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航路を駆使して経済の鍵を握った”街の発酵”【前編】
ニッポン全国発酵食品名鑑

2021.7.30
航路を駆使して経済の鍵を握った”街の発酵”【前編】<br><small>ニッポン全国発酵食品名鑑</small>

古代から発酵を生活に取り入れ、その恩恵にあずかってきた結果、それぞれの土地に根ざしたローカル発酵食品の宝庫となった日本。その土地ならではのストーリーに着目しつつ、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん選定による全国の発酵食品を「海」「山」「街」「島」の4つのカテゴリーに分類して紹介します。

交通の要衝や商人の町などでつくられ、付加価値を高めた醸造品が多いのが特徴。「付加価値をつけて貿易品とし、北前船などの廻船航路をはじめ、地の利を生かして利益を挙げていました。中世から近代にかけて日本の経済を支えていたのは、保存できるため遠くに運べ、しかも付加価値の高い醸造プロダクトでした」。

発酵デザイナー 小倉ヒラク
「発酵デパ ートメント」(東京・下北沢)オーナー。山梨県甲州市を拠点に全国の醸造家との商品開発、絵本・アニメの制作、ワ ークショップなどを行う。著書に『発酵文化人類学』(木楽舎)などがある

三五八(さごはち)/福島県
手軽に美味しく使える
会津伝統の一夜漬けの素

「石橋糀屋」の三五八は質、味ともに絶品。一夜漬けはもちろん、調味料としてもおすすめ

会津地方に古くから伝わる漬け床。原料を塩3:米5:糀(米麹)8の割合で仕込むことから三五八と呼ばれる。ぬか漬けのように手入れし続ける必要はなく、ひと晩置くだけで、塩麹漬けよりも味わい深く漬け上がるとあって人気があり、三五八漬けは日常的に家庭で手づくりされている。「米の産地かつ土地に財力があり、関東にも交易路があった会津ならではの贅沢な漬け物。野菜はもちろん魚や肉を漬けてもまろやかになります」。

食べられている地域
福島県をはじめとする東北・北陸地方

ここで買えます!
「石橋糀屋」の三五八
価格|648円
内容量|500g
原材料|糀、米、塩、酒精
Tel|0242-27-2136
注文方法|Fax(0242-27-1484)、Mail(koujiya@gray.plala.or.jp)、オンラインショップhttp://ishibashi.aizu1.com
※発酵デパートメントで取り扱いあり

水戸納豆/茨城県
ご飯のお供といえば
水戸名物の小粒納豆

笹沼家のルーツを受け継ぐ「天狗納豆」の極小粒 わら納豆は、味が濃厚で粘りが力強い!

20以上の納豆メーカーがある茨城県。「納豆王国の歴史は1889(明治22)年の水戸鉄道開業までさかのぼります。天狗納豆の初代・笹沼清左衛門が仙台で納豆の製造法を学んで帰り、駅のホームなどでお土産として売り出したところ大ヒットし、水戸の名産となりました。日本における納豆の源流は東北で、おかずとして大粒の納豆が食べられていましたが、水戸では土地に適した小粒の大豆でつくり、ご飯のお供になりました」。

食べられている地域
全国

ここで買えます!
「水戸元祖 天狗納豆」の極小粒
わら納豆3本束
価格|756円
内容量|納豆70g×3(タレ、マスタード付き)
原材料|大豆、納豆菌
Tel|029-221-4225
注文方法|Tel、Fax(029-224-5733)、オンラインショップ(www.tengunatto.com

焼きまんじゅう/群馬県
焼きたてが美味しい、
群馬県民のソウルフード

焼きたてが最高! おやつとしてはもちろん、ボリュームがあるので軽食としても十分

甘酒状の酒種を小麦粉と混ぜてパン種のように膨らませ、蒸してまんじゅうにする。そのまんじゅうに甘い味噌だれを塗って、直火でこんがり焼き上げたもの。「縁日などの屋台で売っていたものが、明治時代に労働者のファストフードとして人気を集めて以降、定番おやつになったそうです」。前橋市の「原嶋屋総本家」は、1857(安政4)年創業の焼きまんじゅう専門店。江戸時代と変わらぬ味をいまに伝える。

食べられている地域
前橋・高崎をはじめとする群馬県一帯

ここで買えます!
「原嶋屋総本家」の焼きまんじゅう箱詰めセット
価格|500円
内容量|25個入り
原材料|小麦粉、もち米、米麹、塩、砂糖、米味噌、水飴、カラメル色素
Tel|027-231-2439
注文方法|Fax(027-233-2049)、オンラインショップ(セキチュー楽天市場店)
※画像と実際は個数が異なります。
※焼いたものは発送不可

