葛飾北斎生誕260年記念企画
特別展「北斎づくし」
20歳で浮世絵師としてデビューしてから90歳で没するまでの70年間、常に挑戦を続けて森羅万象を描き抜こうとした画狂の絵師・葛飾北斎(1760-1849)。その生誕260年を記念し、代表作である『北斎漫画』、「冨嶽三十六景」、『富嶽百景』の全頁・全点・全図が一堂に会する前代未聞の特別展「北斎づくし」を2021年7月22日(木)〜9月17日(金)まで、東京ミッドタウン・ホールで開催する。
この展覧会は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため昨年より開催を延期していたもので、特別展「北斎づくし」と名称も新たに、膨大な北斎作品たちによって埋め尽くされた北斎ワールドが東京・六本木に出現する。
特別展「北斎づくし」のみどころ
《北斎漫画》《冨嶽三十六景》《富嶽百景》全頁・全点・全図コンプリート!
世界一の北斎漫画コレクター・浦上満氏(浦上蒼穹堂)の全面協力により、世界最高水準の質と量を誇る『北斎漫画』『富嶽百景』コレクションを展示。特に『北斎漫画』は、全頁を同時に展示するために約500冊の『北斎漫画』が一挙集結!まるで「北斎漫画の森」ともいえる空間が展示室に現れる。さらに、山口県立萩美術館・浦上記念館が所蔵する「チコチンコレクション*1」「浦上コレクション*2」を含む、「冨嶽三十六景」全46点を通期で展示し、北斎の画業を代表する3作品の全頁・全点・全図を一挙に公開する。
*1 チコチンコレクション
日本美術史の研究家で、イスラエル・ハイファに日本美術館を設立するほどの浮世絵コレクターであったフェリックス・チコチン氏は、欧米において北斎の魅力を広く知
らしめ、北斎の高い評価を確立した。その氏が、最後まで手放さなかった秘蔵の作品であり、質・保存状態ともに非常に優れた珠玉の浮世絵コレクション。
*2 浦上コレクション
萩市出身のコレクターの浦上敏朗氏が蒐集し、北斎や広重、国芳など江戸時代を代表する浮世絵師の作品を中心とした、非常に質・保存状態の優れた約5500点の浮世絵コレクション。
1|北斎漫画
(初編~15編/全883頁)
北斎が森羅万象を描いた全15編の絵手本。江戸の風俗、職人の作業の様子を始めとして、動植物、風景、建築、人物、故事から妖怪に至るまで、約3600図が生き生きと描かれている。
『北斎漫画』はベストセラーだった!
『北斎漫画』は、当初、絵手本として1冊で完結の予定だったが、予想以上の売れ行きで、庶民から大名までたいへん人気を博し、全15編が刊行された。初編は文化11(1814)年、北斎が55歳の時に刊行されたが、90歳で亡くなった後も刊行され続け、明治11(1878)年に15編が刊行されて完結した。
見えないものまで描く、現代人も舌を巻く表現力
北斎の優れた観察眼によって庶民の生活や名所の風景などが数多く描かれているが、北斎の表現力は「風」のような目には見えないものまでも的確に描写されていた。後摺りで背景に風の動きが追加されたものもあるが、初摺ではポージングや風になびく服の表現だけで、激しい「風」をリアルかつ魅力的に描いている。
2|冨嶽三十六景
(全46点)
富士山を主題として描かれた大判錦絵の風景画揃物。藍の主版を用いた36点に加え、好評により追加された墨の主版を用いた10点の計46点で構成。「凱風快晴」(通称:赤富士)や「神奈川沖浪裏」(通称:大波)は、圧倒的な知名度を有し、世界中で日本のアイコンとして浸透している。
浮世絵に革命を起こしたベロ藍の使用!
当時は希少で高価だったベロ藍を、海や湖などの水や空の表現だけでなく、通常は墨が使われる輪郭線で使用するなど、天保2(1831)年に刊行が始まった「冨嶽三十六景」シリーズで多用し、浮世絵の世界に衝撃をもたらした。この展覧会でも、藍一色で摺られた「常州牛堀」の貴重な初摺りを展示する。
北斎の遊び心!水面に写るのは真実、虚構?
