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渋谷パルコ「青木良太展」
釉薬研究で10万の色を生み出す、陶芸家・青木良太の世界

2022.4.2
渋谷パルコ「青木良太展」<br> 釉薬研究で10万の色を生み出す、陶芸家・青木良太の世界

「あの時代はすべて青木がやり尽くしたと1000年後の世界で言われたい」そんな時空を超えた飽くなき挑戦を自らの宿命と悟り、誰も見たことのない焼物をつくり続ける陶芸家の、魂の欠片に触れます。
2022年4月5日(火)から5月3日(火)まで、渋谷パルコDiscover Japan Lab.にて、大規模な作品展「青木良太展」を開催します。公式オンラインショップも取り扱い予定!

青木良太 (あおき りょうた)
1978年富山県生まれ。金、銀、プラチナ、スワロフスキーなど陶芸の常識を超えた素材を積極的に取り入れ、未知の作品を創造し続ける陶芸家。陶芸器意匠研究所で学んだ後、岐阜県土岐市のスタジオで制作を行う。

「僕が目指すのは、21世紀の陶芸伝統」

工房から車で約5分のところに設けられたギャラリーにて。ここは青木作品群を鑑賞できるスペース。黒装束と金の靴は日常の定番スタイル

取材は時節柄のオンライン。画面に現れた黒のターバン姿とその背景の工房は、2019年の秋に訪れたときと何も変わっていないように見えた。それから2年半。山中の工房に詰めて作品づくりに没頭する陶芸家でも、多くの個展や展示会が中止に追い込まれたことから、コロナ禍によって世界が変わったことを実感せずにいられない時期を過ごしたという。

「こんな本、読んでましたよ」
そう言って取り出しのが、『陶器入門』や『釉薬調合の基礎知識』と題された、時代感のある大判で分厚い書籍だった。思わず「いまさら?」とつぶやいてしまった。

何気なくのぞいた町の陶芸教室で、何かを創造したい潜在的な欲求を衝撃的に自覚。すぐさま陶芸専門の研究所に入所し、寝食を忘れて学んだ2年目には講師レベルの知識を身につけたという。

そんな経緯を聞いていたから、この時点で基礎に触れることがいまさらに感じられたのだ。
「教科書に載っていない技術を生み出すため、この20年は研究を続けてきたのだけど……」
この言葉の裏付け情報として紹介されるのが、年間1万5000回に及ぶ釉薬の研究と10万を超えるレシピ制作という数だ。

「これまでずっと走り続けてきて、ゆっくり考える時間がもてなかった。そこでふと、自分独自の技法を基礎と照らし合わせてみたくなったんです」
実際にそれらの書籍がどれほど役立ったかはたずねないでおいた。なぜなら先に当人が語ったように、あえて「教科書に載っていない技術」の開発に挑み、陶芸の限界を超える作品を数多く発表してきた実績に鑑みれば、教科書に目を通しても再確認できるのは伝統技法だけ。それにも意味を感じたのだろうが、本がどんなに分厚くても、すぐに試したくなる未知の技はどこにも記されていないはずだから。

「僕が目指すのは21世紀の陶芸伝統。あの時代はすべてアイツがやり尽くしたと、1000年後の世界で言われたい」

青木良太という陶芸家が確立したいのは、遥か先を見据えた価値観だ。彼の作品が後世に伝わるなら、陶芸の教科書はやがて大幅な改訂に迫られるのだろう。

「こんな焼物もあることを知ってほしい」

工房の壁に貼られているのは、壮大な釉薬研究の成果を示すテストピース。偶発的に出現した予想外の色の再現と固定も、このピースがきっかけになるそうだ

彼は陶芸に対して「宿命」という言葉を使う。自らの生を超えても残る陶器づくりを行うがゆえの覚悟を示しているのだと思う。そんな時空を超越するような感覚をもっていても、ここまで“わずか2年”のコロナ禍で作品制作に何らかの影響が出ているとつぶやいたのは、何というか人間臭くて安堵した。

「このボーノプレート。スタッキングできるんですよ。僕には新しいかたちだけれど、どうやら世間では定番らしいんですよね」

それこそ何をいまさらと言いたくなるが、新作を手にして話す本人はいたってまじめだった。

「僕はこれまで料理を盛ったイメージを一切もたずにうつわをつくってきたんです。その一方、以前から自分で料理したものを自分のうつわで食べてきた。自粛期間中、それを写真に撮り出したらおもしろくなっちゃったんですよ。そこからボーノプレートが生まれたんです。気づけば44歳で、何か丸くなっちゃったのかなあと思ったりしますけれど(笑)」

とは言え、この2年で陶芸に向かう基本的な意欲が変わったわけではないだろう?
「そこはまったく。誰も手掛けたことのないもの。そして自分が欲しいと思うものだけを、相変わらずオタクのように追求し続けています」
それを踏まえた上で、仮にコロナ禍で青木作品に顕著な変化が見られたとしたら、それをどう呼ぶかは後世の専門家に託したい。

何はともあれ目下の注目は、2022年4月5日からDiscover Japan Lab.で開催される「青木良太展」だ。作品点数が300に達する大規模な展示会になるという。

「家でご飯を食べる機会の再発見がありましたから、食器類を多めに用意しようと思っています。とにかく、見るだけでなくじかに触って、質感を楽しんでほしい。こんな焼物もあるんだと知ってもらいたいです」

縄文土器からはじまったとされる人類のうつわづくり。その1万6500年の歴史の中に登場してこなかったものを新たに生み出そうとするのが青木良太の陶芸だ
工房内に電気窯が3機。薪をくべる炎の窯はギャラリー脇に1機。20年以上毎日挑んでも、焼いてみるまでわからないのが陶芸の世界だという


Discover Japan Lab.ですべて買える!
青木良太コレクション

 
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青木良太さんの作品約300点が並ぶ
展示会が渋谷パルコで開催!

2022年4月5日(火)から渋谷パルコDiscover Japan Lab.にて、作品点数が300に達する大規模な作品展「青木良太展」を開催します。開始後、公式オンラインショップも取り扱い予定! 貴重なこの機会をお見逃しなく。 

 

青木良太展の作品一覧
 

青木良太展
会期|2022年4月5日(火)~5月3日(火)
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~20:00
定休日|不定休
※営業時間変更の場合がありますので、最新情報は渋谷PARCOの営業時間をご確認ください。

text=Tonao Tamura photo=Norihito Suzuki

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