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《琉球料理 美榮》が受け継ぐ
琉球王国のおもてなし
中編|琉球料理の神髄をひも解く

2024.8.2
《琉球料理 美榮》が受け継ぐ<br>琉球王国のおもてなし<br><small>中編|琉球料理の神髄をひも解く</small>

琉球王国は、中国や日本など外国からの賓客を料理でもてなしてきた。そこで発展した宮廷料理をいまに受け継ぐのが、那覇の料理店「琉球料理 美榮」だ。艶やかな漆器に盛られた数々の料理は、沖縄の食の原点を語っている。
 
中編では、王国のもてなし料理の最高峰であり、酒の肴に向く料理の数々に琉球料理をひも解く。

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<王国のもてなし料理の最高峰・東道盆>

東道盆は、中国から伝えられたといわれるもてなし料理。ごちそうを盛る盆のことも意味する。美榮では梯梧(でいご)コースでいただける。料理の数や内容は主人や料理人の才覚で決められるが、色やかたちがきれいなもので、必ず奇数に区切り、料理を取り合わせた。花いかはその中心的料理。

花いか
身の厚いクブシミ(甲イカ)に、包丁で縦に複雑な切り込みを入れ、湯にくぐらせて花を開かせ、カニといった美しいかたちをつくったもの。包丁の芸術と称され、料理人の技量と遊び心が表れる最高級の祝い料理。

ぽうぽう
小麦粉を水で溶かして円形に薄く焼き、あんだんすー(油味噌)を芯にして細巻きにしたもの。美榮ではすりつぶした豚肉と白味噌、ショウガを練り合わせたものを用い、あんだんすーよりあっさりした味わいに仕上げている。

カステラかまぼこ
沖縄を代表する魚・グルクンのすり身に卵をたっぷり加えて焼き上げたかまぼこ。ふんわり柔らかな食感と色合いからかまぼこの最高級品とされる。慶事はもちろん、清明祭、お盆やお彼岸などの行事に欠かせないかまぼこ。

ごぼう巻
下ゆでしたゴボウを芯にして薄切りの豚ロース肉で巻き、出汁、醤油、泡盛、砂糖を合わせた煮汁で軟らかく煮込んだ料理。「ぐんぼーまち」ともいう。ゴボウの風味と豚肉の旨みが重なり、祝い料理や折詰に重宝される。

昆布巻き
主にカジキマグロの身を昆布で巻き、醤油、砂糖、酒で煮付けたもの。昆布は沖縄で採れず、蝦夷から九州へと北前船で運ばれ、薩摩から琉球へともたらされた。貴重な昆布は出汁の素材としては使わず、料理の名脇役に。

揚げかまぼこ
グルクンのすり身に、細長くすりおろしたニンジンを加え、油で揚げたかまぼこ。蒸すよりも揚げるほうが日持ちする。冷蔵庫のなかった昔、油壺の中にかまぼこを入れ、空気を遮断することで保存した。

青かまぼこ
沖縄で高級魚として知られるウメイロ、アカマチ(ハマダイ)をすり身にし、からし菜の搾り汁を練り込んで蒸し上げたかまぼこ。青菜の風味で、白身のかまぼこそのものに品のよさが加わっている。

 

手間を惜しまない美榮の料理の数々|後編
 
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text: Yukie Masumoto photo: Wataru Oshiro
Discover Japan 2024年7月号「沖縄」

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