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ティンバライズに見る、
未来で目指したい都市木造の姿
《進化する中高層木造建築》

2023.10.26
ティンバライズに見る、<br>未来で目指したい都市木造の姿<br><small>《進化する中高層木造建築》</small>

いま木造建築が注目を浴びている。時代の変化に伴い、これまで鉄とコンクリートでつくられていた中高層ビルにも木材が使われはじめている。確実に増えつつある「都市木造」は今後、社会に何をもたらすのか。
 
最後は、Timberize 200を構成する日本の伝統的な木造建築技術の数々を紹介する。

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Timberize 200の構成要素となる
日本の木造建築技術

Timberize 200の主屋は大断面材を用いた柱を使用した構造で、社寺建築の木割から導き出されたもの。構成要素は日本の木造建築技術の延長線上にあり、サブフレームには三内丸山遺跡の大型掘立柱建物など、伝統的な木造建築物の構造を組み込んだ。

「Timberize 200」の模型。1968年に建てられた「霞が関ビルディング」を最先端の木造技術で実現したらどうなるか、というモデルケースであり、これまでの研究成果と現状の課題、そして今後のテーマを明確化させ「都市木造」の現在地を示すことを目的に発表された

1|1709年 奈良県「東大寺大仏殿」
柱に貫といわれる横木を多数挿して強度を上げ、6つの組物で重い屋根を支える構造

2|1633年 京都府「清水寺」
「清水の舞台」は前にせり出した構造で、139本のケヤキの柱で組まれている

3|1266年 京都府「三十三間堂」
日本一長い木造建築といわれ、その名前は母屋の正面柱間が33あることに由来する

4|756年 奈良県「正倉院」
三角形の木を井桁状に組み合わせた伝統的な建築様式「校倉造」でつくられた高床建物

三内丸山遺跡
提供=JOMON ARCHIVES

5|紀元前3000年 青森県「三内丸山遺跡」
腰原教授が「日本の伝統木造建築のはじまり」と評する縄文期の大型掘立柱建物。「ガラスを張って階段とエレベーターを付ければ立派な3階建てです」
 
6|1587年 広島県「豊国神社」
豊臣秀吉が建設を命じた大経堂。畳1000枚分ほどの広さがあり、「千畳閣」とも呼ばれる

7|1614年 福島県「新宮熊野神社」
拝殿「長床」は、大径の円柱44本が等間隔に5列並び、全体が吹き抜けになっている

松江城

8|1611年 島根県「松江城」
建築当時の木材不足から、中心を支える大きな心柱を用いず、2階分の短い通し柱を96本配置することで天守閣を支える珍しい構造

会津さざえ堂
提供=山主飯盛本店

9|1796年 福島県「会津さざえ堂」
高さ16.5mの六角3層のお堂。上りと下りが一方通行で分かれた二重らせん構造のスロープは、世界的にも珍しい建築様式

道後温泉本館
提供=道後温泉事務所

10|1894年 愛媛県「道後温泉本館」
木造3階建て。西洋の技法を取り入れ、トラス構造を用いた三層楼。1994年に公衆浴場としてはじめて、国の重要文化財に指定された

11|17世紀後半 京都府「桂離宮新御殿」
茶室をしつらえた「数寄屋造」と、床の間や違い棚のある「書院造」を合わせた様式
 

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text: Naruhiko Maeda
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」

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