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第二弾はタイ米×日本米
おむすびで世界をむすぶUnited Rice Ball

2021.1.8
第二弾はタイ米×日本米<br>おむすびで世界をむすぶUnited Rice Ball

日本の米と、世界のどこかで食べられている米を混ぜておむすびをつくったらどんな味になるのか? そして、そのおむすびを食べた人たちはどんな思いを抱くのか? そんな実験的食文化イベントとして2019年に生まれた「United Rice Ball」は、2つの国の米でつくるミックスおむすびで米を「unite(結ぶ)」するだけでなく、人と人をもuniteするというコンセプトのプロジェクトだ。

発起人:倉成英俊(くりなり・ひでとし)
1975年佐賀県生まれ。「Creative Project Base」代表。小1の時の将来の夢は発明家。2000年に電通に入社。クリエーティブ局で多数の広告を企画制作しながらプロダクトを自主制作して多数発表。2007年にスペイン・バルセロナのブロダクトデザイナーMarti Guxieの事務所で働き、日本人初のex-designerに認定された。帰国後はさまざまなジャンルのプロジェクトをリードした他、2014年からは個人活動(B面)を持つ電通社員たちと「電通Bチーム」を組織してオルタナティブな方法やプロジェクトを社会に提供。2015年には答えのないクリエーティブな教育プログラムを提供する「電通アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所」をスタート。2020年7月に起業して現職。

文:柏木智帆(かしわぎ・ちほ)
お米ライター。元神奈川新聞記者。お米とお米文化の普及拡大を目指して取材するなか、お米農家になるために8年勤めた新聞社を退職。2年にわたってお米をつくりながらケータリングおむすび屋を運営した。2014年秋からは田んぼを離れてフリーランスライターに。お米の魅力や可能性を追究し続ける、人呼んで「米ヘンタイ」。

シントン大使夫人がつくったタイ米と日本米のアレンジおむすび。タイらしいベジタブルカービング添え

初年の第1弾は「スペイン米×日本米」をテーマに都内でイベントを開催。第2弾の2020年は「タイ米×日本米」をテーマに開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、在日タイ大使公邸を配信会場としたオンラインイベントに。タイと日本の国交樹立133回目の記念日にあたる9月26日、参加者たちは事前に届いたキットでミックスおむすびを作りオンラインで集合。シントン・ラーピセートパン駐日大使夫妻も出席し、総勢200人以上が一斉におむすびにかぶりついた。

申し込んだ参加者にはタイ米と日本米合計2合がこの専用米袋で送られてくる。今回は調理に必要なハーブとレシピが同封された
金子さんと完成のおむすびの写真。今回はおうちで参加者につくってもらうために動画も用意された。つむぎや金子さんの手順に従うと、このタイ米x日本米mix塩むすびが完成する
zoom配信本拠地は東京都目黒区にあるタイ大使公邸。ヒゲタ醤油・濱口家の邸宅を1943年にタイが購入した
オンラインイベントはラストエンペラー溥儀の弟・溥傑と公家華族・嵯峨浩とのお見合いも行われたというダイニングから配信された。
鮮やかなピンク色のタイシルクの衣装で出席したシントン・ラーピセートパン大使。隣は大使夫人

日本の米は短粒種で、タイの米は長粒種。日本では粘りのある米を白飯で食べる一方、タイではぱらぱらの米をスパイスや味付けの強い料理で食べる。まったく性格が違う両者をむすんで新たな味を生み出すにはどんな米が合うのか、いろいろな品種を試した。

日本米については、やわらかい品種や粘りが強い品種はタイ米と混ざりづらい。そこで選んだのは、福島県の「里山のつぶ」。適度な粘りでタイ米と混ざりやすく、粒張りが良く歯ごたえがしっかりとしているのでタイ米の粒感に埋もれない。存在感はあるが主張しすぎない絶妙さだ。

一方のタイ米は最高級香り米「カオホンマリ(ジャスミンライス)」を選んだ。最大の決め手は、粘りとやわらかさ。稲に詳しい農学者の佐藤洋一郎さんによると、タイ米の中では比較的アミロース含量が低いためだという。もちろん日本米に比べたら断然ぱらぱらだが、タイ米の中では日本米に近い食味といえる。タイでは最も人気が高い。

お米ライター・柏木がタイ米について現地取材をもとに紹介したほか、今回のミックスおむすびに選んだ米について説明した

メンバーのつむぎやは、炊飯した日本米と、ハーブ(レモングラス、コブミカンの葉)を入れて茹でたタイ米とを混ぜる塩むすびのレシピを考案。米の比率、タイ米とハーブの香りのバランス、加熱時間など、試作をくり返した。完成した塩むすびは、タイ米の奥にハーブがちらつく絶妙な香りと風味で、両者の米の粒感がふわりと感じられる仕上がりに。冷めると口の中で広がる香りに安定感が生まれ、また違ったおいしさが楽しめた。

zoomを使ったオンラインイベントでは、各参加者が自作のミックスおむすびを画面の前で披露。おむすびに合わせて、タイの料理やビールを用意した人もいれば、和食を用意した人もいた。シントン大使夫人はミックスおむすびの具にタイのグリーンカレーや田麩などを入れるアレンジレシピを紹介。“和タイ折衷”の多様な楽しみ方に、おむすびの懐の深さを改めて感じた。

参加者たちに笑顔で手を振るシントン大使夫妻。気さくな夫妻の人柄によってタイファンが増えたのは間違いない
参加者写真。全国そしてタイから総計200名以上がzoomで参加。写真はおむすびをみんなで見せ合うシーン。付け合わせや器、飲み物が様々なところが、リモートならでは

冒頭で挨拶したシントン大使は、国交樹立以前から日本とタイはお米を媒介して結ばれていたという歴史を紹介した。「アユタヤから琉球王国(現在の沖縄)にタイ米が入ってきて、タイ米を原料に泡盛が造られていた。泡盛は日本とタイ長い交流を示した代表的なものです」。そう言って泡盛スパークリングを手に「チャイヨー、チャイヨー、チャイヨー」とタイ語で乾杯の音頭をとり、参加者たちはそれぞれ大きさも形も多様なミックスおむすびで“乾杯”した。

「日本とタイの長い交流を示した代表的なもの」としてシントン大使が乾杯の飲み物に選んだのはタイ米を使った泡盛スパークリング
パリやNYで参加者とおむすびを食べて句を詠む国際交流イベントを主宰する俳人・大高翔さんがミックスおむすびを詠んだ句を披露

ミックスおむすびは「絶妙なマリアージュ」と好評。まったく性格が違う米と米が調和でき、さらにはタイ米の中では日本米に近いと言えるカオホンマリがタイ人に好まれていることに親近感を覚えた。近年では日本米の栽培がタイで広がっているほか、タイ東北部ではかつて糯米が常食されていた文化があることから、前述の佐藤さんは「タイ人たちは日本米に親和性がある」と言う。「相手を知ること」「相手を思ってひと手間を加えること」は、米と米だけでなく、人と人をむすぶ上でも大切なのだとおむすびは語っている。「おむすびで世界をむすぶ」という目標がいよいよ現実味を帯びてきた。

メンバー
発起人:倉成英俊(クリエーティブ・プロジェクト・ディレクター)
レシピ開発・調理担当:金子健一・マツーラユタカ(フードユニット「つむぎや」)
デザイン担当:古谷萌(アートディレクター)
web担当:上江洲佑布子(webデザイナー)
音楽担当:MOODMAN(DJ)
米キュレーション担当:柏木智帆(お米ライター)

text:Chiho Kashiwagi photo:Yuko Uesu


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