京都の老舗《細尾/HOSOO》
300年以上続く、西陣織元の不易流行【後編】
西陣織は約1200年前、京都・西陣で発祥した先染め紋織物だ。その老舗織元である細尾は、西陣織のテキスタイルブランド「HOSOO」を生み出し、伝統工芸をグローバルに切り拓いた。その不変の伝統とイノベーションが織りなすストーリーをひも解き、時代に左右されない進化の秘訣に迫る——。
伝統文化を長続きさせる秘訣は “協業”にあり!
細尾のテキスタイルブランド「HOSOO」が「日本の美意識」の極みとして世界で認知されるまでに至った躍進は、自ら流転し、固定観念にとらわれないイノベーションを起こし続けているからにほかならない。
それを表しているのが、多彩な協業プロジェクトだ。たとえば、京都の伝統工芸6社の若き担い手とともにアート、デザイン、テクノロジーとの接点をつくり、工芸文化を社会に実装する「GO ON」や、国境や文化背景、言語を超越し、豊かな美を生み出す海外アーティストとのクリエイション。数学者やコンピュータープログラマーといった異分野のスペシャリストたちとのセッションで、新しい構造の織物を生み出す「HOSOO STUDIES」など、織物の世界でかつてなかった協業は、伝統工芸を未来へと紡ぐためのアップデートだと真孝さんは話す。
「確立された伝統には、新しいインパクトを持ち込んでもその力を吸収して変わり続ける強度があります。西陣織の歴史も時代ごとに革新を起こし、今日まで受け継がれてきました。我々はその伝統を信じているからこそ、バトンを次世代につないでいくために、未知の世界への扉を開け、常に挑戦し続けることが必要なのです」
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細尾の挑戦から、工芸の未来が見えてくる。
伝統を守るために壊し、アップデートを繰り返す——。
「それは、西陣織において決して変えることのない圧倒的な美の追究という核があるから成り立つのです」
そのDNAと可能性を体感できるのが、京都のフラッグシップストアと、2023年に誕生した東京、イタリアに展開する3つの拠点だ。
「工芸の世界に触れていただくことは美の起源や未来、そして『人間とは何か』という根源的な命題を考えるきっかけになります。日本には美しい伝統工芸があふれているので、ぜひ創造性を全開にして、体感してほしいです」
不変のスピリットを遵守し、飽くなき挑戦心で進化し続けることが、時代を超越して多くの人を惹きつけるのだろう。
HOSOO TOKYO
2023年3月、「東京ミッドタウン八重洲」1階に誕生した東京初となるショールーム&ストア。さまざまな工芸技術を用いた品格のあるタイムレスな空間の中には、200種類以上にも及ぶテキスタイルコレクションが並ぶ12mのテキスタイルセラーをはじめ、アートピースやオーダメイドの家具も揃う。
住所|東京都中央区八重洲2-2-1 東京ミッドタウン八重洲1F
Tel|03-6225-2245
営業時間|11:00〜21:00
定休日|施設に準ずる
HOSOO FLAGSHIP STORE
地上5階からなる国内唯一の旗艦店。ホームコレクションを展示・販売するストアのほか、伝統工芸を体感できるうつわでスイーツやお茶が楽しめるラウンジ、日本の染織文化の企画展示を行うギャラリーなど、未来を見据えた伝統工芸のものづくりを世界に発信する。
住所|京都府京都市中京区柿本町412
Tel|075-221-8888
営業時間|10:30〜18:00
定休日|祝日
HOSOO MILAN
2023年2月、イタリア・ミラノ市内にオープン。「ブレラ地区はデザインの中心地。細尾の創業と同じ17世紀に建てられた歴史的建築内のショールームは、ヨーロッパに向けた発信拠点であり、グローバルブランドとして飛躍するための挑戦です」
住所|Largo Treves5, 20121, Milano, Italy
営業時間|9:00〜17:30
定休日|土・日曜
※事前アポイント制(milano@hosoo.co.jp)
2023年
障子をモチーフにした新しいテキスタイルを発表!
日本の伝統的な障子に着想を得て、西陣織の手法とアーティスト、メイ・エンゲルギールさんの色彩感覚を融合させた新作テキスタイル「Shoji Fabrics」シリーズが誕生!
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text: Ryosuke Fujitani
Discover Japan 2023年6月号「愛されるブランドのつくり方。」