FOOD

生で食べきれない魚介類を
有効活用した”海の発酵”【前編】
《ニッポン全国発酵食品名鑑》

2021.7.28
生で食べきれない魚介類を<br>有効活用した”海の発酵”【前編】<br><small>《ニッポン全国発酵食品名鑑》</small>

古代から発酵を生活に取り入れ、その恩恵にあずかってきた結果、それぞれの土地に根ざしたローカル発酵食品の宝庫となった日本。その土地ならではのストーリーに着目しつつ、発酵デザイナーの小倉ヒラクさん選定による全国の発酵食品を「海」「山」「街」「島」の4つのカテゴリーに分類して紹介します。

島国の日本は、昔から海の幸が豊富。また長らく肉食が禁止され、魚介は重要なタンパク源だった。だがその漁期は限られている。「海の発酵は時間のコントロール術。一瞬の漁期に大量に捕れる海の幸を有効に利用するために、酢漬けや塩漬けにしたり、麹や米と合わせてなれずしにしたりと、さまざまな加工技術が進化しました」。

発酵デザイナー 小倉ヒラク
「発酵デパ ートメント」(東京・下北沢)オーナー。山梨県甲州市を拠点に全国の醸造家との商品開発、絵本・アニメの制作、ワ ークショップなどを行う。著書に『発酵文化人類学』(木楽舎)などがある

山漬け/北海道
アイヌの加工技術と
和人の製塩技術の出合いから誕生

「標津漁業協同組合」の標津番屋鮭はリッチな旨み。焼いても、そのまま食べても美味

えらと内臓を取り除いた鮭の身に塩をもみ込み、箱に仕込んで何段も重ねて重石をのせる。数日から10日ほど熟成させて塩を洗い、乾燥させてつくる。「アイヌの人々がつくっていた鮭の干物と、江戸時代に和人が持ち込んだ塩の文化が合体してできたもの。農耕が難しかった地ですが、山漬けをそのまま食べればビタミンを摂取でき、食中毒のリスクも軽減。とても理にかなったレシピだと思います」。

食べられている地域
北海道、新潟県の一部、佐渡島

ここで買えます!
「標津漁業協同組合」の標津番屋鮭 輪切
価格|350円
内容量|100g
原材料|鮭、塩
Tel|0153-82-2035
注文方法|Tel(0120-444-003)、Fax(0153-82-2388)、オンラインショップwww.sake-ikura.jp

あざら/宮城県
食材を余すことなく活用する
知恵が詰まった漁師料理

和風ブイヤベースと呼びたくなるような、まろやかで滋味のある味わいです

漁師町、気仙沼市周辺の郷土料理。メヌケという深海魚のアラと、長期間漬け込んで発酵が進み、酸味が増した白菜の古漬けを酒粕で煮込み、旨みを凝縮させたもの。家庭でつくられるほか、店舗でも提供され、それぞれで味つけが異なる。メヌケの旬が冬であること、また白菜を冬に漬け込むことから、春に食べることが多い。近年、メヌケの漁獲量が減っていることから、ほかの魚を使ってつくられることもある。

食べられている地域
宮城県・気仙沼一帯

ここで食べられます!
のんびり酒場ニコル
住所宮城県仙台市青葉区大町2-11-1
Tel|022-263-1628
営業時間|17:00~24:00
定休日|日曜
https://nicoru44.exblog.jp

しょっつる/秋田県
ハタハタでつくる
秋田県民の基本調味料

秋田の食の“さしすせそ”の“し”はしょっつるといえるほど。鍋物や醤油代わりに!

初冬のわずかな期間、秋田県の日本海沿岸部にはハタハタが押し寄せる。しょっつるは、そのハタハタを使ってつくる魚醤。名前は塩汁(しおじる)がなまったものだという。魚醤は、小魚やアミを塩漬けにしてドロドロに溶かし、そこからにじみ出た汁をこしたもの。「諸井醸造」のハタハタ100%は、ハタハタと天日塩だけを使い、ハタハタ自体の酵素作用に任せ、3年の熟成を経てつくる昔ながらのしょっつる。

食べられている地域
秋田県一帯

ここで買えます!
「諸井醸造」の秋田しょっつるハタハタ100%
価格|756円
内容量|130g
原材料|ハタハタ、塩
Tel|0185-24-3597
注文方法|Tel、Fax(0185-23-3161)、Mail(info@shottsuru.jp)、オンラインショップ(www.shottsuru.jp
※発酵デパートメントで取り扱いあり

