《東海道》幕府による全国支配の
カギを握った“天下の大動脈”
|浮世絵からひも解く、五街道と地域文化
徳川家康が整備を進めた、江戸と地方を結ぶ五街道。江戸幕府が国を統治するための重要な街道であると同時に、さまざまな役割を担っていた。今回は歴史家の安藤優一郎さん監修のもと、五街道の一つ「東海道」の成り立ちや特徴をご紹介!
監修=安藤優一郎(あんどう ゆういちろう)
1965年、千葉県生まれ。歴史家。文学博士(早稲田大学)。江戸をテーマとする執筆や講演、セミナー講師のほか、TV番組の時代考証など幅広く活動。『15の街道からよむ日本史』 (日経ビジネス人文庫)をはじめ著書多数。
幕府が最も多く指示した
参勤交代ルートだった!?

山のふもとに小田原城、手前に酒匂川が描かれる『東海道五拾三次之内 小田原 酒匂川』。酒匂川は架橋や渡し船が禁止されており、歩いて渡る「徒渡り」しか方法がなかった
歌川広重『東海道五拾三次之内 小田原 酒匂川』/国立国会図書館デジタルコレクション
鎌倉と京都を結ぶ鎌倉街道を踏襲している東海道は、幕府が諸大名に対し「この道を使うように」と最も多く指示した参勤交代のルートである。53の宿場があり、道のりは海沿いが中心で温暖な気候。しかし大井川をはじめ架橋されていない大河川が多いため、川の手前で足止めを食らうと時間と費用が余計にかさむという川留めのリスクも高かった。加えて“天下の険”と呼ばれた箱根峠もあり、忌避されがちな街道であったという。
東海道
総距離|約495.5㎞
宿場町の数|53(57)
〈伝統工芸品〉
定番の土産品となった「有松絞り」

愛知県の有松町・鳴海町地域で生産される有松絞りの誕生は1608年。尾張藩は藩の特産品として保護し、後に国の伝統的工芸品に指定された。『東海道五拾三次之内 鳴海 名物有松絞』にも描かれている。
〈食文化〉
浮世絵に登場する店も残る「とろろ汁」

静岡県静岡市にあるとろろ汁の店「元祖 丁子屋」は1596年に創業。東海道の丸子宿に位置する茶屋として開業しており、松尾芭蕉や十返舎一九、歌川広重など、さまざまな作品に登場している。
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02|天下の大動脈「東海道」
03|大名や庶民から大人気「中山道」
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text: Nao Ohmori
2025年8月号「道をめぐる冒険。」































