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「京都ホテルオークラ」創立130年の気品をまとう、渋沢栄一所縁のクラシックホテル

2019.10.24
「京都ホテルオークラ」創立130年の気品をまとう、渋沢栄一所縁のクラシックホテル

古都・京都が誇るこのクラシックホテルは、2018年で創業130周年となる。渋沢栄一が創立に関わった歴史的な本ホテルは、伝統に裏打ちされた品格で国内外の賓客をもてなしてきた。そんな「京都ホテルオークラ」の魅力をホテルを愉しむ3つのコツとともにご紹介しよう。

憧れのクラシックホテル

いまでこそ数多くのホテルが建ち並び、その人気を競い合っている京都だが、僕が子どもの頃には、両雄とも称される2軒のホテルが、都人の人気を二分していた。

〈京都ホテル〉と〈都ホテル〉がそれで、いまは「京都ホテルオークラ」、「ウェスティン都ホテル京都」と、それぞれ名を変えた。

7〜16階の吹き抜け。源氏物語をモチーフにしたステンドグラスが美しい。

プロ野球にひいきチームがあるように、当時の都人の多くは、ふたつのホテルのどちらかを愛用していて、僕の家は代々〈京都ホテル〉派だった。

慶弔を問わず、親族が集まるとき。知人友人の来洛時の宿泊所として。家族で外食を愉しむとき。祖父は必ず〈京都ホテル〉を選んだ。当然のように僕の結婚披露宴もこのホテルだった。

窓からは金戒光明寺、知恩院などが見渡せる

もちろん〈都ホテル〉派も少なくないわけで、知人が開くパーティともなると、敵陣に乗り込む、とはいささか大げさだが、アウェー感を余儀なくされたのだ。

そんな歴史をたどってきたせいもあって、『京都ホテルオークラ』の館内に足を踏み入れるときは、いまになっても、ほかのホテルにはない特別な感懐を抱いてしまう。

エグゼクティブフロアの中でも最もハイクラスなスイートルーム。

足繁く通った頃とは、建物はすっかり変わってしまったが、館内に流れる、荘厳かつ軽やかな空気は、往時となんら変わることがない。出会いの場となるロビーのクラシカルな雰囲気は、季節の花を囲むように配されたチェアによって生み出される。

鴨川を眼下にした圧巻の眺望

過度な緊張感を強いることなく、しかし思わず背筋を伸ばしてしまう、老舗ホテルならではの佇まいに寄り添うのが、「京都ホテルオークラ」を愉しむ、第1のコツ。

では第2のコツは何かといえば、それはいまの高層建築になったればこその愉しみである、類いまれな眺望だ。高層といっても、摩天楼のような東京のビルと違い、たかだか17階でしかないのだが、建築上の制約が多い京都市内にあっては、おそらくこれ以上は望めないだろう高層階からの眺めは、圧巻というしかない。

エグゼクティブフロアからの眺め。鴨川の向こうに大文字山(如意ヶ嶽)、南禅寺などを見渡せる東山側。遠くは比叡山までもが見える

運よく高層階の部屋が取れれば、その眺めを我がものにできるが、そうでなかったとしても、17階のレストランに足を運べば、洛の東西南北に点在する古刹名刹の在り処をつぶさにし、なおかつ上から見下ろすという、歴代の天下人ですら得られなかった光景を目の当たりにできる。

とりわけ鴨川を眼下にし、緑豊かな東山三十六峰を間近に望む、東側の眺望は圧巻。その裾野に点在する人気社寺も、くっきりとその姿を現す。

西側に目を転じれば西山が、北側には北山が、と三方を山で囲まれた京都盆地のあり様がよくわかり、さながら京都立体地図。

朝から満喫する贅沢な時間

3つ目としては美食を挙げておこう。古く〈京都ホテル〉と呼ばれていた頃から、豊富な食には定評があり、旨いものを食べたければ〈京都ホテル〉へ行け、と言われたほどだ。

「オマール海老と季節野菜 甲殻類とお米のクリームと紫蘇風味」。野菜の出汁でボイルしたオマールエビを、柑橘や米酢を使ったソースでいただく

贅を尽くしたフレンチを、眺望とともに愉しめる「スカイレストラン ピトレスク」を筆頭に、本格中国料理で人気の「桃李」や、京都ならではの食材を駆使し、熟達の技で調理する京料理の「入舟」など、8か所ものバーやレストランがあり、さらには豊富なメニューを揃えるルームサービスもあるので、食事は館内だけで十分こと足りるのもうれしい。

「桃李」では広東料理ベースの中国料理が味わえる。

ぜひ味わってほしいのが「入舟」で供される朝食〈すっぽん小鍋のこだわり朝食〉だ。日本全国、数多のホテル旅館で贅を極めた朝ご飯を食べてきたが、これを超える贅沢にはいまだ出合えずにいる。炊きたての釜炊きご飯に、選りすぐったおかず、そしてすっぽんの小鍋。晩餐としても通用する料理を朝から満喫する贅沢な時間。これぞまさに逸飯である。

心和む上質なもてなし

佇まい、眺め、食と、このホテルを愉しむためのコツを並べてきたが、それらを凌駕するのは、1888年の創業以来、脈々と流れ続けている、〈京都ホテル〉イズムとも呼ぶべきスピリッツである。

スタッフと顔が合った瞬間に生まれるのは、決してつくり笑顔ではなく、自然そのもの。お客の心を和ませる、真のもてなしを五感すべてで感じ取ることが、このホテルを愉しむ最大のコツである。

京都ホテルオークラ
住所:京都府京都市中京区河原町御池
Tel:075-211-5111
Fax:075-254-2529
客室数:322室
料金:シングルルーム2万9700円〜、ツインルーム3万8016円〜、スイートルーム14万2560円〜(すべて1泊1室料金、税・サ込)
カード:AMEX、DINERS、JCB、MASTER、VISA、UCなど
チェックイン:15:00
チェックアウト:11:00
夕食:フレンチ、鉄板焼、和食、中国料理など
朝食:和洋バイキング(レストラン)、和朝食(京料理)
アクセス:車/名神高速道路京都東ICから約20分 電車/京都市営地下鉄東西線京都市役所前駅直結/JR京都駅前「ウエルカムラウンジ」から無料送迎シャトル定時運行あり
施設:レストラン(フレンチ・鉄板焼・和食・中国料理・洋食・バイキング)、カフェ、バー、ベーカリー、フィットネスクラブ(ジム、室内プール)、宴会場、チャペル、美容室
インターネット:無線LAN
www.hotel.kyoto/okura

文=柏井 壽 写真=宮地 工

2018年Discover Japan Travel「一度は泊まりたい ニッポンの一流ホテル&名旅館」より

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