THE CONSTANT GARDENERS/ザ・コンスタント・ガーデナーズ
アート×テクノロジー×スポーツを融合させたロボティックアートインスタレーション
最先端のテクノロジーとアートを融合する作品を展開する英国のアーティスト、ジェイソン・ブルージュが率いるジェイソン・ブルージュ・スタジオが、「Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル 13」のひとつとして、2021年7月28日(水)〜9月5日(日)の期間、東京・上野公園において、大規模屋外ロボティックアートインスタレーション、「ザ・コンスタント・ガーデナーズ」を展示中だ。
ジェイソン・ブルージュ・スタジオ
ロンドンを拠点に多分野で活躍するアーティスト兼デザイナーのジェイソン・ブルージュが、2002年に設立したスタジオ。建築家、アーティスト、エンジニア、計算設計者のチームに加え、エレクトロニクス、プログラミング、プロジェクト管理の専門家で構成されている。インタラクションデザインを開発し、アート、建築、テクノロジー、インタラクティブデザイン分野のパイオニアとして国際的に活動。建築とインタラクションデザインを融合させ、最先端技術を駆使したミクストメディアを土台に、時空や空間をダイナミックに経験できる没入型の体験を探求している。人々をその環境に引き込むサイトスペシフィックな作品制作に情熱を注いでいる。https://www.jasonbruges.com/
このインスタレーションは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催期間と並行して公開されている。
日本の禅庭園の伝統の技と最先端のコンピューター技術が組み合わさり、アスリートが生み出す身体の動きをデータ化し、その動きを読み込んだロボットアームの庭師たちが枯山水のような庭園風景を描き出すアート作品だ。
様々なスポーツ競技のアスリートの動きを解析して文様化し、4つの産業用ロボットアーム庭師(ガーデナー)が、14トンの黒い玄武岩と4トンのシルバーグレーの花崗岩で構成された砂利を巨大なキャンバスに、禅庭園のような砂紋を描き出すというもの。
展示期間中に毎日パフォーマンスを行い、約150パターンもの独創的な作品をつくり上げる。作品は、時間の経過とともに展開するアスリートの動きを表現するものもあれば、一瞬の動作を描くものもあるそうだ。
この作品は、伝統的な禅庭園の美学と工芸、そして、それぞれの競技分野で鍛錬し、卓越したパフォーマンスを見せるアスリートたちから着想を得て考案された。庭師には長年の任務を終えた産業用ロボットアームを再活用し、作品を通して日常生活における機械の役割を映し出し、ロボット工学の新たな意義とクリエイションの可能性を伝える。
「ザ・コンスタント・ガーデナーズ」は、ロンドンを拠点に活動するジェイソン・ブルージュ・スタジオが日本で初めて発表する作品となる。ジェイソン・ブルージュ・スタジオはこれまで、人、データ、テクノロジー、自然を融合させ、都市の生活とは異なる時空や空間を体感できるインタラクティブな作品を数多く生み出している。
英国のビクトリア&アルバートミュージアム、テートモダン、自然史博物館などの主要な芸術文化機関とも協働で作品を制作してきた実績があり、2017年には、大規模なアートの祭典、「Hull UK Cityof Culture」の主要企画として、21台の産業用ロボットを使用したアートインスタレーション「Where Do We Go From Here?」を英国のハル市で発表した。
「ザ・コンスタント・ガーデナーズ」は、駐日英国大使館とブリティッシュ・カウンシルが2019年より日本において展開している日英交流年「UK in JAPAN」の主要プログラムの1つでもある。
アスリートの動きと禅寺の庭師の動きが似ていた
ジェイソン・ブルージュ氏 アスリートの動きと日本の禅寺における庭師の動きには共通点があるのです。それは、どちらも高度に作りあげられたある種の職人技を持っていることです。 私は、そのそれぞれに対して大いなるリスペクトの気持ちを持っています。
アスリートは自分たちの肉体を磨き上げ、鍛錬の上に非常に繊細で無駄のない動きを実現します。庭師も同じです。一つ一つの線や陰影を作り上げる卓越した技術や修行を積む過程も私には共通項があるように思えます。
禅の庭の瞑想的な性質と、それに関わる職人技に興味を持ち、スポーツ選手が自分の鍛錬のために体の動きを微調整するのと比較して、興味深いものがあると考えたと話す。
さらに、日本の優れた職人技や美学からインスピレーションを得て、木彫りやガーデニングに使われる日本の伝統的な道具を参考にしながら、ロボットアームが砂利にイラストをかき分けるための「道具」もデザインしたという。
一瞬の動作も見逃せない、
アーティスティックなパフォーマンス
ロボットによるパフォーマンスは、東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会のスケジュールと連動して毎日生成され、その日に行われる種目やメダリストにインスピレーションを得て、パフォーマンスを行うそうだ。
ジェイソン・ブルージュ氏に聞いた、
ロボットを用いた作品に込めた願いとは
ジェイソン・ブルージュ氏 このインスタレーションのコンセプトはテクノロジーと人が出会うものです。ロボットもプログラミングされた職人技を持つ。ロボットは人の中間的存在になると考えました。以前、ロボットを使ったアート(Where Do We Go From Here?)を展開したこともあり、ロボットを使用するというイメージはすでにできていました。
そして、テクノロジーと人が出会うアートこそ、最先端の都市であるこの ”東京” で展開することが最も意味があることだと思いました。
それらを融合させる一番重要な要素は、アスリートの動きをどう再現するかが課題でした。陸上競技や自転車競技、様々なアスリートの最高の瞬間を探すため、選手の動画を何度も繰り返し見ました。また、使用する砂利の素材、ロボットアームの先端に装着する機具、その素材から先端のデザインまで、アスリートの動きを砂利の上に最高のかたちで表現するために、あらゆるテストと研究を繰り返し、時間をかけて準備をしてきました。
この作品は、テクノロジー、プロジェクション、ロボティクスなどが一つに融合し、新しい空間を提供するものです。庭師が石庭の表面に描く波紋は視覚化させたアスリートの動きを捉えたものです。ロボットたちが掻き上げる様子はまるで近未来のアーティストのようです。
時に脅威的で無骨なものである、と人々が抱くロボットのイメージに対して、世の中に新たな提案を投げかけたいと思っているそうだ。
また同時に、庭師の役割を新たにプログラミングし、産業用ロボットを再活用することで、アートの分野でロボットを活用することへの意義を提唱していきたいと語る。
「いま私たちはコロナ禍で大変な日々を送っていますが、この作品が何かを考える新しいきっかけとなったり、家族や友人との話題の一つにでもなればと思います」
日本の伝統と英国の最先端のクリエイティビティが融合したコラボレーションアートを、ぜひ鑑賞してみてはいかがだろうか。
THE CONSTANT GARDENERS/ザ・コンスタント・ガーデナーズ
会期|2021年7月28日(水)~2021年9月5日(日)
会場|上野恩賜公園 竹の台広場(東京都台東区上野公園 池之端三丁目)
入場料|無料
開場時間|11:00~18:00 ※天候等によって変更が生じることがあります。
詳しくは | https://theconstantgardeners.art/
主催|東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京
特別協力|ブリティッシュ・カウンシル