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《ヘラルボニー》
アート×福祉で地域活性化を叶える
前編|ミッション「異彩を、放て。」に込められた思い

2026.4.14
《ヘラルボニー》<br>アート×福祉で地域活性化を叶える<br><small>前編|ミッション「異彩を、放て。」に込められた思い</small>

世界が熱視線を送る岩手・盛岡発のクリエイティブカンパニー「へラルボニー」。異彩を放つ作家とともにつくる福祉×アート×ビジネスを起点とした事業展開で、既存領域の枠を越えた新しい価値を創出している。前編ではヘラルボニーの創業時についてや掲げるミッションについて迫る!

障害のある作家の作品を
「価値あるもの」として世界へ発信

「HERALBONY LABORATORY GINZA」のショップの一角では、隣接するギャラリーで展示中の作家のアイテムを販売。契約作家以外のアーティストのアイテムにも出合える

2018年7月、岩手・盛岡で誕生した「へラルボニー」が、世界へ歩みを進めている。主に知的障害のある作家の作品を世に送り出す独自のビジネスモデルはさまざまな業界に一石を投じており、「LVMHイノベーションアワード」やカンヌライオンズ「Glass: The Lion for Change」ゴールドの受賞など、国際的な評価と注目度は年々高まるばかりだ。

障害がある兄への想いが地元での起業のきっかけに
右から文登さん、翔太さん、崇弥さん。 地元・岩手で撮影した写真だ。国内外問わず、プレゼンテーションの場や授賞式に翔太さんがへラルボニーの“真の創業者”として参加する機会も多い

へラルボニーを設立したのは、岩手出身の双子の兄弟、松田文登さんと崇弥さん。しかし二人は「真の創業者は4歳年上の兄・翔太です」と口にする。翔太さんには重度の知的障害をともなう自閉症があり、「兄へ向けられる冷たい視線を変えたい」という想いは起業の出発点となった。

社名も翔太さんが小学生の頃、自由帳に記していた「へラルボニー」という謎の言葉を由来としている。当時は検索してもヒット数ゼロ。翔太さんに意味をたずねても「わからない」とのことだが、文登さんと崇弥さんは「意味がないとされるものを『価値あるもの』として創出したい」と、社名に採用。まさに意味をもたない言葉に、価値が生まれた瞬間であった。

障害のある作家の作品を「価値あるもの」として世界へ発信しているヘラルボニー。社会に新しい価値を、新しい文化をつくるクリエイティブカンパニーとして、未来を切り開いていく。

「異彩」を尊重するものづくり

障害のある人々の作品に着目した契機は、2015年に岩手「るんびにい美術館」で崇弥さんが出合った作品の数々だった。鮮やかで斬新な色使い、独創性に満ちたパターン、心に響く力強さと繊細さ。障害のある人が発信する自由かつ純粋な表現は崇弥さんに衝撃を与え、美術館を出るとすぐに「ヤバイ作品がある!」と、文登さんに電話をかけたという。

右)Midori Kudo「(無題)(青)」
へラルボニーの原点となるアートネクタイはシルク100%。紳士洋品店の老舗「銀座田屋」によるシルク織り技術により、工藤みどり氏の美しく繊細な作品も忠実に再現。3万5200円

左)marina「blue brush_mm2025」
marina氏によるタイポグラフィのアートを大胆にあしらったレギュラーカラーの長袖シャツ。ゆとりのあるシルエットで、季節を問わず幅広いスタイリングが楽しめる。2万9700円

「何かしなければならない」。直感に突き動かされるかのように崇弥さんと文登さんは仲間を集め、それぞれが奔走し、関係各所の協力を得ながら、翌年に前身となるブランド「MUKU」を発足。初のプロダクト「アートネクタイ」は、いまやヘラルボニーのアイコニックな製品へと成長している。MUKUは本業のかたわらで進めていたブランドであったが、情熱の赴くまま独立というかたちで2018年にヘラルボニーを創業し、新たな章の幕を開けた。

障害がある作家とビジネスパートナーとしての関係を構築
12歳から創作活動を続けている契約作家のmarina氏。びっしりと描き連ねる独自のタイポグラフィは想像力をかき立てる。「TOKYO FASHION CROSSING」では堂々とした姿でランウェイも歩いた

へラルボニーが掲げるミッションは「異彩を、放て。」。障害のある人は世界人口の約15%だといわれるが、社会には偏見や先入観が根づいているのも事実だ。確かに日常生活で支援が必要な場面は多いだろう。だが「できない」を「できる」に強いるよりも、障害のある人がありのままで幸せに暮らしていけるよう社会側を変えていくほうがいい。このミッションには「障害」という言葉の先にある個性を解き放ち、その「異彩」をさまざまなかたちで社会に届けて、人々の意識を変えていきたいとの想いが込められている。一人ひとりの異なる彩りが輝きとなり、誰もが豊かに暮らせる社会こそ、へラルボニーが目指す最終的なゴール。障害のある人へのネガティブなイメージの変容は、その第一歩だと考えているという。

右)スカーフコンビレザーショルダー
お気に入りのスカーフをスリットに通し、自分らしいスタイルに彩れる、「スカーフコンビバッグ」シリーズのショルダータイプ。素材は牛革で、上質な存在感を放つ。4万9500円

左)Yuh Mitani「りんごのブーケ」
表も裏も美しい、定番商品のアートスカーフ。シルク素材100% で、88×88㎝の大判サイズ。三谷由芙氏の作品をはじめ、30種類近くの作品のパターンが揃う。2万4200円
右)Taisuke Kinugasa 「ブダペストで朝食を」
家族と旅した世界各地の景色を描く衣笠泰介氏。このサブバッグはブダペストを描いた作品が用いられている。環境に配慮したリサイクルポリエステル製で、9種類で展開。Mサイズ3850円

真ん中)Shigaku Mizukami「タイトル不明」/
左)Atsuhito Fujiki「タイトル不明」

「日本航空」とのコラボレーションによる、国際線ファーストクラス・ビジネスクラスの機内アメニティポーチ。水上詩楽氏や藤木敦仁氏など、契約作家の作品を採用
トレーサビリティを担保した生産体制
縫製精度・生地の品質・プリント技術といったクオリティへのこだわり、目標を掲げたトレーサビリティの担保、環境負荷の低い素材の積極的な使用など、責任あるものづくりを実践している

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「地域を豊かに」する
ビジネスモデルとは?

 
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《ヘラルボニー》
アート×福祉で地域活性化を叶える

01|ミッション「異彩を、放て。」に込められた思い
02|「地域を豊かに」するビジネスモデルとは?
03|岩手・盛岡から世界へ!

text: Nao Ohmori photo: Kenji Okazaki
2026年2月号「地域を変える企業」

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