FOOD

京の旬野菜直売所《里の駅 大原》
柏井 壽さんと巡る、京都・大原の美味しい店①

2023.12.2
京の旬野菜直売所《里の駅 大原》<br><small>柏井 壽さんと巡る、京都・大原の美味しい店①</small>

山間の集落に、ひっそりと佇む古刹が集まる大原はかつて平安貴族が隠棲していたという歴史ある地。そんな大原にいま、こぞって星付きレストランのシェフやオーガニック野菜を育てる農家さんが集まっているという。豊かな山里で育つ野菜を使った美食を提供する店も増え、盛り上がっている、新たな癒しの地・大原を柏井 壽さんと探る。
 
今回紹介するのは、オーガニック野菜を求めて名料理店のシェフも集まるという直売所「里の駅 大原」。大原で美味しい食材が育つ秘密とは?

文=柏井 壽
作家。1952年、京都府生まれ。京都人ならではの目線を生かしたエッセイや旅紀行文を執筆。小誌特集内「京都人の美味しい日常」でもエッセイを寄稿。

癒しの大原で美味しい食材が育つ秘密

洛北大原は、京都市内の北奥にあり、季節を問わず風光明媚な土地として知られていて、多くの旅人が訪れる人気観光地です。
 
とりわけ秋には京都有数の紅葉名所となることから、人出が絶えることはありませんが、清閑風雅が最大の魅力です。洛中が雅なら、大原は鄙。この対比を愉しむのが醍醐味です。
 
比叡山のふもとにあって、周りを山に囲まれた山里大原は、あちらこちらに田んぼや畑が広がり、それらを見守るようにして建つ民家が点在する、日本の原風景が、旅人の目や心を癒してくれます。
 
鄙びた山里ではありますが、雅な洛中との接点は、決して少なくありません。なぜなら、大原という土地は、洛中と、御食国と呼ばれる若狭とを結ぶルート上にあるからです。
 
この道筋は、鯖をはじめとする海産物の流通ルートだったことから、鯖街道と呼ばれています。幾筋もありますが、その代表である若狭街道の途中にあるのが大原なのです。
 
柴を頭にのせ、京の町まで売りに出掛けた「大原女」はその象徴でした。
 
大原は近年、美味しいものが醸され、集まる土地としての人気が高まっているのも、そんな歴史があるからです。

盆地ゆえの昼夜の気温差が美味しい野菜を育てる。オクラ、万願寺とうがらし、ナスなどの夏野菜が終わると畑も衣替え。10月から初冬にかけては、直売所に水菜、壬生菜やカブなどが並ぶ

中でも大原で育った野菜は、名料理人御用達としても知られ、京都の名店で使われる野菜の多くは大原産だといわれるほどです。
 
20年以上も前ですが、肉でも魚でもなく、野菜が主役の料理で一躍脚光を浴びた店の密着取材を一年半にわたって続けました。その店のご主人が足しげく通っていたのが大原。大原を我が庭のように駆け回り、自ら収穫したり、農家さんから野菜を分けてもらったりしていました。
 
毎週日曜に行われる朝市は、早朝店が開くと同時に、多くの人が訪れ、その中には京都を代表する料理人の姿がたくさんありました。プロが選ぶ食材なら間違いないとばかり、毎週のように通って、野菜や野の花を山ほど買って帰ったのを覚えています。
 
その朝市を毎日開催しているような直売所が「里の駅 大原」。
 
大原は昼夜の寒暖差が大きい盆地なので野菜づくりに適した土地なのだと、売り子の農家さんが教えてくれました。
 
大原を代表する野菜・赤紫蘇や万願寺とうがらし、オクラなどみずみずしさが際立った野菜をお土産にすれば、きっと喜ばれるだろうと思います。
 
せっかくここまで来たのだから、大原で美味しいものを食べたい。そんな願いをかなえてくれる、大原で育った野菜を使った人気の高い店を、2軒ご紹介しておきましょう。

line

里の駅 大原
常時30〜40軒の農家が収穫したての野菜を販売。農業を目指して移住する若手も多く、有機野菜や珍しい西洋野菜などバラエティに富む。日曜朝市が人気。
 
住所|京都市左京区大原野村町1012
Tel|075-744-4321 
営業時間|旬菜市場(産直品販売)9:00〜16:00、
花むらさき(レストラン)9:00〜15:30(ランチ11:00〜14:00(L.O.15:00)) ※朝市開催の日曜は7:30〜
日曜ふれあい朝市 日曜6:00〜9:00 
定休日|月曜(祝日の場合は翌日休)
www.satonoeki-ohara.com

 

カフェ《Somushi ohara》
 
≫次の記事を読む
 
   

 

photo: Makoto Ito, Katsuhiko Mizuno
Discover Japan 2023年11月号「京都 今年の秋は、ちょっと”奥”がおもしろい」

京都のオススメ記事

関連するテーマの人気記事