岐阜県・高山市《界 奥飛騨》
奥飛騨旅の新拠点!飛騨の木工デザインに包まれる滞在【後編】


2024年9月、北アルプスの山々に囲まれた奥飛騨温泉郷に、星野リゾートの温泉旅館「界 奥飛騨」が開業した。木工をはじめとする飛騨の伝統工芸に触れながら、山岳温泉ならではの湯を堪能できる。飛騨の木工デザインに包まれる、奥飛騨旅の新拠点。後編では、飛騨の恵みをデザインとともに味わう郷土食や文化に触れることができるご当地楽についてご紹介する。
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飛騨の恵みをデザインとともに
味わう特別会席

この地域の醤油ベースのみたらしを、だんごではなくマシュマロで体験。朴葉味噌などを焼く飛騨コンロの中は、黒ゴマのアイスクリームに竹墨のクランブルを添えて
(右)台の物/飛騨牛の朴葉(ほおば)つと焼き
きめ細かな肉質と美しい霜降りが特徴の飛騨牛。ロース、ヒレのふたつの部位を好みの加減に焼き付けて味わえる。塩、ワサビ、出汁醤油などで味変も。朴葉味噌と野菜の素揚げとともに
郷土の文化に触れるもてなしは、食もしかり。日本有数のブランド牛に数えられる飛騨牛、飛騨に多く自生する朴葉を用いた朴葉味噌、高山名物のあぶらえ(エゴマ)、ぼっか煮(川魚の甘露煮)、干し野菜、きり漬や赤かぶら漬といった漬物など、郷土食を生かした会席料理を半個室でゆったりと味わえるのだ。
それが「王道なのに、あたらしい」という界のコンセプトの下、斬新な趣向で供されるのがまた愉しい。
たとえば飛騨牛は、葦などを編んで食材を包む「つと」から取り出し、ペレット(焼き台)で自分好みに焼くというスタイルで提供。朴葉味噌には、大豆をすりつぶした「すったて」を混ぜ合わせて甘みを加え、野菜の素揚げを添えている。甘味は、みたらし団子ならぬ「みたらしマシュマロ」。香ばしい焼きマシュマロにみたらしあんがかかり、思いがけない組み合わせに舌鼓を打つ。

囲炉裏端を思わせるうつわに八寸、お造り、酢の物をのせて。ずいきの土佐和え、穴子とゴボウの博多真薯、フォアグラ干し柿など、地の食材や季節の料理を取り合わせた酒肴が並ぶ
(下)先付け/すったてと牛しぐれ
囲炉裏と山彦人形がお出迎え。すったてとはこの地の郷土料理で、大豆をすりつぶし、出汁に混ぜてつくる汁物。豆乳地の茶碗蒸し、すったて、野菜あんを重ねた一碗
囲炉裏端での食事を彷彿とさせるうつわや、あしらいなどの演出にも心躍る。先付けは囲炉裏をモチーフにした木箱にのって、開運と魔除けのお守り「山彦人形」とともにゲストを迎えてくれる。
煮物碗に続く宝楽盛りは、古材を使用したうつわが囲炉裏端そのもの。深い雪に閉ざされ、温かな火を囲み、料理や酒を囲炉裏端に置いて語らう田舎の食事の時間を追体験できる。

サラダに郷土料理、健康にいいおかずあれこれ、そしてメインは「干し野菜と豚肉の味噌鍋」。大根、ニンジン、カボチャなどの干し野菜、数種類のきのこ、飛騨を代表するきり漬など、具だくさんで旨みたっぷり
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地元の文化に触れる
ご当地楽「飛騨の匠体験」とは?

日本各地の界ごとにデザインが異なる風呂敷をバッグに。そのハンドルを曲木でつくるご当地楽「飛騨の匠体験」が人気。ひと晩かけて水を含ませた檜の薄板を熱湯に浸けると、木の繊維が柔らかくなるという性質を利用。繊維をほぐすイメージでゆっくりと木を曲げていく
界の愉しみのひとつが、地元の文化に触れることができるご当地楽だ。奥飛騨では飛騨の匠について学び、曲木を体験できる。
木を蒸して曲げる曲木を用いた椅子は、約180年前にドイツの家具デザイナーが考案。日本では飛騨の家具メーカー「飛騨産業」がそれまで無用とされていたブナ材を無駄なく活用し、1920(大正9)年につくり上げた。

いざ曲木に挑戦すると、木に熱と水分が加わればこんなに曲がるのかと驚く。館内にあるほとんどの椅子はこの技を用いたもので、飛騨の匠から受け継がれた技と心にあらためて感謝したくなる。
本館のフロントは、チェックアウト時にはじめて立ち寄ることになる(チェックインは客室で行うため)。隣にはセレクトショップがあり、地元のつくり手による工芸作品や美味しいものがずらり。飛騨の土産品選びに重宝する。

館内で使われているコーヒーカップや飛騨に自生する木を用いた木工製品、味噌煎餅、大浴場の湯上がり処でも提供する「飲む酢」など、飛騨にまつわる工芸品や食品をセレクト。いずれもセンスが光り、飛騨土産におすすめ
界 奥飛騨
住所|岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯138
Tel|050-3134-8092(界予約センター)
客室数|49室
料金|1泊2食付3万1000円~(税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、Master、VISAなど
IN|15:00 OUT|12:00
夕食|和食(食事処) 朝食|和食(食事処)
アクセス|車/中部縦貫自動車道平湯ICから約5分 電車/JR高山駅から車で約45分 バス/平湯バスターミナルから徒歩約3分
施設|食事処、トラベルライブラリー、ショップ、湯上がり処、大浴場、足湯ほか
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≫公式サイトはこちら
この冬、「界」を拠点に温泉ホッピング

日本有数の温泉地に23ある「界」を拠点に温泉めぐりを。各地の湯や伝統文化に浸る貴重な旅となる。
「冬のご当地楽」
開催期間:2024年12月1日〜2025年2月28日
《界 アルプス》
囲炉裏を囲み信州の厳冬を体験

寒さしのぎに南木曽地域で昔から使用されている「南木曽ねこ」をまとい、囲炉裏で自分好みに焼いた餅を信州味噌だれと合わせて堪能。酒を片手に主人と語らいながら、信州の田舎の冬のひとときを体感できる。
住所|長野県大町市平2884-26
客室数|48室
料金|1泊2食付2万8000円~(税・サ込)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaialps
《界 玉造》
雪景色の中で舞う石見神楽を鑑賞

島根にまつわる神話「ヤマタノオロチ伝説」を題材にした神楽を、鮮やかな衣装をまとったスタッフが軽快なお囃子に合わせて披露。約1300年前の出雲国風土記に美肌の湯と記される温泉地で、出雲文化にどっぷり浸る。
住所|島根県松江市玉湯町玉造1237
客室数|24室
料金|1泊2食付4万1000円~(税・サ込)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaitamatsukuri
《界 別府》
“湯治ジャグバンド”で湯煙とアートを堪能

湯治客で賑わった別府の夜は流しのギター弾きが闊歩し、賑やかな音楽に彩られていた。その歴史にちなみ、法被をまとったスタッフが豊富な温泉と湯桶から生み出される音色を、別府の風景のデジタルアートの中で奏でる。
住所|大分県別府市北浜2-14-29
客室数|70室
料金|1泊2食付3万2000円~(税・サ込)
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaibeppu
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text: Yukie Masumoto photo: Atsushi Yamahira
2025年2月号「温泉のチカラ」