東京国立博物館の研究員・西木政統さんに教わる「実際曼荼羅」の使い方
おさえておきたい曼荼羅の基本
曼荼羅を見たことはあっても、描かれているものにどんな意味があるのか、何に使うものなのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。そんな素朴な疑問を解決していく《おさえておきたい曼荼羅の基本》。第3回は東京国立博物館の研究員・西木政統さんに、法具としての曼荼羅の使い方を教えていただきました。
真言密教のヒミツの儀式・後七日御修法(ごしちにちみしほ)で体感
目に見えない密教の世界を“見える化”した曼荼羅は、密教の世界観を表すものであると同時に、法具でもある。真言密教最大の秘儀で、その使い方を体感しよう。
秘儀中の秘儀が行われる
後七日御修法の道場を再現
真言密教では、仏の身体(身)、言葉(口)、心(意)の働きを表す「三密」と一体化することで悟りの境地に達すると考える。そのために仏像などを安置し、供物を供える壇を設け、手に印を結び(身密)、口で真言を唱え(口密)、心に仏を思う(意密)修行を修法という。
「密教は修法を重んじますが、秘儀として一般には見られないものがたくさんあります。中でも真言密教で最も重要とされるのが後七日御修法です」。(西木政統さん)
後七日御修法は、毎年正月8日から7日間にわたって行われる修法で、835(承和2)年の正月に、弘法大師空海によってはじめて行われた。江戸時代までは、宮中の真言院で行われていたが、現在は東寺の灌頂院で行われている。後七日御修法の道場では、仏舎利を本尊とし、東側に胎蔵界曼荼羅、西側に金剛界曼荼羅、四方に五大尊(五大明王)像、十二天(毘沙門天、帝釈天など)像を掛ける。両界曼荼羅の前の大壇をはじめ、息災護摩壇、増益護摩壇などが設けられ、そこでさまざまな修法が行われる。
「曼荼羅は、真言密教の世界観を表すものであると同時に法具でもあります。今回の特別展(※)では、会場内に後七日御修法の道場を再現。曼荼羅をはじめとする法具が儀式で実際にどのように使われているのかを体感していただくことで、真言密教の奥深い世界を感じていただけると思います」。(西木さん)
※2019年に東京国立博物館で開催された特別展「国宝 東寺−空海と仏像曼荼羅」
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text: Miyu Narita
参考文献:『イラストでわかる 密教 印のすべて』(藤巻一保著・PHP研究所)、『空海辞典』(金岡秀友編・東京堂出版)、『KOYASAN Insight Guide 高野山を知る一〇八のキーワード』(高野山インサイトガイド制作委員会・講談社)、『国宝・重要文化財大全 4 彫刻(下巻)』(文化庁監修・毎日新聞社)、『仏像図典』(佐和隆研編・吉川弘文館)、『マンダラの仏たち』(頼富本宏著・東京美術)
2019年5月号 特集「はじめての空海と曼荼羅」
《おさえておきたい曼荼羅の基本》
1|大日如来の慈悲を表現した「胎蔵界」
2|大日如来の智慧を表現した「金剛界」
3|東京国立博物館の研究員・西木政統さんに教わる「実際曼荼羅」の使い方
4|曼荼羅がより面白くなるキーワード