茶筒職人・開化堂/八木隆裕氏が世界に発信したいこととは?
日本には世界に誇る「もの」をつくる職人たちがいる。道を究めた職人の仕事や生き方を知ると、背筋が伸びる。
素晴らしい「もの」をつくる技術だけでなく想いの継承あっての職人技。
昨今話題のAIにはできない100年以上後まで残る仕事だ。
そんな職人という仕事をいまだからこそ知りたい。
世界で活躍するサムライの1人、茶筒の革命児・八木隆裕氏にお話を伺った。
ものづくりの背景を世界に伝える
デリケートな茶葉は、外気の変化が味に大きく影響する。
日本特有の高温多湿な気候の中でも、美味しいお茶が飲めるようにと伝統的に使用されてきたのが、密閉性の高い金属製茶筒だ。創業1875年の京都の開化堂は、現存する茶筒メーカーの中で最も古い歴史をもつ工房といわれるが、いまこの老舗がはじめた新たな動きに、国内外から注目が集まっている。
そのきっかけをつくったのが6代目を継ぐ八木隆裕だ。
家業を継ぐ前に、京都ハンディクラフトセンターで海外観光客向けに日本の工芸品を販売していた彼は、ある出来事をきっかけに海外展開の可能性を思いついた。
「京都ハンディクラフトセンターにいるとき、海外の方が自宅で使うために茶筒を買われたのを見て、海外でも売れるのではないか、と感じました。その後、ロンドンから連絡があり、茶筒を海外に販売しに行きました」
伝統的な茶筒づくりの製法はそのままに、お茶用のほかにコーヒー用、パスタ用など、工芸的なものづくりの特長を生かしつつ、現代のライフスタイルにマッチした製品を次々に発表していった。
もともと英語が得意で、大学では英語を専攻。前職でも外国人相手に仕事をしてきたので、コミュニケーション力には自信がある。
職人たちの存在、ものづくりへの姿勢を伝えていきたい
「伝えるべきは、僕たち職人の本質的な魅力は、仕上げの美しさや腕の確かさだけじゃないとも思っています。
コンピュータで新しいかたちがどんどんつくり出せるようになり、最先端の機械が完璧な成形を行う時代だからこそ、職人たち一人ひとりが真摯にものづくりに取り組む姿勢やそれに基づく精神性にこそ美徳があることを明確に発信していきたい」
ニューヨークやパリなど、海外の展示会にも積極的に参加。八木自ら実演販売を行えば多くの人が興味を示し、声をかけてきた。
「製品だけでなく、それをつくる職人の存在を同時に伝えることで、さらなる共感が生まれると身をもって知ることができました」
さまざまな領域に活躍の場を広げる八木氏だが、原点であり本質は先代から受け継ぐ茶筒づくり。職人の技と魂をいまに伝えている。
開化堂
住所:京都府京都市下京区河原町六条東入
Tel:075-351-5788 www.kaikado.jp
(text:Discover Japan photo:Kazuma Takigawa)