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陶芸家・田村 一の美味しい秋田案内【前編】
自由で実験的なうつわづくり

2024.5.31
陶芸家・田村 一の美味しい秋田案内【前編】<br>自由で実験的なうつわづくり

陶芸家・田村一さんが案内する美味しい秋田へようこそ。米処、日本酒処、発酵食処……秋田には美味しいキーワードがたっぷり。食いしん坊の料理好き、そして人好きの田村さん。つい通ってしまう“美味しい”と“会いたい”がある場所へ、いざ!

田村 一(たむら はじめ)
秋田県出身。早稲田大学大学院修了。大学時代、部活で陶芸をはじめる。都内レンタル工房のバイトを経て栃木・益子へ。仲間と共同スペースを借りる。2012年、秋田市へ戻り工房を構える。

田村一さんに会いに雪国を訪れる。

秋田の酒蔵・新政酒造の田植えに参加した際、もみ殻を作品づくりに利用できないか考えた田村さん。完成品を燻して新たな表現方法を見出した。残ったもみ殻の灰も釉薬にするなど実験を繰り返しながら作陶に励む

秋田市街地から車で約20分。太平山のふもと、旭川の畔に陶芸家・田村一さんの工房がある。撮影日、市街地で降っていた雨が工房に到着する頃には雪へと変わってしまうほど気候も違う。周りを山々に囲まれた自然との距離が近い環境であり、田村さんが幼少期に通っていた馴染みの場所でもあるという。そしてこの降り積もる雪こそ、自分が表現したい青磁のうつわそのものだとも教えてくれた。
「冬の晴れ間、青空が雪原に反射するイメージです」

独特のカーブはバーナーで乾燥させてテンションをかけることで理想のかたちへ

都内のレンタル工房で働いていた頃、全国の磁器土を取り寄せては試した結果、現在も使い続ける天草陶石に出合った。これが秋田の雪の色を出す。最近では信楽の透土も使って表現の幅を広げている。一方で、秋田県内にある知人のレストランやギャラリー、田んぼから灰やもみ殻をもらい、土地ならではのオリジナル釉薬もつくる。

友人たちから分けてもらった灰で釉薬をつくる

県産にこだわっているわけではなく、熊本でも滋賀でも、もちろん秋田でも、自分が使いたいものを使う。秋田であることは目的ではなく、田村さんの選択した結果だ。
このスタンスは田村さんが足繁く通う店にも当てはまる。

「僕の好きな人がたくさんいる秋田にぜひ来てください!」

「STOVE+」シェフ・齋藤毅さん。都内のレストラン、フランスやベルギーで修業後、2000年に地元である秋田市に店をオープン。田村さんとは酒を酌み交わすことも

「秋田が好きとはあまり言わないかな。“好きな人がいる土地が秋田”のほうがしっくりくる」

本当はあんまり教えたくないんだけど、という選りすぐりの店を紹介してくれた。訪れる先々で田村さんの表情は柔らかい。ニコニコと店主との会話を楽しんでいる様子がうかがえる。

田村さんがまだ帰りたくないというとき、ふらりと訪れるバー「サイドバック」。「満さま(店主・満獣院マグナム子さん)との会話も楽しく、部室のような存在です」

「秋田は人柄と圧倒的な自然が魅力」と草階さんが言うように、県外から訪れた旅人を快く受け入れ、温かく対応してくれる人たちばかり。この人たちに会いに行くことが、秋田への美味しい旅へとつながる。

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田村さんが通う秋田の美味
 
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text: Wakana Nakano photo: Norihito Suzuki
Discover Japan 2024年3月号「口福なニッポン」

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