「イルコテキーノ」
山形に現れたイタリアンの新星【前編】
犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン
どんな小さな店でも、どんな辺鄙な場所でも、『ホンモノ』であれば、必ず人は引き寄せられる。今月も強烈な一店に出合いました!今回は、山形県山形市にあるイタリアン「IL COTECHINO(イルコテキーノ)」について、前後編記事でご紹介します。
犬養 裕美子(いぬかい・ゆみこ)
東京を中心に世界のレストラン事情を最前線で取材する。新しい店はもちろん、実力派シェフたちの世界での活躍もレポート。また、日本国内各地にアンテナを張り、料理や食文化を取材。農林水産省表彰制度「料理マスターズ」審査員
佐竹 大志(さたけ・ともゆき)
1975年、山形県大江町出身。香川栄養専門学校調理師科卒業後、東京都内で修業。2003年渡伊。トスカーナ州を皮切りに、ピッツェリアから三ツ星レストランまで、6州10店で約6年修業。’09年帰国。都内レストランでシェフを務めた後、山形に帰り、’12年11月独立
年間4tの豚肉を消費!
素晴らしきハムの世界
最近、東京のイタリアンのシェフやソムリエから、この店のうわさをよく聞く。「コテキーノ」はイタリア・モデナ地方のソーセージの名前。それを店名にしているくらいだから、肉の専門店なのは想像がつく。とは言ってもハム・ソーセージを食べに山形まで行くか~?と、不思議に思っていた。この春、最新店「テストキッチンH」をオープンした山田宏巳シェフも、スタッフを研修に送り込んだほどお気に入りと聞いて、「やっぱり行かねば!」とスイッチが入った。
出迎えてくれた佐竹大志シェフは小柄だが、眼光鋭い職人の風貌。まずはイタリアのハム・ソーセージをどう分類する?と質問したら「加熱、非加熱ですね」という答え。やにわに冷蔵ケースや倉庫を開けると、出てくる、出てくる!笑っちゃうほどたくさんの肉の塊があっという間に山積みに。それを佐竹シェフは一枚一枚丁寧にスライスして盛りつける。完成するとなんと見事な「ハムの花束」。しかも食べてみると、それぞれがまったく違う味。この繊細さはどこからくる?別世界の扉が開かれた!
①モルタデッラ
エミリア・ロマーニャ州のボローニャのソーセージ。豚のひき肉とのどの脂身を混ぜて蒸してつくったソーセージ
②豚の血のモルタデッラ
クルミ入り。カルダモン風味
③鶏胸肉とパルミジャーノのジャンボソーセージ
④鶏レバーソーセージ
鶏レバーのコンフィ入り
⑤牛のレバーと豚の血のソーセージ
カルダモン風味
⑥豚のレバーのソーセージココア風味
⑦ブリスト
新鮮な豚の血と心臓の煮凝り
⑧牛ほほとアキレス腱の肉屋風
⑨コッパ・ディ・テスタ
イタリア全土に見られる豚の顔の部分のゼラチン質を使ったソーセージ
⑩唐辛子を入れた冷製コテキーノ
⑪ポルケッタ
ラツィオ州、ウンブリア州の名物料理。豚を塩漬けしてハーブを塗って巻き込んだローストポーク
⑫イカ墨を練り込んだモルタデッラ
これは佐竹シェフの日本人向けのオリジナル
⑬豚モモ肉のプレスハム
⑭羊のアラブ風ジャンボソーセージ
⑮羊のポルケッタ風
羊の腕、肩ロース肉を使った香草ロースト
⑯プロシュートコット
prosciuttocotto豚モモ肉塊の加熱ハム
⑰羊のモモ肉のプロシュート・コット
cotto(煮込んだ)生ハム
イタリアのハム・ソーセージは2タイプ
シェフの仕事を誇る皿
自家製ハムの盛り合わせ
①スペック
北イタリアのスモークハム。最低でも22週間必要。燻製生ハム
②サラーメ・ミラネーゼ
牛肉を加えたクラシックタイプ
③ベントリチーナ
サラミに豚のハラミの生ハムをプラス。アブルッツォ州の名産
④フィオッコ
外モモ肉の生ハム
⑤カポコッロ
イタリア全土でつくられている豚肩ロースの腸詰生ハム。脂の香りを楽しむ
⑥豚レバーのサラミ五種のスパイス入り
⑦生ハム(クラータ)
クラテッロは膀胱に詰めるが、クラータは詰めないタイプ。使用する部位は同じ
⑧フィノッキオーナ
トスカーナの代表的なもの。中びきミンチとフェンネルシードをはじめとするスパイス使用
⑨サラーメ・モルタデッラ
サラミの中に大きな背脂が入るのが特徴
⑩パンチェッタ・アロトラータ
豚バラ肉の塩漬け
⑪ブレザオーラ
牛のモモ肉でつくった生ハム。ロンバルディア州のヴァルテッリーナ地方のものが最も有名。脂肪分少なく、旨みが濃いのが特徴
⑫ラルド
豚の背油に塩とスパイスをまぶして乾燥させたもの
⑬サラミーノ(唐辛子)
⑭サラミーノ(ニンニク・コショウ)
⑮生ハム(クラテッロ)
豚のお尻の部分。霜降りになった、軟らかい部分は、生ハムで最も高級な部分
上の写真は、できるだけたくさんの種類を見せるために盛り合わせたひと皿。通常、コースの前菜ではひと皿に2~3種類が人数分盛られ、加熱、非加熱に分かれて3~4皿ずつ出てくる。一人分15種類前後。これが前菜なのだが、十分にお腹いっぱいになる量。
IL COTECHINO(イル コテキーノ)
住所|山形市あこや町2丁目1-28
Tel|023-664-0765
営業時間|18:00~22:30(L.O. 21:30)
定休日|水曜(祝日の場合は営業、翌日休)
※おまかせコース4000円(バーニャカウダ、ハム類約15種類。パスタかメイン)。アラカルトあり
※18:00〜20:00 4000円(税別)コースのみ。コースの内容は季節によって変わる。
https://www.ilcotechino.com/
text:Yumiko Inukai,photo:Muneaki Maeda
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