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DEPT Company eri×近世麻布研究所 吉田真一郎 対談
日本人と衣服の歴史から
SDGsを考える【前編】

2021.10.3
<small>DEPT Company eri×近世麻布研究所 吉田真一郎 対談</small><br>日本人と衣服の歴史から<br>SDGsを考える【前編】

私たちが生きる上で欠かせないひとつが、暑さ・寒さをしのぎ、身体を守る衣服。古い布や服にともにパッションを寄せる近世麻布研究所 代表の吉田真一郎さんとDEPT Company 代表のeriさんは、そこに日本で受け継がれてきた精神性が宿ると言います。SDGsをかなえるためになすべきこと、そのヒントを二人の対話から探っていきます。

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紙の糸を使った汗衫(あせはじき)。篠竹を切ってつくられることも多いようだが、ここでは紙の糸が木綿とともに使われている

「大切につくられたものには魂がこもっている。だから使い手も大切に使い続ける」──eri

eri これ、かわいい!  アフリカの人の衣服みたいですね。

吉田 それは汗衫といって、着物の下に着る衣服。クーラーのない時代、着物が汗でくっつくのでこれで吸収し、着物を浮かせた。紙などを再利用した糸を使っていると思います。

eri 手漉きの紙は貴重だから、使い終わってもポイっじゃないんですね。

吉田 点々と墨が見えるのが再利用の証し。紙を編み込んだもので結構手の込んだつくり。そこがまた魅力です。

eri 吉田さんのコレクションはものに宿る「気配」がすごい。どれほどのプロセスでどれほどの人の情熱の下でつくられたかが、その気配につながっていると感じます。大量生産・消費の対極がここにある。私は古着屋の娘に生まれ、服を長く着るのは当たり前と思って生きてきたので、消費のサイクルを少しでも延ばしたいし、あるものを使って何かを生み出したい。それで古いパーツを組み合わせた服などもつくっています。

こより状の糸には墨の跡がところどころ見える
亀甲状に編まれた姿も美しい、汗衫。夏期、着物の下に身につけて着物が肌に直接触れないようにした一種の下着

「縄文時代から人は自然の力を生かして ものをつくり、使ってきた」──吉田

吉田 僕は絵描きをはじめた若い頃、ドイツで出会った美術家から「おまえの作品のルーツはなんだ?」と問われ、答えに窮した。帰国後、模索する中で出合ったのが自然布。布とアート、両方をやって江戸時代の麻布を使った作品展示もしてきました。麻というと亜麻(リネン)を思い浮かべる人が多いですが、あれは明治から。日本では古代から大麻(ヘンプ)や苧麻(ラミー)が主に使われていました。縄文遺跡の鳥浜貝塚(福井県)では大麻でつくった縄や編み物が見つかっています。近年になって、1万年前から日本では大麻を栽培していたことも明らかになりました。きっと縄文人も柔らかい風合いの編み布を着ていたでしょう。

eri 麻はいろんな国で親しまれ、それぞれ特性があるけれど、日本の大麻は神事にも使われてきたんですよね。

吉田 群馬県岩島ではいまも伊勢神宮に納める大麻が栽培されています。4月に種をまき、8月に刈り取り、その後、奈良県月ヶ瀬の奈良晒保存会で織られたりしている。1948年の大麻取締法以前は、日本中で栽培していました。大麻の繊維を手で裂き糸にして織ると、硬い布に。それを水に濡らして天日で乾かす。繰り返すうち生成色がだんだん白く、柔らかくなる。ただ、手作業だった江戸時代の大麻布を紡績工場で再現するのは難しい。時代とともに忘れられていきました。

大麻布は天日で何度も晒すと白く、柔らかくなる
大麻と藤を割いた繊維。灰汁で煮るところから大麻布づくりがはじまる

eri そう考えると「majotae」で工業製品として大麻布をよみがえらせたのはすごい。古着の買い付けで欧米に行くと、ファストファッション登場以降、服のクオリティが下がっているのを感じるんです。衣食住のひとつ、服はもともと命を守るものなのにいまは嗜好品的。生活者側は次々に新しい服を求め、アパレル企業側も大量につくって購買を促す。大量廃棄が問題となって企業も努力しはじめているけれど、気候危機の現状を考えるとシステム自体を変える必要があると感じます。

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text: Kaori Nagano(Arika Inc.) photo: Kazuya Hayashi, Mitsuyuki Nakajima
Discover Japan 2021年9月号「SDGsのヒント、実はニッポン再発見でした。」

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