建築家・藤本壮介
｜未来の森と建築のビジョンを大公開！

2025年「大阪・関西万博」で会場デザインプロデューサーを務め、世界最大の木造建造物「大屋根リング」をつくり上げた藤本壮介さん。
現在、東京・六本木ヒルズの森美術館では、藤本建築を俯瞰し、これからの都市と建築の在り方を模索する展覧会、『藤本壮介の建築｜原初・未来・森』を2025年11月9日まで開催している。その会場で、木や森と建築のこと、未来都市の森についてうかがった。

藤本壮介（ふじもと そうすけ）
1971年、北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。現在は東京、パリ、深圳に設計事務所を構え、個人住宅から巨大複合施設まで、世界各地でプロジェクトを展開。2031年には宮城・仙台にて、音楽ホールと東日本大震災のメモリアル拠点との複合施設の竣工を予定している。

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多様を受け入れ、土とつながる

六本木で開催中の展覧会『藤本壮介の建築｜原初・未来・森』では、未来の森と建築の姿を垣間見ることができる。

2031年に宮城に開業予定の「仙台市（仮称）国際センター駅北地区複合施設」は、仙台フィルハーモニー管弦楽団の本拠地であるとともに、市民に開放されるロビーや練習室を備える音楽ホール、加えて東日本大震災のメモリアル拠点という顔をもつ。

「震災の体験は人それぞれで、単純にまとめられるものではないんです。だから個々の思いをしっかり受け止められる場所にしたいと思いました。音楽にしてもそう。いろいろな思いがバラバラに存在するのではなく、どこかでひとつにつながる場面をつくりたいと思っています」

そして、藤本さんが思い描いたのは、いくつものプレートが多層に重なり、一体となるデザイン。構造は鉄骨と鉄筋コンクリートだが、ホールの天井は福島のナラなど被災地の木材を用いる。

また、外構デザインは、現状を持続させるサステイナブルから一歩先に進んだ、再活性を意味する「リジェネラティブ」の考えがベースにある。敷地は仙台城が築かれた青葉山山麓にあり、清らかな川が流れる。青葉山の土を覆わず、デッキを地面から浮かすことで周囲の森や生態系の成長を促す。そういった環境を建築の力で再活性させるのは、世界的なムーブメントだと藤本さんは言う。

仙台市（仮称）国際センター駅北地区複合施設（2031年）
住所｜宮城県仙台市青葉区
設計｜藤本壮介建築設計事務所
敷地面積｜1万8700 ㎡
建築面積｜1万500 ㎡
延床面積｜3万2000 ㎡
構造｜鉄骨造、鉄筋コンクリート造
用途｜複合施設（劇場、展示場、事務所）※データはプロポーザル時のもの

空を移動できる未来都市では、
森と居住空間が近くなる!?

展覧会の最終セクションでは、藤本さんが描く未来の都市の姿が、模型と映像で出現する。何年か後の未来において、私たちは自由に空を移動できる装置を手に入れている、というのが前提だ。

未来都市は、大小さまざまな球の構造体が、3次元で複雑に組み合わさっている。都市に絶対的な中心はなく、球体同士がつながり合いながら、森の生態系のように「多様」が集まって一体感を抱く場が形成される。

「いまの都市は、いわば巨大なアスファルトで地球を覆っている状態です。これはもったいないですよね。未来都市では球体の空間が上下左右に連なることから、家という生活空間のすぐ隣に自然や文化施設があり、ダイレクトに接続できます」

この未来都市は、都市と建築が溶け合い、多様が共存する「森的なる場所」そのものではないだろうか。そこには、人間や地球にとっての「原初の森」を失ってはならないというメッセージが込められている。

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藤本壮介の建築｜原初・未来・森
会期｜～11月9日（日）
会場｜森美術館
Tel｜050-5541-8600（ハローダイヤル）
住所｜東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
開館時間｜10:00～22:00（最終入館21:30）、火曜・8月27日は～17:00（最終入館16:30）　※9月23日は～22:00
休館日｜期間中はなし
料金｜2300円（オンライン割引あり）　※土・日曜、祝日は2500円
www.mori.art.museum/jp/exhibitions/soufujimoto

 

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text: Yukie Masumoto　photo: Norihito Suzuki

2025年9月号「木と生きる2025」