スティルレーベン、日本民藝館へ行く。
デンマークのデザインユニット「スティルレーベン」が今回の来日でどこよりも楽しみにしていた日本民藝館。デザイン先進国の二人にとって民藝の魅力とは?
宝箱を開けるように、すべてが特別で感動的!
「コペンハーゲンで訪れるべきデザインストア」として『Forbes』や『Monocle』といった海外メディアでたびたび紹介される、デンマークのデザインユニット「スティルレーベン」。彼女たちが最も注目するのが、日本民藝館だ。「まるで宝箱を開けたようないとおしい空間。角を曲がって建物が見えた瞬間からワクワクが高まり、別世界に誘われたような感覚でした。その佇まいから展示物に至るまで、民藝館そのものがスペシャルな存在です」
最も印象に残っているのは〝展示物の組み合わせ方〞だという。
「美術館では、年代や地域などでカテゴライズして展示するのが一般的ですが、日本民藝館ではそれをしていません。展示物が最も美しく見えるよう、隣に置くものや空間とのハーモニーを大切にして並べられていることが斬新でした。全体が調和されていて、展示物はその一部として構成されている。これは、この場に来て見ないとわからない感覚だと思います」
〝名もなき職人の手から生まれた日常の生活道具には、美術品に負けない美しさがある〞と唱えた民藝運動は、北欧のものづくりにも強く影響を与えた。その民藝運動の父として知られる柳宗悦が初代館長を務めた「日本民藝館」は、北欧でも知名度が高いという。「柳宗理やイサム・ノグチといった日本人デザイナーは北欧でもポピュラーですし、古くから民藝に影響を受けた北欧のデザイナーも多いため、民藝館には非常に興味がありました」
テーブルウエアなど、暮らしを豊かにするスティルレーベンの作品にも、民藝に通じる〝用の美〞が感じられる。「陶芸家として作品をつくるからには使われなければなりません。ただ、あくまで目指しているものを表現した上でどう機能的にしていくかを大切にしています。日本の民藝のうつわも機能的なだけでなく、釉薬の使い方など私たちでは考えが及ばないような豊かな表現力があり、非常にインスパイアされます。日本と北欧のデザインや工芸に対する理解の仕方にはもともと近いものがありますが、民藝館に来て、改めてそれを実感できました」
STILLEBEN(スティルレーベン)
デンマーク王立美術学院でガラスと陶芸について学んだディテ・レクウェグ(写真左)とイエレーナ・ノーデントフト(右)によって、2002年に誕生したデザインユニット。老舗ブランドへのデザイン提供のかたわら、テキスタイルや陶芸などのオリジナルプロダクトの開発、ショップの運営に携わる。その活動は海外メディアでも注目を集める。
<DATA>
住所:東京都目黒区駒場4-3-33
Tel:03-3467-4527
開館時間:10:00~17:00
※ただし11月2日を除く金曜は~19:00(いずれも入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(祝日の場合は翌日休)
料金:1100円、大高生600円、中小生200円
★印は特別展「白磁 Joseon White Porcelains」にて11月23日(金・祝)まで展示中
※展示風景は取材時点のもので、現在は変更になっている箇所があります
スティルレーベンの商品の問い合わせ先
アクタス・青山店
住所:東京都港区北青山2-12-28 1F
Tel:03-5771-3591
※お問い合わせ時に品切れの場合もあります
(text:Akiko Yamamoto、photo:Kazuya Hayashi)
※この記事は2018年10月6日に発売したDiscover Japan11月号の記事を一部抜粋して掲載しています