くず餅/神奈川県
葛粉ではなく、
発酵した小麦粉のでんぷんが原材料

モチモチ&プルプルのおやつ。時間が経つと硬くなってしまうので、その日のうちに食べよう

関西で主流のくず餅は葛粉でつくるが、川崎大師周辺から東京都葛飾区周辺でつくられるくず餅は、小麦粉から取り出したでんぷんでつくる。小麦粉を水に浸け、1年ほど発酵させるとでんぷんが分離してくる。何度も水で洗い、強烈な発酵臭と酸味を取り除き、白いペースト状になったら蒸して餅にする。江戸時代、備蓄していた小麦粉が水害で水浸しになったことから偶然生まれたとも伝わる。

食べられている地域
神奈川県・川崎大師~東京都・葛飾区周辺

ここで買えます!
「住吉屋総本店」の久寿餅
価格|550円
内容量|2人前(総重量約570g)
原材料|小麦でんぷん
Tel|044-266-4668
注文方法|Tel、Fax(044-277-8408)

アユのなれずし/岐阜県
清流のシンボル、
アユをまるごと味わう

酸味が少なく、澄んだ旨みがあり、酒の肴に最適。酵素で溶けたご飯は調味料やパテにも!

岐阜市中央を流れる長良川といえば、鵜飼でも知られるアユが代名詞。産卵期を迎えた子持ちアユをまるごと塩漬けにしてから、米飯と合わせて数カ月間漬け込み、熟成させたなれずしに臭みはない。「その大きな理由は、アユは昆虫などは食べずに、川の岩苔などを食べるベジタリアンであること。つまりアユは川の味そのもの。『泉屋』の泉善七さんいわく、アユのなれずしは川のテロワールなんです」。

食べられている地域
岐阜県・岐阜をはじめとする長良川流域

ここで買えます!
「泉屋物産店」の子持鮎熟れ寿し

価格|1620円
内容量|8切
原材料|子持ちアユ、米、塩
Tel|058-263-6788
注文方法|オンラインショップwww.nagaragawa.com
※発酵デパートメントで取り扱いあり

八丁味噌/愛知県
味噌の原形をいまに伝える
昔ながらの豆味噌

米味噌などを混ぜた赤だしと違い、リアルな八丁味噌は、旨みが超濃厚で甘酸っぱい風味

岡崎市八帖(はっちょう)町(旧八丁村)で370年以上にわたって受け継がれ、東海地方で愛される八丁味噌。一般的な味噌は、米麹で大豆を発酵させる米味噌だが、八丁味噌は蒸した大豆をつぶして玉状にし、そこにカビを付けた豆麹を使う。「大豆が麹になり、それがそのまま味噌になる。これは大陸系の味噌の系譜。かつて日本に渡ってきた味噌の原形をとどめています」。

食べられている地域
東海地方一帯

ここで買えます!
「まるや八丁味噌」の三河産大豆の八丁味噌

価格|561円
内容量|300g
原材料|大豆、塩
Tel|0564-22-0222
注文方法|Tel、Fax(0564-23-0172)、Mail(info@8miso.co.jp)、オンラインショップ(www.8miso.co.jp
※発酵デパートメントで取り扱いあり

ここで買えます!
「カクキュー」の国産大豆 八丁味噌 銀袋

価格|644円
内容量|300g
原材料|大豆、塩
Tel|0564-21-0151
注文方法|Tel(0120-238-319)、オンラインショップwww.kakukyu.jp
※発酵デパートメントで取り扱いあり

たまり醤油/三重県
長い発酵・熟成期間を経て
旨み、色、味わいすべてが濃厚に

濃厚でパンチがある醤油。刺身醤油のほか、照り焼きなど別の調味料と一緒に使うと◎

中部地方を中心につくられる豆味噌(大豆を主原料とする味噌)をつくる過程で、にじみ出た液体を取り出した醤油。一般的な醤油は、大豆のほかに小麦を使い、もろみの状態で圧搾するが、「東海醸造」の底引きたまりは、丸大豆と塩のみを木桶に仕込み、3夏3冬(3年半以上)をかけて静置発酵させたもの。無添加・未調整・未加熱・未圧搾の底引きたまりは、「醤油とは思えないほどフルーティな香りです」。

食べられている地域
東海地方一帯

ここで買えます!
「東海醸造」の底引きたまり
価格|1280円
内容量|300㎖
原材料|フクユタカ大豆、塩
Tel|059-382-0001
注文方法|Tel、Fax(059-382-5135)、Mail(ougon-tamari@fine.ocn.ne.jp)
www.tokaijozo.com
※発酵デパートメントで取り扱いあり

<一部は発酵デパートメントでも販売中!>
発酵デパートメント
住所|東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK内
Tel|03-6413-8525
営業時間|11:00 ~19:30
定休日|なし
https://hakko-department.com

 

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text: Miyu Narita photo: Atsushi Yamahira, Hiraku Ogura
Discover Japan 2021年7月号「ととのう発酵。」


《ニッポン全国発酵食品名鑑》
海の発酵【前編】【後編】
山の発酵【前編】【後編】
街の発酵【前編】【後編】
島の発酵

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