FOOD

塩が手に入りにくいゆえ
菌や作物で工夫を凝らした”山の発酵”【前編】
《ニッポン全国発酵食品名鑑》

2021.7.29
塩が手に入りにくいゆえ<br>菌や作物で工夫を凝らした”山の発酵”【前編】<br><small>《ニッポン全国発酵食品名鑑》</small>

古代から発酵を生活に取り入れ、その恩恵にあずかってきた結果、それぞれの土地に根ざしたローカル発酵食品の宝庫となった日本。その土地ならではのストーリーに着目しつつ、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん選定による全国の発酵食品を「海」「山」「街」「島」の4つのカテゴリーに分類して紹介します。

日本は国土の75%が山地で、南北に長いため自然や気候も多彩。「山の中にこそ、気候風土が生み出す発酵文化のバリエーションがあります。主役はその土地ならではの作物。そして、海辺と違って塩が貴重なので、植物の抗菌効果や酒粕、乳酸菌などを活用する発酵技術が進歩。そうして土地の食材を余さずに利用してきました」。

発酵デザイナー 小倉ヒラク
「発酵デパ ートメント」(東京・下北沢)オーナー。山梨県甲州市を拠点に全国の醸造家との商品開発、絵本・アニメの制作、ワ ークショップなどを行う。著書に『発酵文化人類学』(木楽舎)などがある

ごど/青森県
もったいない精神が生んだ
納豆×麹×乳酸菌の究極レシピ

ソフトごどはおかずとして食べ、ハードごどは味噌のような調味料として使うことも!

「南部地方は稲作が定着するのが遅く、大豆や麦を主食としていて、家庭で納豆をつくる文化がありました。その手づくり納豆がうまくできなかったとき、“なんとかして美味しく食べたい!”という想いから生まれたようです」。大豆を納豆にし、塩と米麹を加えて寒いところで発酵させる。1〜2週間ほどして米麹が溶けたら食べる。「個人的に、熟成の浅いものは“ソフトごど”、どろどろに溶けたものは“ハードごど”と呼んでいます」。

食べられている地域
青森県・十和田の一部

もっと知りたい方は!
十和田発酵食文化協会
Tel|090-4552-9451
http://towada.city/hakko

雪納豆/岩手県
豪雪地帯ならではの
雪に埋めてつくる幻の納豆

糸の引きがやや弱く、ほくほくした素朴な風味。地元では納豆汁やおかずとして食べる

年間の降雪量が10mを超える豪雪地、西和賀町に伝わる納豆。柔らかくなるまで蒸し煮した納豆を、温かいうちに藁苞(わらづと)に包み、湯たんぽなどと一緒に藁を敷いたむしろに並べて巻き、1mくらいの深さに掘った雪の中に埋めて1~2日ほど発酵させる。取り出して1日熟成させて出来上がり。いまではつくられることも少なく、地元でもなかなか食べることができない幻の納豆となっている。

食べられている地域
岩手県・西和賀の一部

もっと知りたい方は!
ユキノチカラプロジェクト協議会
Mail|yukinochikara.nishiwaga@gmail.com
https://yukino-chikara.com

煎じきうり/山形県
畑仕事の合間に食べる
蒸し暑い夏の食欲増進材

雑味のない酸っぱいピクルスは、夏を乗り切る食欲増進材。塩分と水分も補給できます

鶴岡市の田園地帯、小京田(こきょうでん)地区の農家に伝わるキュウリのピクルス。塩でもんだキュウリを樽に詰め、水を入れて重石をする。1日漬け込んだら、上がってきた水分を煮詰め、冷まして樽に戻し、そこにまたキュウリを漬け込む。煮詰める(煎じる)→漬ける、という工程を毎日5回繰り返し、樽の中の水分が白濁し、キュウリが酸っぱくなったら出来上がり。水分を何度も煮詰めることで雑菌の繁殖を防いでいる。

食べられている地域
山形県・鶴岡の田園地帯

もっと知りたい方は!
発酵デパートメント
Tel|03-6413-8525
https://hakko-department.com

たまり漬け/栃木県
たまりに漬け込んだ
日光街道の名物

「上澤梅太郎商店」のたまり漬けはとにかくご飯が進む。香りを嗅ぐだけでお腹が減るほど!

味噌をつくるときに出るたまりの中に、塩漬けにした野菜を漬け込み、漬け床を何度か替えながら、数カ月以上熟成させてつくる。「オリジナルは、今市で400年続く醸造家、上澤(うわさわ)家の開発したレシピ。もともとは地元農家の素朴な製法だったものを、奈良漬けのように何度も漬け床を替えることで深く発酵させ、味にコクを出し、付加価値の高い高級品としてアレンジしました」。

食べられている地域
日光をはじめとする栃木県周辺

ここで買えます!
「上澤梅太郎商店」の日光みそのたまり漬
七種刻み合わせ(だんらん)
価格|540円
内容量|120g
原材料|大根、キュウリ、ショウガ、フキなど
Tel|0288-21-0002
注文方法|Tel、Fax(0288-22-0002)、Mail(uwasawa@tamarizuke.co.jp)、オンラインショップ(www.tamarizuke.co.jp
※発酵デパートメントで取り扱いあり

