義侠 純米吟醸原酒 50%〜渋谷の隠れ家日本酒バー「umebachee」梅澤豪さんが“ヴィンテージ”と呼ぶ究極の熟成酒。
名店の店主が語りたい1本
看板も電話番号もない隠れ家バーが、いつも若者で賑わう街・渋谷にある。日本酒をメインに国産ワインやクラフトビールを提供する「umebachee」だ。その店主を務めるのが、日本酒の魅力を伝えるWEBメディア「富士虎」を運営する梅澤豪さん。彼が「一生つき合いたい酒」とまで言う「義侠」の魅力について語る。
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〝熟成〟の日本酒というのは、いまでこそ浸透してきていますが、「義侠」はなんと昭和52年から造られている熟成の日本酒。それも偶然の熟成ではなく意識的に冷蔵管理です。それがまずすごい。しかも、出荷時にボトルキャップを外しアルコール消毒をして発送しているので、衛生的にもしっかりしている。そういった細かい配慮からも熟成に対しての真摯な姿勢がうかがえます。
ただ、僕は「義侠」のお酒は「熟成酒」や「古酒」とか呼ばずに「ヴィンテージ」と呼んでいます。たとえば「17BYの純米吟醸はいい」という話ができるのも素晴らしいところだと思います。
その味わいは、まずしっかりしたお米の旨みがある。〝フルーティ〟、〝華やか〟とは正反対な“男らしい酒”なんですが、熟成させた火入れなのでアルコール感にまるみがあって 濃醇なのに飲み口がよく、最後にスっとのど元に落ちてくれる。酸味も穏やかでバランスがよい。この19BYは特にその個性が際立っていますね。
当店では基本的に冷やで出していますが、45℃くらいのお燗にするとお米の柔かさと香りが立ち上がってきて、また違ったニュアンスで楽しめます。当店のメイン料理が鶏料理なのですが、鶏刺しやささみの昆布〆に合いますね。「義侠」の味がしっかりしているので、コクのある鶏でもけんかせずに包み込んでくれるんです。
いまではバックヴィンテージを4〜5本、新酒を1本常備していますが、最初の出合いは13〜14年前。友人のお店で飲んだとき、いままで飲んだ日本酒とまったく違う強烈な印象で、日本の酒だけを揃えたDJバーをはじめたときから扱うようになりました。その後、「umebachee」のオープンにあたり、日本酒は「義侠」を中心にしたラインアップになりました。
僕は蔵にも年に1〜2回ほど行かせていただいていて、次期蔵元の専務・山田昌弘さんと、毎年農家さんのところに行ってお手伝いをしています。酒米は兵庫県東条市の特A地区で農家の田尻さん親子がつくられている山田錦。専務はそこにこだわるだけでなく、玄米の状態で仕入れ、長いものでは数日かけて自分たちで丁寧に精米している。そういったこだわりが、熟成酒が苦手な方も美味しく飲めるきれいな酒質につながっているんでしょうね。
「義侠」って不思議なお酒で、農家から蔵元、酒販店、飲食店まで「いいものを届けよう」とチームのように一丸となっている。その出口にいて、最終的にファンをつくるのは僕ら飲食店の仕事なので、味を最大限に引き出しながら一生かけてつき合っていきたいですね。
文=藤谷良介 写真=上樂博之
2019年1月号 特集「風土を醸す酒」
「義侠 純米吟醸原酒50%」
店頭価格:800円/100㎖
原料米:東条山田錦
精米歩合:50%
使用酵母:9号
製造区分:純米吟醸
アルコール度数:16〜17度
問:山忠本家酒造
Tel:0567-28-2247
住所:東京都渋谷区渋谷3-22-11
サンクスプライムビル3A Tel:なし
営業時間:18:00〜24:00(L.O.23:00)
定休日:日・月曜
※問い合わせはumebachee@gmail.com
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