TRADITION

おせち料理に入ってる食材の意味とは?
お正月の基本

2020.12.29
おせち料理に入ってる食材の意味とは?<br><small>お正月の基本</small>

紅白かまぼこに伊達巻き、栗きんとん……お正月に欠かせないおせち料理。おめでたい料理が重箱に詰められたおせち料理ですが、なんともともとは神様へのお供え物でした。由来や定番食材、詰め方、意外な地元ルールなど、おせち料理を徹底解説します!

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お話をうかがった方
神崎宣武
(かんざき・のりたけ)
1944年生まれ。旅の文化研究所所長。民俗学者にして岡山県宇佐八幡神社宮司。『しきたりの日本文化』、『「まつり」の食文化』ほか著書多数

おせち料理の意味

五穀豊穣を願う縁起物「田作り」

おせち料理の「おせち」とは、「お節供」の変じたもの。もともとは季節の変わり目(節供)に無事を願って神様にお供えをし、それを下げていただくものだった。つまりおせち料理は歳神様へのお供えであり、その下がりものをいただくことで、歳神様の御利益を取り込む、縁起物ということ。また年始の客が来たときにせわしなくないように、すぐに出せる・保存の利くご馳走をつくっておくという意味もある。おせち料理は家族でいただく料理という面と、来客へのもてなし料理という別の面を併せ持っている。

おせち料理には、おめでたい意味をもつさまざまな種類の料理を詰めるが、その多くは豊作を願うもの、無病息災を願うもの、子孫繁栄を願うもの。絶対にこれを入れなければいけないという決まりはなく、地域によって異なる地元ルールがいつの間にか生まれ、そのまま現代まで受け継がれていることも多い。

おせちの定番食材

「紅白かまぼこ」
かまぼこは地平線や水平線から上る朝日を象徴している。神聖な色である白と、おめでたさを表す赤を組み合わせる
「伊達巻き」
江戸時代に、長崎から伝わったもの。伊達者(お洒落な人)の着物の柄に似ていたので、「伊達巻き」になった
「栗きんとん」
黄色は財宝の輝きを表している。栗は山の幸の代表であり、「勝ち栗」と呼ばれる縁起物でもある
「小肌粟漬」
コハダは成長に応じて名前の変わる出世魚。粟は五穀豊穣を表す縁起物。めでたいものをふたつ組み合わせている
「海老」
腰が曲がってもぴんぴん跳ねる、不老長寿の象徴。たくさんのタマゴを抱えることから、子孫繁栄の縁起物でもある
「紅白なます」
かまぼこと同じく、おめでたい赤と清浄な白を組み合わせた酢の物。もともとは生の魚介を使ったので、「生酢」という
「昆布巻き」
「よろ・こぶ」という語呂合わせで使われる縁起物。中に何かを包むのは財宝を入れた包みを思わせる縁起のよいかたち
「錦玉子」
黄色は金を、白は白銀を表している。2色の「色」を「しき」と読めば、錦(にしき)の音に通じることも縁起がよい

祝い肴三種

「数の子」
ニシン(二親)から多くの子が産まれるのがめでたいとされ、古くからおせちに使われている

おせち料理には欠かせない祝い肴三種ですが、関西では「数の子」「田作り」と並び「たたきごぼう」が祝い肴三種とされており、関東では「たたきごぼう」に代わり、「黒豆」が祝い肴三種とされています。

「田作り」
肥料として小魚を田畑に撒いたことからこの名がついた。五穀豊穣を願う縁起物。尾頭付きでもある
「たたきごぼう」
地中深くに根を張るゴボウそのものが縁起物だが、さらに叩いて身を開くことで開運の縁起を担いでいる
「黒豆」
「まめで(丈夫で)過ごす」などと使われる「まめ」にかけた一品。皮にしわが寄ったり割れたものは嫌われる

北海道では年内の大晦日に食べるってほんと?

おせち料理は1月1日に食べるのが一般的だが、北海道では大晦日が常識。大晦日の夜、お越しになった歳神様に料理をお供えし、そのお下がりをいただくのだから、大晦日に食べるのは道理にかなう。古くは「おせちは大晦日」という地域が全国的にあったはずだ。

お重の詰め方にもルールがあります

最近のおせちは三段重が多いが、本来は一の重に祝い肴、二の重に口取りと酢の物、三の重に焼き物、四の重に煮物を入れた、四段重が正式とされている。中のものを食べたら、隙間のないように補充する。

一の重
黒豆や数の子、田作り、紅白カマボコ、伊達巻き、栗きんとんなどの祝い肴を入れる
二の重
海老の鬼殻焼きなどの焼き物と、なますや菊花かぶ、酢れんこんなどの酢の物を入れる
三の重
ニンジンやゴボウ、レンコン、結びこんにゃくなどを炊き合わせた煮物を入れる

市松
お重を9つの正方形に、均等に分けて盛りつける。中心部に升や青竹筒などを使ってもよい
隅切り
中央に菱形になるように一品(あるいは数種類一緒に)盛り、その外側に別の料理を盛る
末広
中心に小鉢などを置き、黒豆やなますを盛る。その周りを扇状に囲むように、料理を盛る
乱れ盛り
彩りよく詰めるのが絶対条件。色鮮やかものをアクセントに、いろいろな料理をランダムに盛る
段取り
たくさんの素材が入る煮染めなどに適した盛り方。お重を横に仕切り、列ごとに料理を盛る
手綱
馬のくつわに取り付ける綱をイメージ。隣り合うものの彩りに注意して、斜めに盛りつける

 

お年玉から福茶まで。
正月にまつわる素朴なギモン集。

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text:Ichiko Minatoya illustation:Miho Nakamura
Special thanks:Noritake Kanzaki

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