「オイスターツーリズム九州」始動!
九州を世界屈指の牡蠣の島に
牡蠣に人生を捧げるOyster Company代表・保泉祥子さんと、日本一牡蠣を知り尽くした男・梅津聡さんが目指すのは、九州を“世界屈指のオイスターアイランドにする”こと。現地で牡蠣を味わい、生産者たちの想いに触れることで、牡蠣の養殖産業の未来を繋ぐ。新しい産業観光のかたちになり得る「オイスターツーリズム九州」の背景を仕掛け人にうかがった。
▼オイスターツーリズム九州の仕掛け人
保泉祥子(ほずみしょうこ)
2005年から牡蠣の魅力広めるイベントを定期的に企画し、2013年、東京・銀座に「牡蠣Bar」をオープン。2014年から牡蠣産地ツアーを開始。現在、Oyster Company株式会社 代表取締役、一般社団法人 牡蠣の会 代表理事。
梅津 聡(うめつさとし)
佐賀県太良町出身。幼少期から遊び親しんできた有明海の未来を案じ、海の環境改善と漁業の活性化を同時に行うべく、牡蠣の生産者に。膨大な研究データ、海外の先進的な養殖技術などを生かし、「日本一、牡蠣を知り尽くした男」として知られる。株式会社 海男 代表。
産地を訪れ、生産者の思いに触れる
愛着から生まれる理想的な循環を目指して
牡蠣の産地というと広島、宮城、北海道などが全国的に有名だ。ただ、全国の牡蠣に精通したOyster Companyの代表取締役・保泉祥子さんは「九州にも素晴らしい牡蠣生産者がたくさんいます」と熱を込めて語る。その高い品質や隠れたポテンシャルをもっと多くの人に知ってもらいたいと、2022年、有明海を第一の舞台にスタートするのが「オイスターツーリズム九州」だ。
観光庁が2021年3月31日付けで公募した「アドベンチャーツーリズム等の新たなインバウンド層の誘致のための地域の魅力再発見事業」に採択されたツアー商品で、2022年1月にはメディアツアーも開催。有明海で育った牡蠣をさまざまな調理法で味わえるのはもちろん、牡蠣生産者から直に話を聞けるのが大きな魅力だ。
ツーリズムを主導する活動体「アイランドオイスター九州」を発足させた保泉さんは、「もともと、2014年から牡蠣の産地視察を年1、2回行っており、現地だからこそ得られる貴重な体験に可能性を感じました。また、全国に数多ある牡蠣産地の中でも九州にフォーカスしたのは、とても品質の良い牡蠣が多数存在していること、さらに、有明海で牡蠣を養殖している生産者、梅津聡さんの存在も大きい」と語る。
梅津聡さんは佐賀県太良町の牡蠣生産者で、サステイナブルな漁業にいち早く取り組んでいる一人。「もともと10年ほど前までは港湾建設業に携わっていましたが、餌がいらず、海を汚さない牡蠣の養殖に、理想的な循環を見出し、この道に入りました」と梅津さん。
そんな梅津さんは現在、有明海の未来に危機感を抱いている。
「昨今の有明海は二枚貝が激減し、餌となるプランクトンが異常に多い状態になっています。プランクトンは牡蠣にとっても餌なので、育てやすい海と思われるかもしれませんが、実は違う。増えすぎたプランクトンは海水温が上がり、降雨量が増える季節になると、赤潮の原因となります。赤潮が多量に発生すれば、有明海は一気に腐ってしまう。そうなると、有明海の生態系は危機的状況に陥ってしまいます」。
そんな状況を回避するためには、牡蠣を増やすことが一手。そのための手段の一つとして梅津さんは「オイスターツーリズム九州」に可能性を感じ、積極的に協力する。
「まずは消費者の方々に産地に来ていただきたいんです。産地を実際に見て、生産者の思いや抱えている課題に触れ、それをどうやって解決していくのが良いのかを知っていただく。そういった体験こそが牡蠣の産地を未来へと繋いでいくことになると私は考えています」と梅津さん。
もともと九州各地の牡蠣生産者との横の繋がりはあった梅津さんだが、保泉さんが立ち上げた「アイランドオイスター九州」をきっかけに、新たな産地の生産者との繋がりも生まれたという。
同じ方向を向き、地元の海を守っていきたいと考える生産者同士が繋がり、よりその結束を強くすること、さらに産地や生産者の思いを深く理解してもらった上で新たなファンを生み出すこと。このような機会をつくり出すのが「オイスターツーリズム九州」の使命だ。
オイスターツーリズム九州
ツアー内容|2泊3日を基準に、牡蠣生産者を中心とした地元食材・地酒を訪問
料金|30万円〜(税・宿泊・飲食費、貸切バス代、乗船代込)
参加方法|公式サイト問い合わせフォームにて受付
※今後ファンクラブを設立し、サブスク会員には優遇サービスを実施想定
text=Tsutomu Isayama