中央の富士の山頂には雪がなく生い茂る木々の緑から初夏を思わせるが、反射した湖面には雪を抱いた姿が映し出されている。北斎は鏡に写る美人図を何点か描いているが、この富士も湖面の水鏡に眉目秀麗な雪化粧の姿を写している。どちらが真実でどちらが虚構の像なのだろう。様々な画題を描いた北斎らしい遊び心が感じられる。
3|富嶽百景
(全102図)
富士山にまつわる神話や伝説、歴史は古来から数多くあり、これらを踏まえて四季折々の富士山の姿を描いた絵本。初編・二編・三編の3冊に計102図をおさめており、北斎絵本の最高傑作といわれる。
75歳にしてなお成長を志す、驚くべき北斎の向上心!
『富嶽百景』初編の跋文は作品以上に有名かもしれませんが、70歳以前の絵は取るに足らないもので、73歳にしてようやく動植物の骨格や出生を悟ることができたと述べている。そして、80歳でさらに成長し、90歳で奥意を極め、100歳で神妙の域へ、110歳になれば1点1格が生きているようになるだろうと記されており、100歳を超えてなお成長し、森羅万象を生き生きと描き、絵師として向上しようとする気概が感じられる。
現代のマンガ表現にも通じる、圧巻の大・爆・発!
初編に描かれた「宝永山噴火」は1707年におこった富士山の宝永大噴火の様子を描いたもの。噴火は1760年生まれの北斎が誕生する50年以上前に起きた噴火であり、その様子を実際に目にしてはいない。しかし北斎はこの大事件を、読み本の挿絵などで磨かれた様々な表現技術や想像力を用い、爆発で飛び散る人や物がまるで現代の高速カメラで捉えた静止画像のようにも見える構図で、その激しさを描ききっている。
北斎をリスペクトする豪華なメンバーが集結。
画狂の絵師・北斎の魅力を引き出す!
世界一の北斎漫画コレクターである浦上満氏、国際的な注目を集める建築家の田根剛氏、鬼才アートディレクター・ブックデザイナーの祖父江慎氏、日本美術を主な領域とするライター・エディターの橋本麻里氏ら、北斎を敬愛するメンバーが集結し、北斎が持つ過剰なほど多彩な側面のすべてと出会える空間が、この夏、六本木に出現する。
世界一の北斎漫画コレクター”浦上満氏”のコレクションを一挙大公開!
世界一の北斎漫画コレクターである浦上満氏の全面協力により、全15巻・全883頁からなる『北斎漫画』に描かれた全点を一堂に展示。全てを展示するためには約500冊が必要となるが、『集め続けて50年になるが、全く飽きることがない』という浦上氏が蒐集した『北斎漫画』は1500冊以上。今回は希少な初摺を中心に、質・量ともにすばらしい作品を一挙大公開し、空前絶後の展示を実現させる。
浦上満さんからのコメント
18歳の時に「北斎漫画」に遭遇し、衝動買いしてから50年、ひたすら蒐集して1500冊超。北斎に心を奪われた変人たちと協力して空前の「北斎づくし」を展開します。皆さんも是非一緒になって北斎にどっぷりつかってみませんか?!
浦上満(うらがみ・みつる)
浦上蒼穹堂代表。1951年東京生まれ。学生時代に「北斎漫画」の魅力に取りつかれ、50年かけて1500冊以上を蒐集。質・量ともに世界一のコレクターとして知られる。2016年、「北斎漫画」の真価を伝え啓蒙に尽力した功績で第10回国際浮世絵学会賞を受賞。1979年、東京・日本橋で東洋古陶磁を主に扱う「浦上蒼穹堂」を設立。東京美術倶楽部常務取締役、国際浮世絵学会常任理事、東洋陶磁学会監事。著書に「古美術商にまなぶ中国・朝鮮古陶磁の見かた、選びかた」(淡交社)、「北斎漫画入門」(文藝春秋)など。
フランス国立グランパレ美術館で開催された「北斎展」の会場デザインも手掛け、北斎を敬愛する建築家・田根剛氏が生み出すかつてない空間!
