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Far Yeast Brewing
ファーイーストブルーイング 小菅村
話題のクラフトビールを縄文キャンプ場で!【前編】

2021.6.30
Far Yeast Brewing<br>ファーイーストブルーイング 小菅村<br><small>話題のクラフトビールを縄文キャンプ場で!【前編】</small>
「Far Yeast Brewing」のビールはTEKUグラスでいただくことで、香りがより引き立つ。飲むとビールがのどに当たる設計のため、美味しさを強く感じられる

日本のクラフトビールを世界に発信してきたFar Yeast Brewingが昨年、山梨県小菅村に拠点を移し、話題になりました。この春、そのビールがキャンプ場で味わえるように!今回は、企業が小菅に移住した理由や、キャンプ場で楽しめるビールの魅力を前後編記事でご紹介します。

Far Yeast Brewingが
多摩川源流・小管に企業移住したワケ

1回の仕込み量は3000ℓ。現在は12本の発酵・貯酒タンクと2本の充填用タンクを使用。ビールを充填させた後、2週間寝かせて容器二次発酵を行う

山梨県小菅村があるのは、多摩川の源流域。森林面積が村の95%を占め、山には鹿やイノシシ、野鳥が生息するなど、豊かな自然が残されている。都心から車で約2時間という気軽さから、キャンプやツーリングを楽しみに訪れる人も多く、2019年に古民家ホテル「NIPPONIA 小菅 源流の村」がオープンしたことで、人口約700人のこの小さな村は静かな盛り上がりを見せはじめた。

さらに小菅村の名を全国区にしたのは、’20年秋に世界的な人気を誇るクラフトビールメーカー「Far Yeast Brewing」が、東京・渋谷から小菅村へ本社を移転させたニュースだ。Far Yeast Brewingは’17年から小菅村に自社工場「源流醸造所」を構えており、本社機能を一体化させたというわけだ。そこにはどのような背景があったのか。代表の山田司朗さんに話を聞いた。

「新型コロナウイルスの感染拡大を受けてリモートワーク体制へ移行したのですが、スタッフのパフォーマンスは低下するどころか業務の効率化が図れました。ビールメーカーとして最も重要なのは工場です。そこに本社を置くのは自然なことですので、移転の決断に迷いはありませんでした」

Far Yeast Brewingの創業は’11年(旧社名・日本クラフトビール)。ベンチャーキャピタルやIT企業でキャリアを積んだ後、イギリスのケンブリッジ大学でMBAを取得した山田さんが、ヨーロッパでの暮らしを通じてビールの歴史、文化、多様性に魅了されたことが設立のきっかけとなった。

「私たちが掲げるミッションは『Democratizing Beer』。産業化により画一的な大量生産商品となったビールの多様性と豊かさを取り戻すことを目指して活動しています。’11年当時はすでにクオリティの高いビール造りを行うブルワリーさんが日本のクラフトビール業界を牽引していたので、同じようなことをしても業界への貢献度が低い。なので切り口の異なるビールを造ろうと思い、生み出したのが『馨和 KAGUA』です」

2019年よりスタートした3つ目のブランド「Off Trail」は木樽で熟成させるバレルエイジビールで、複雑な味わいに仕上がる

「馨和 KAGUA」は国産のユズと山椒を原材料に使用した華やかな風味で、ハイアルコールな食中酒の位置づけだ。’14年にはビールの多様性をより強く発信していくため、新たなブランドとして東京をテーマにした「Far Yeast」をリリース。アロマホップによる洗練された香りが漂う、ドリンカブルなビールを意識したという。

Far Yeast Brewingは醸造所をもたない「ファントムブルワリー」としてスタートしたが、’17年、満を持して小菅村に醸造所を立ち上げる。

「小菅村は寒冷な気候であり、きれいな水が豊富です。温暖な気候だとビールにとって有害な菌が繁殖しやすく、製造工程で水をたくさん使いますから、この2点は大きな利点でした。加えて小菅村は多摩川の源流域。『Far Yeast』は『東京ブロンド』、『東京ホワイト』、『東京アイピーエー』といったシリーズで展開しているので、“東京の水源である”というストーリーとしてリンクします。中身は同じですが、山梨県内では“東京”を“源流”に変えて販売しているんですよ」

本社移転に伴い地域活性の取り組みもますます積極的に行うようになった。そのひとつが山梨県内で栽培された果物や野菜を原料にしたビールを醸造するなど、さまざまな“Made in Yamanashi”シリーズを展開する「山梨応援プロジェクト」である。

「地域との連携を強化しながら、雇用や移住も促進していきたいですね。地域創生の推進、環境負荷の低減、社会課題の解決などの視点をもち、実行に移していくことが、これからの時代における企業の責任だと考えています」。

地域の生産者とコラボしたビール造り 「山梨応援プロジェクト」
第1弾は桃を使った「PEACH HAZE」(左)、第2弾は梅を原料にした「Ume-kin’ Me C razy!」(右)、第3弾はピオーネ、巨峰、ゴルビーを用いた「GRAPEVINE」(中)を醸造。第4弾はトマトを使用した「Far Yeast Omo iro Tomato Ale」が5月21日に発売。公式オンラインストアで購入可能(数量限定)

 

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原始村キャンプ場
住所|山梨県北都留郡小菅村1970
Tel|080-9297-6609
料金|竪穴バンガロー1万2000円(最大6名、施設利用料として別途大人500円/1人、小人300円/1人)、ハイシーズン(2021年度は4月26日〜5月9日、7月1日〜8月31日)を除く平日は1泊3000円引き。竪穴バンガローのほか、横穴バンガローやテントサイトもあり
IN|14:00 OUT|10:00
館内施設|バーベキュースペース、川遊びスペース、シャワールーム、食事処

食事処ムッカ
住所|山梨県北都留郡小菅村1970(原始村キャンプ場内)
Tel|080-9297-6609
営業時間|11:00〜15:00(ランチのみ)
定休日|火・木曜
※2021年5月オープン予定
※村内の「道の駅こすげ」(Tel|0428-87-0765)でも、Far Yeast Brewingのビールが購入可能です
◎電車の場合/JR奥多摩駅からバスで約50分(「小菅の湯」バス停)
◎車の場合/JR奥多摩駅から国道411号、国道139号を経由して小菅村まで約30分

text: Nao Ohmori photo: Maya Matsuura
Discover Japan 2021年6月号「ビールとアウトドア」

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