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曼荼羅がより面白くなるキーワード
おさえておきたい曼荼羅の基本

2020.9.22
曼荼羅がより面白くなるキーワード<br><small>おさえておきたい曼荼羅の基本</small>

曼荼羅を見たことはあっても、描かれているものにどんな意味があるのか、何に使うものなのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。そんな素朴な疑問を解決していく《おさえておきたい曼荼羅の基本》。第4回は知ることで曼荼羅がより面白くなる豆知識をキーワードで紹介します。

敷曼荼羅

両界曼荼羅図 (敷曼荼羅)

インドの王室の儀式をルーツにもつ灌頂は、師匠が弟子の頭に水を注いで、位を継承する密教の儀式。儀式中、壇上に敷く曼荼羅を敷曼荼羅という。一方、一般的な曼荼羅は掛曼荼羅という。曼荼羅では、曼荼羅を構成する仏や菩薩などは皆正面を向いているが、敷曼荼羅では中央を向いているのが特徴。

一般の信者が仏縁を結べるようにと行われる結縁灌頂では、覆面をした信者が敷曼荼羅の上に花を投げ、花の当たった尊格と縁を結ぶ。

敷曼荼羅は、三昧耶曼荼羅や種子曼荼羅であることが多く、尊形で表す大曼荼羅である東寺の『両界曼荼羅図』(敷曼荼羅)は極めて珍しいとされる。

四種曼荼羅

真言密教では、曼荼羅の図柄や形態によって、大曼荼羅、三昧耶曼荼羅、法曼荼羅、羯磨曼荼羅という4種類に分けている。

大曼荼羅は仏像に表される仏や菩薩などの姿を描いた絵画的なもの、三昧耶曼荼羅は仏や菩薩などを象徴する持物や印で表したもの、法曼荼羅は、一文字で仏や菩薩などそのものを表す梵字、種子で表したもの、羯磨曼荼羅は仏や菩薩などの彫像によって立体的に表したもので、東寺講堂に代表される立体曼荼羅を意味する。

ちなみに、浄土の姿を描く浄土変相図を浄土曼荼羅と呼ぶように、密教以外の宗派でも、教えを象徴的に表すものを曼荼羅と称することがある。

護摩

護摩は、密教ならではの修行法で、さまざまな修法で用いられる。

護摩には、護摩壇で火を焚いて、人間の煩悩を表わしているという、護摩木や供物などを炎に投じて祈りを捧げる外護摩と、自分の中にある煩悩を瞑想による智慧の火(智火)で焼き払う内護摩という2種類がある。外護摩では、護摩壇にさまざまな法具を並べる。後七日御修法をはじめ、両界曼荼羅の前に護摩壇を設けることも多い。

護摩の手法は、その目的によって、調伏法、息災法、増益法、敬愛法の4つに大きく分けられ、炉のかたちや護摩木の種類、供物など、それぞれの手法で細かな部分まで決まりごとが異なる。

三昧耶形

蘇悉地儀軌契印図(部分)

三昧耶形は、仏や菩薩などの誓願(本来の誓いや願い)を象徴する印や持物のこと。三昧耶と略することもある。諸尊ごとにパターンがあるため、それぞれの尊像が誰を表したものなのかを知る手掛かりにもなる。

印にはさまざまな種類があるが、両掌を合わせる合掌印、悟りに入っていることを表す定印、拳をつくるかたちの拳印の3つに大きく分けられる。真言密教では、十二合掌と六種拳を基本とする。東寺の『蘇悉地儀軌契印図』には、密教の三部秘経のひとつである『蘇悉地経』を修する際の印90種と法具1種が描かれている。

持物では、薬師如来の薬壺、観音菩薩の蓮華、不動明王の剣などが有名。

text: Miyu Narita
参考文献:『イラストでわかる 密教 印のすべて』(藤巻一保著・PHP研究所)、『空海辞典』(金岡秀友編・東京堂出版)、『KOYASAN Insight Guide 高野山を知る一〇八のキーワード』(高野山インサイトガイド制作委員会・講談社)、『国宝・重要文化財大全 4 彫刻(下巻)』(文化庁監修・毎日新聞社)、『仏像図典』(佐和隆研編・吉川弘文館)、『マンダラの仏たち』(頼富本宏著・東京美術)

2019年5月号 特集「はじめての空海と曼荼羅」


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《おさえておきたい曼荼羅の基本》
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3|東京国立博物館の研究員・西木政統さんに教わる「実際曼荼羅」の使い方
4|曼荼羅がより面白くなるキーワード

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