これまでに『エストニア国立博物館』(2016)や、『新国立競技場・古墳スタジアム(案)』(2012)、『北斎展-グランパレ』(2014)、『弘前れんが倉庫美術館』(2020)など国内外で数多くのプロジェクトを手掛け、国際的な注目を集める建築家・田根剛氏が展示空間を設計。
この展覧会のコンセプトである「尽くし」をテーマに、作品ごとに異なるコンセプトをもつ空間を計画中。それぞれの作品の魅力を最大限に引き出し、体感できる空間の中で作品と対面することで、北斎の魅力をさらに引き出す。
田根剛さんからのコメント
北斎とレオナルド・ダ・ヴィンチこそが、人類史上で生きとし生けるものを描きつくし、そしてその画に生命を宿し、動きを与えたいと神に願った執念にこそ、時代を超えて世界中のひとびとに驚きと喜びを与えてくれる。
田根剛(たね・つよし)
建築家。1979年東京生まれ。Atelier Tsuyoshi Tane Architectsを設立、フランス・パリを拠点に活動。主な作品に『エストニア国立博物館』(2016)、『新国立競技場・古墳スタジアム(案)』(2012)、『Todoroki House in Valley』(2018)、『弘前れんが倉庫美術館』(2020)など多数。フランス文化庁新進建築家賞、ミース・ファン・デル・ローエ欧州賞2017 ノミネート、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞など多数受賞。著書に『TSUYOSHI TANE Archaeology of the Future』(TOTO出版)など。ATTA official website:http://at-ta.fr/
アートディレクター・祖父江慎氏が手掛ける、グラフィックの数々
この展覧会のキービジュアル、及び北斎の世界観を表現する会場グラフィックは、『北斎漫画』(全3巻,青幻舎)などのブックデザイン、展覧会のアートディレクション、グラフィックを数多く手掛ける、祖父江慎氏が担う。同氏が手掛ける北斎作品の魅力を奥底から引き出すデザインにも期待。
祖父江慎さんからのコメント
北斎といえばやっぱり「笑い」です。印刷技術を使って、これほど庶民をあっと驚かせ続けた絵描きっていません。今ではずいぶん偉くなってしまいましたが、この展覧会では北斎の原点に戻って「つっこみどころ満載の笑い」を楽しんでいただけるよう張り切って準備しています。ぎゃふん。
祖父江慎(そぶえ・しん)
アートディレクター、ブックデザイナー。1959年愛知県生まれ。すべての印刷されたものに対する並はずれた「うっとり力」をもって、ブックデザインや展覧会のアートディレクション、グラフィックなどを数多く手がける。著書にこれまでの仕事をまとめた『祖父江慎+コズフィッシュ』(パイインターナショナル)がある。
橋本麻里氏が手掛ける、分かりやすく楽しい展示解説!
日本美術を主な領域とし、『BRUTUS』などの雑誌で日本美術特集を手掛ける橋本麻里氏が、作品のみどころを中心に展示空間に散りばめられる解説を編集。作品と向き合う時間を、より一層楽しく、そして深みのあるものにする仕掛けを取り入れながら、鑑賞後に「こんな北斎知らなかった」と感じる空間を目指す。
橋本麻里さんからのコメント
森羅万象をフラットに扱い、ある限りを蒐集する「尽くし」は、近代的な分類・整序と全く異なる世界観に基づく手法だ。北斎の作品と文化的遺伝子ミームが充満した=尽くされた会場で、その混沌と興奮を体感いただきたい。
橋本麻里(はしもと・まり)
日本美術を主な領域とするライター・エディター。永青文庫副館長。著書に『京都で日本美術をみる[京都国立博物館]』(集英社クリエイティブ)、『変り兜-戦国のCOOL DESIGN-』(新潮社)。共著に『SHUNGART』『北斎原寸美術館 100%Hokusai!』(ともに小学館)、『運慶 リアルを超えた天才仏師』(新潮社)ほか。編著に『日本美術全集』第20巻。新聞、雑誌などへの寄稿のほか、NHKを中心に美術番組で解説を務める機会も多い。
本展のために取得した高精細データで、北斎の描いた世界へ没入!
世界最高峰の文化財デジタルアーカイブ実績を誇る凸版印刷が、この展覧会のために新たに取得した、和紙の繊維まではっきり確認できるほどの高精細なデジタル画像を活用。江戸の情景や庶民の生活、空想など、北斎が描いた世界へ没入する。
生誕260年記念企画 特別展「北斎づくし」
開催期間|2021年7月22日(木)~9月17日(金)
会場|東京ミッドタウン・ホール 東京ミッドタウンB1
住所|東京都港区赤坂9丁目7-2
休館日|8月10日(火)、8月24日(火)、9月7日(火)
お問い合わせ|050-5542-8600(ハローダイヤル 受付時間:9:00〜20:00)
https://hokusai2021.jp/
※会期・休館日等は変更となる場合がございます。ご了承ください。
≫「巨大映像で迫る五大絵師」新感覚デジタルアート展で日本美術の歴史的傑作を堪能!