が夫妻の元にやってきた。黒原土を用いたうつわは、デンマークのレストラン「noma」が京都でポップアップをした際にも選ばれた。

白磁でも、薪の灰がかかったところがいい景色になる
二人は、地元の土だけでなく、さまざまな産地の土を使う。焼成はすべて登り窯で、月に一度のペースで火を入れる。
「薪窯だと山に入って木を採ったり、薪をつくって乾燥させたりと付随する作業がいろいろあります。その作業は制作で追い詰められているときはホッとします。窯詰めや窯焚き、冷やすのにも時間がかかるので、電気窯やガス窯のようにポンポン焼くことはできない。それが逆に、自分のペースに合っているのだと思います」と亜矢さんは言う。

子どもが小さい頃は二人で作業を分担することもあったが、いまでは互いにつくりたいもの、その時々の感覚にフィットするものをつくっているという。そのひとつが土鍋だそうだ。寄せ鍋にぴったりのおおらかな鍋、ご飯を炊くのにちょうどいいコロンとした深い鍋、スクエアな洋風の鍋なども今回の個展に並ぶ。

「個展で在廊した際、お客さま同士で土鍋に名前を付けていると話しているのを聞きました。棚にしまわずに飾ってあって、子どもたちが今日は○○ちゃんにしよう、って名前で呼ぶというの。うれしかったですね」と亜矢さん。
「うつわを使う人と、山や火がどちらも呼び合っている。僕らは自分の作品をつくるというより、その間に入って土や薪を使ってかたちをつくり、届けるパイプ役かな」と和宏さん。いまここにいられることに感謝し、なるべく等身大で、つくる時間を楽しみたいと。
line
渋谷パルコ《壷田和宏・亜矢 個展》開催!
個展作品ラインアップはこちら
≫続きを読む
壷田和宏・亜矢 個展
会期|2025年1月10日(土)~18日(日)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※個展初日は混雑緩和を目的とした入店整理券を事前配布のうえ開催いたします。
※詳細は公式Instagram(@discoverjapan_lab)にてご確認ください。
※サイズ・重量は掲載商品の実寸です。同じシリーズでも個体差があります。
text: Yukie Masumoto photo: Shiho Akiyama, Maiko Fukui
2026年2月号「地域を変える企業」


































