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DEPT Company eri×近世麻布研究所 吉田真一郎 対談
【序章】日本人とつくる責任つかう責任

2021.10.3
<small>DEPT Company eri×近世麻布研究所 吉田真一郎 対談</small><br>【序章】日本人とつくる責任つかう責任

私たちが生きる上で欠かせないひとつが、暑さ・寒さをしのぎ、身体を守る衣服。古い布や服にともにパッションを寄せる近世麻布研究所 代表の吉田真一郎さんとDEPT Company 代表のeriさんは、そこに日本で受け継がれてきた精神性が宿ると言います。SDGsをかなえるためになすべきこと、そのヒントを二人の対話から探っていきます。

吉田真一郎 (よしだ・しんいちろう)
1948年、京都府生まれ。近世麻布研究所 代表。20代から絵画制作をはじめ、現代美術家ヨーゼフ・ボイスとの出会いをきっかけに古美術や民俗学を独学で学ぶ。中でも自然布、江戸時代の大麻布、苧麻布の繊維と糸を中心に研究し、サンフランシスコ工芸博物館、国立民族学博物館、山口情報芸術センターなどで展示・発表。近年立ち上げた大麻布ブランド「majotae(麻世妙)」でも、その魅力を伝えている

eri (えり)
1983年、NY生まれ、東京育ち。DEPT Company 代表、アクティビスト。’97年、立花ハジメ氏と「Low Powers」でデビュー。’04年、自身のブランド「mother」をスタートし、’15年、父親が創業した日本のヴィンテージショップの先駆けである「DEPT」を再始動。最近では、自身のライフスタイルや企業としての存り方をSNSを通し発信し、気候変動・繊維産業の問題を主軸にアクティビストとしてもアクションを行う
Instagram @e_r_i_e_r_i

日本人とつくる責任つかう責任

江戸時代後期、寛政年間の年貢関連書類。和紙が丁寧にとじられている
当時、和紙は貴重で高級品。使い終わったものをこより状にし、紙の糸がつくられることも
紙の糸を使った汗衫(あせはじき)。篠竹を切ってつくられることも多いようだが、ここでは紙の糸が木綿とともに使われている

かつて日本人は、森羅万象に神を見出してきた。木綿の普及以前、物資が限られていた小さな島国・日本では知恵を絞り、決して扱いやすくはない植物の麻(大麻、苧麻)から糸をつくり、それを撚り、織り、晒し、日常着や礼服として昇華させた。

時代が進み、分業制によるものづくりが浸透した世では、各工程を担当するそれぞれのつくり手が文字通り、魂を込めて衣服をつくった。だから、古いものには、神気がある。だから、昔の人は、ものを大切に使った。

SDGs目標12の「つくる責任 つかう責任」は日本人にとっては、いわば十八番なのである。

古代の麻布の製法を試し、研究する場、近世麻布研究所。現代の大麻布「majotae(麻世妙)」発信の場でもある

京都府・福知山市。緑濃き古い社のそばに、自然布の研究を長く続けてきた吉田真一郎さんの研究所がある。2020年、この日本の原風景が広がる故郷に拠点を移し、古代の麻布の製法を自ら試し、研究を重ねている。主に江戸時代から明治期にかけてつくられた麻織物を集め、その繊維や糸を子細に調べて研究・発表するかたわら、日本で古来親しまれてきた布を復古させようと大麻布ブランド「majotae(麻世妙)」をエイベックス・グループで立ち上げてもいる。

そんな吉田さんを慕うのが、日本の古着シーンを牽引してきた「DEPT」の現・オーナーであるeriさんだ。いまや古着店運営にとどまらず、服やうつわの企画・デザインなど幅広いフィールドで活躍し、気候危機問題に対しても活動を繰り広げる。「majotae(麻世妙)」との出合いをきっかけに、吉田さんと親交を深めてきた。

麻の一種・大麻の布は硬いのでは?と思いがちだが、「独特のとろみがあって、心地よい」とeriさん。そのコンセプトと質感に惚れ込み、「majotae」を使ったピローケースやポンチョなどの商品もつくっている。

そんな二人が、吉田さんの貴重なコレクションを前に語り合います。

 

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text: Kaori Nagano(Arika Inc.) photo: Kazuya Hayashi, Mitsuyuki Nakajima
Discover Japan 2021年9月号「SDGsのヒント、実はニッポン再発見でした。」

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