鰯のゴマ漬け/千葉県
江戸時代以来の鰯の町
九十九里浜の郷土料理

酒の肴にはもちろん、丼にしても美味しい。黒ゴマやショウガの香りにご飯がよく進みます

房総半島東岸の九十九里浜は鰯の好漁場。江戸時代には、関西を中心に綿花などの栽培が増え、肥料として鰯を乾燥させた干鰯(ほしか)の需要が高まり、大量に漁獲され全国へ送られていた。「その後、安価な輸入綿花が主流になると、鰯は庶民の食料となり、ゴマ漬けが生まれました」。頭と内臓を取った鰯を1日塩漬けにしてからよく洗い、ゴマやショウガ、唐がらしなどと一緒に数日間酢漬けにしてつくる。

食べられている地域
千葉県・房総半島一帯

ここで買えます!
「カネヨン水産」のいわしのごま漬
価格|1188円
内容量|500g
原材料|カタクチイワシ、酢、砂糖、ゴマ、ショウガ、塩、唐がらしなど
Tel|0120-76-2254
注文方法|Tel、Fax(0475-76-2026)、Mail(info@kaneyon.co.jp)、オンラインショップ(http://kaneyon.co.jp

黒作り/富山県
加賀藩のお墨付き!
イカ墨を使った真っ黒な塩辛

普通の塩辛よりも味にまろみと深みがあり、日本酒がエンドレスに進む。赤ワインとも好相性

富山湾で水揚げされたスルメイカの身とワタを塩漬けにしてひと晩寝かし、内臓とイカ墨を加えて混ぜ、発酵・熟成させた塩辛。イカの甘みとイカ墨ならではのコクを味わえる。江戸時代には加賀藩主から将軍家に献上された。「名産品をつくることに熱心だった加賀藩が、鎖国中の日本で当時、海外との唯一の窓口だった出島(長崎県)に使節団を送り、大陸やヨーロッパで料理に使われていたイカ墨に着目して生まれたといいます」。

食べられている地域
富山県一帯

ここで買えます!
「京吉」のするめいか黒作り
価格|1200円
内容量|150g
原材料|スルメイカ、イカ墨、イカ肝臓、塩、みりんなど
Tel|0766-55-3498
注文方法|Fax(0766-55-2498)、オンラインショップ(http://kyoukichi.co.jp/index.html
※発酵デパートメントで取り扱いあり

フグの卵巣ぬか漬け/石川県
猛毒をもつフグの卵巣を
発酵の力で無毒化

酒の肴としてはもちろん、お茶漬け、ピザの具やパスタソースにしても美味しいですよ

白山市美川地区周辺に伝わる珍味で、猛毒をもつフグの卵巣を1年ほど塩漬けにし、さらに1年以上、ぬか漬けにしたもの。江戸時代にはすでにつくられていたと伝わるが、無毒化するメカニズムは解明されていない。「あら与」のふぐの子ぬか漬けは、ゴマフグの卵巣を塩漬けして1年置き、さっと洗ってからぬかに漬けてふた梅雨置く。その間、石川名物のいしる(魚醤)を漬け樽にさして旨みを引き出す。

食べられている地域
北陸地方一帯

ここで買えます!
「あら与」のふぐの子ぬか漬
価格|1296円
内容量|1個
原材料|ゴマフグの卵巣、ぬか、糀、塩、魚汁、唐がらし
Tel|076-278-3370
注文方法|Tel、Fax(076-278-5688)、Mail(inform@arayo.co.jp)、オンラインショップ(https://arayo.co.jp
※発酵デパートメントで取り扱いあり

鯖のなれずし/福井県
へしこ(ぬか漬け)にした鯖を
さらに発酵させてなれずしに

酒の肴はもちろん、お茶漬けにするのもおすすめです

へしこは、北陸の日本海沿岸部に伝わる魚のぬか漬け。鯖、鰯など青魚をよく使う。古くから鯖や鯵などの漁で栄えた、小浜市の田烏(たがらす)地区では、漁期に大量に捕れた鯖をへしこにし、さらにそのへしこをなれずし(塩漬けにした魚と米飯を合わせ、自然発酵させてつくる寿司)にして、正月などハレの日の料理とする。ぬか漬けの香ばしさと、なれずしの酸味と旨みが合わさったその風味から、“海のチーズ”とも呼ばれる。

食べられている地域
福井県・若狭湾をはじめとする北陸地方一帯

ここで食べられます!
民宿 佐助
住所|福井県小浜市田烏36-47
Tel|0770-54-3407
料金|1泊2食付(鯖コース)1万1000円、
昼食のみ鯖付コース4400円〜
営業時間|12:00~14:00
定休日|年末年始

<一部は発酵デパートメントでも販売中!>
発酵デパートメント
住所|東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK内
Tel|03-6413-8525
営業時間|11:00 ~19:30
定休日|なし
https://hakko-department.com

 

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text: Miyu Narita photo: Atsushi Yamahira, Hiraku Ogura
Discover Japan 2021年7月号「ととのう発酵。」


《ニッポン全国発酵食品名鑑》
海の発酵【前編】【後編】
山の発酵【前編】【後編】
街の発酵【前編】【後編】
島の発酵

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