しゃくし菜漬け/埼玉県
冬の秩父の食卓に欠かせない
シャキシャキの漬け物

シャキシャキの食感とほどよい酸味が特徴。炒め物にしても美味。調味料的にも使えます

しゃくし菜は、武甲山がそびえる秩父市周辺で、古くから栽培されている伝統野菜。正式には雪白体菜(せっぱくたいさい)といい、葉のかたちが杓子に似ていることからこう呼ばれるようになったという。初冬に収穫し、屋外で1~2日ほど天日干しにした後、大きな樽に塩を加えながら丁寧に並べ、漬け込む。ひと冬分を漬けて、冬の間中、保存食として楽しむ。

食べられている地域
埼玉県・秩父周辺

ここで買えます!
「石川漬物」のしゃくしな漬

価格|380円
内容量|300g
原材料|しゃくし菜、塩など
Tel|0494-75-0310
注文方法|Tel、Fax(0494-75-4175)、オンラインショップwww.shakushina.com

かんずり/新潟県
雪原にまいた唐がらしでつくる
発酵香辛調味料

鍋物や麺類などの調味料に、肉料理や丼物の隠し味に。地元では、ラーメンに入れるそうです

豪雪地帯、妙高市でつくられる発酵香辛調味料。塩漬けにした唐がらしを雪の中にさらし(雪さらし)、麹、ユズ、塩と一緒に樽に漬け、3年以上をかけて発酵・熟成させたペースト状の調味料。寒中に仕込むことから“寒造里”とも書く。「もともとは唐がらしの塩漬けだったものが、寒い時期に軒先に吊るしていた唐がらしがたまたま落ちて雪の中に埋もれてしまった。それを食べてみたら美味しかったことから生まれたそうです」。

食べられている地域
妙高をはじめとする新潟県周辺

ここで買えます!
「かんずり」の吟醸生 吟醸生かんずり6年仕込ミニ
価格|648円
内容量|40g
原材料|唐がらし、糀、ユズ、塩
Tel|0255-72-3813
注文方法|Tel、Fax(0255-72-0344)、オンラインショップhttps://kanzuri.com
※発酵デパートメントで取り扱いあり

甲州ワイン/山梨県
ローカルブドウを醸したワインは
和食によく合う山梨の地酒

甲州ワインは、種や皮のほろ苦さと日本の土っぽいミネラル感がある丸い風味で和食と好相性

ブドウの収穫量、ワインの生産量ともに日本一を誇る山梨県。中でも、日本ワイン発祥の地である甲府盆地には、ブドウ畑が連なり、多くのワイナリーが点在する。甲州ワインは、1000年以上の歴史をもつ日本固有品種である白ブドウ・甲州を醸したもの。「山梨では、日本酒の一升瓶に入ったワインが日常の食卓で楽しまれていました。山梨県民にとって、地酒といえば日本酒ではなく、ワインなんですね」。

飲まれている地域
山梨県一帯

ここで買えます!
「マルサン葡萄酒」の甲州 百
価格|1540円
内容量|720㎖
ブドウ品種|甲州
Tel|0553-44-0160
注文方法|Fax(0553-44-1670)、Mail(wakao-marusan@maroon.plala.or.jp)
※発酵デパートメントで取り扱いあり

すんき/長野県
塩を一切使わず乳酸菌の力でつくる漬物

鰹節などをかけてそのまま食べるほか、鍋物や味噌汁の具にしても美味

山々に囲まれ、標高が高く、寒さの厳しい木曽地域は、赤カブの名産地。山深い地ではかつて、塩は大変貴重なものだったため、冬期に野菜を保存するにあたって、塩ではなく野生の乳酸菌で発酵させた“すんき”(すんき漬け)が生まれたという。赤カブの葉を樽に入れて湯通しし、前年につくったすんきを種として入れ、ひと晩発酵させたらできあがり。温かい蕎麦にのせた「すんきそば」は木曽の名物。

食べられている地域
長野県・木曽~塩尻一帯

ここで買えます!
「アルプス物産」のすんき
価格|594円
内容量|250g
原材料|赤カブ葉、赤カブ
Tel|0264-22-2351
注文方法|Tel、Fax(0264-22-2305)、Mail(info@alpusbussan.co.jp)、オンラインショップ(www.alpusbussan.co.jp
※発酵デパートメントで取り扱いあり

<紹介している商品の一部は発酵デパートメントでも販売中!>
発酵デパートメント
住所|東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK内
Tel|03-6413-8525
営業時間|11:00 ~19:30
定休日|なし
https://hakko-department.com

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text: Miyu Narita photo: Atsushi Yamahira, Hiraku Ogura
Discover Japan 2021年7月号「ととのう発酵。」


《ニッポン全国発酵食品名鑑》
海の発酵【前編】【後編】
山の発酵【前編】【後編】
街の発酵【前編】【後編】
島の発酵

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