復興の歩みと情熱を知る、東北・宮城の“建築 の聖地”をめぐる旅へ
東日本大震災から10年。宮城県石巻市や女川町などの石巻地方は津波によって人的また建築物に大きな被害を受け、全国的にその名が広く知られることになりました。復旧が着実に進む中で、風景も変わり、震災後に建設された仮設住宅の多くは解体され、道路や橋梁などのインフラが再整備。住宅や産業などの基盤再建も進んでいます。著名な建築家や地元の建築家も、さまざまな段階で復旧・復興活動に加わり、多種多様な建築物が立ち上がってきました。震災後10年という節目に石巻の地にできるのは、文化・芸術の拠点となるマルホンまきあーとテラス(石巻市複合文化施設)。設計したのは、国内外で活躍する藤本壮介さん。三角屋根の建物が横に連なる外観は、かつて旧北上川沿いに建ち並んでいた建物をイメージしたデザインだという。新たな石巻のアイデンティティとなる施設には文化センターと市民会館を集約し、大ホールや博物館、カフェなどを併設。地元の人だけでなく、ここを訪れる人すべてが心地よく過ごせる憩いの場ともなるはず。震災を乗り越えた石巻地方が、建築の聖地に。復旧のフェーズに続き新たな姿を見せる宮城は建築をめぐる旅にうってつけのスポット。ぜひ、これまでの復興の歩みと情熱を知りつつ、これからの街や建築を体験していただきたい。
名だたる建築家が生んだ
宮城の建築、どうめぐる?
注目の建築物が次々に生まれている宮城だが、範囲は広く、効率的に見ていかないと時間がかかってしまう。まずは訪れたい建築物を定めて、ルートを考えてみよう。
今回、主に取り上げる石巻や女川エリアの建築物に主要都市から訪れる場合、仙台を玄関口にすることがほとんどだろう。鉄道では仙石線で仙台駅から石巻駅に。女川へは石巻駅で石巻線に乗り換え、終着駅の女川駅に。大震災の影響から復活した運行で向かうのも、鉄道ファンにとっては感慨深いものがある。ただし、所々で駅を離れて点在する建築物を時間に拘束されずに見るには、車が便利であることは確か。レンタカーショップが多い仙台駅周辺で車を手配するとよいだろう。高速道路を使い、石巻を経由して1時間強〜1時間半ほどで女川に到着。行く先々では駐車スペースが周辺にあるので、車を止めるのに困ることはない。
2021年3月完成予定の「マルホンまきあーとテラス(石巻市複合文化施設)」から見るのであれば、石巻の内陸部からインターを降りて、旧北上川にほど近い同施設に。見学後は国道と県道を通って女川に。女川駅周辺の施設群を散策した後は、沿岸部を通りながら30分ほどで石巻市街に到達する。たとえば早朝に東京を出発すれば、女川に昼頃到着し、昼食や買い物などを楽しんでも、夕方には石巻の街に到達することは十分に可能だろう。
もちろん、ここで挙げたのはひとつの例。宿泊した翌日も十分に時間があって行動できるのであれば、めぐるエリアの選択肢は広がるし、仙台や塩竈、登米、松島などには、史跡や歴史的建造物、近代・現代の建築物が多く点在する。気になる新旧の建築物を織り交ぜながら、宮城を自由にめぐっていただきたい。
宮城の建築旅はこうめぐろう!
マルホンまきあーとテラスで建築の意匠を楽しむ
↓ 徒歩 約3分
女川駅と駅前広場を散策〜昼食
↓ 車 約30分
IRORI石巻でカフェ&リモートワーク
↓ 車 約10分
石巻ホームベースで家具を見ながら宿泊
↓
旅の終わりにフィッシャーマン・ジャパンでお取り寄せ
text: Jun Kato photo: Teruaki Tsukui illustlation: Takashi Kawakami
Discover Japan 2021年4月号「テーマでめぐるニッポン」
《東北・宮城の“建築の聖地“をめぐる旅》
1|復興応援!いま東北が面白い。
2|世界的建築家・坂 茂が手掛けた女川のシンボル
3|石巻のカフェ「IRORI石巻」でも建築が楽しめます
4|「石巻工房」の持って帰りたい“石巻デザイン”(Coming Soon)
5|宿泊もどっぷり建築!「石巻ホームベース」(Coming Soon)
6|「フィッシャーマン・ジャパン」の帰っても取り寄せたい東北の美味(Coming Soon)