あんこと食べるニッポンのパンケーキ 東京「どら焼き」5番勝負
ふわふわの生地に、大切に挟まれたあんこが愛しい「どら焼き」は、和菓子の中でもひときわモダン。洋菓子を思わせる卵を使った生地は、 “皮”というよりもはや“パンケーキ”です。今回は、東京の名店から5つのどら焼きを厳選。お茶だけでなく、コーヒーや紅茶のお供にもなるどら焼きの魅力をお届けします。5店5様の表情をお楽しみください。
まずは浅草名物、並んでも食べたい「御菓子司 亀十」のどら焼き
はじめて亀十のどら焼きを口にした人は、きっといままでの「どら焼き」の常識が覆されます。まるで極上のパンケーキを食べているかのような、ふわふわの食感の皮が特徴です。一般的などら焼きは、みりんや蜂蜜でコクとテリを出しますが、亀十の皮に使われるのは、卵、小麦粉、砂糖、水のみです。このいたってシンプルな材料を、丁寧に丁寧に混ぜ合わせて裏ごしすることで、空気をたっぷり含んだ他にはない食感を持った生地になります。しかも、この生地の配合は大正末期の創業時からほとんど変わらないというから、さらに驚きです。
マシュマロのような生地をすくって手際よく銅版に落としていくと、生地はすぐに倍ほどの高さにふんわり持ち上がります。15枚分の生地が並ぶと同時に1枚目から裏返していくので、両面が焼きあがるまでは、わずか1分程度。ほわほわ、しっとりの食感のためにも、焼きすぎは禁物です。
亀十のどらやきは個性的な皮ばかりが注目されがちですが、1度ならずまた食べたいと後を引く美味しさの核は、あんこにあります。
「たかがあんこ、されどあんこなんですよ。」そう語るのは、社長の島田俊六さん。素材の厳選はもちろんだが、あんこの決め手は「炊き方」にあるのだそうです。素材のよさを引き出すためには、その素材に合った炊き方をする必要があります。そんな試行錯誤を経て編み出されたのが、仕込みに4日を要する独自の方法でした。
まずは豆を水に浸してひと晩。その豆を軟らかく炊いてから水にさらし、グラニュー糖を溶かした蜜と煮からめた状態で、豆を1日寝かせます。この「蜜づけ」がポイントなのだそう。ひと晩かけて小豆に蜜を染み込ませることにより、蜜が粒をコーティングし、粒がきれいに残った艶やかなあんこができあがります。
蜜づけを省くと、豆のかたちがくずれるだけでなく、豆から水分が出て腰の抜けた(味のぼやけた)あんこになってしまうそうです。その後、最終的に練り上げてひと晩冷ましたものが、ようやく、ふわふわの皮に包まれます。
「手を抜くのであれば、やらないほうがいい。おかげ様でたくさんのお客様からお慕いいただいていますが、お客様が増えれば増えるほど、ご期待を裏切らないようにと身が引き締まる思いです。これまで1、2の努力をしていたとすると、いまは5、6、7の努力をしないとお客様に満足していただけないと考えています。あんこも、もっといい炊き方があるかもしれません。やればやるほど、知れば知るほど迷ってしまいますから、死ぬまで研究ですね」。
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どら焼き:1 個360円
サイズ:約φ110×25㎜
あんの種類:つぶあん、白あん
甘さ:控えめながら香ばしい
生地:しっとり&ふわふわ
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亀十
住所:東京都台東区雷門2-18-11
Tel:03-3841-2210
営業時間:10:00~20:30(どら焼きは売り切れ次第終了)
定休日:不定休(月1回程度)
香ばしさとコクが病みつきになる「清寿軒」のどら焼き
1861 年創業、老舗のどら焼きは江戸時代から町民に愛されてきました。一枚皮にあふれるほどたっぷりあんを挟んだ「小判どら焼き」は、焦がしキャラメルのように香り高く焼き上げられた皮と濃厚でコク深いあんが絶妙です。皮を2枚使った一般的などら焼き形の「大判」もあるが、あんこ好きの方には、バランス的に「小判」がおすすめです。
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小判どら焼き:1 個180円
サイズ:約95×70×H45㎜
重さ:約110g
あんの種類:つぶあん
甘さ:小豆の風味がしっかり
生地:はちみつ入生地が香ばしい
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清寿軒
住所:東京都中央区日本橋堀留町1-6-1
Tel:03-3661-0940
営業時間:9:00~17:00(どら焼きが売り切れ次第営業終了)
定休日:土・日曜、祝日
鮮度重視でできたてを頬張りたい「うさぎや」のどら焼き
1913(大正2 )年に創業し、どら焼きといえば真っ先にその名が挙がる名物店です。常に焼きたてを提供できるように、1日に何度も焼かれるため、お店で手に取るどら焼きはほっこり温かく、甘い香りが漂います。数種類のブレンド生地を焼いた特製の皮は、気泡が縦に均一に入っており、噛んだ瞬間にサックリと切れます。ほどよい弾力としっとり感が絶妙で、十勝産の大粒小豆を使用した、とろ~りあんとも相性抜群です。
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どら焼き:1 個205円
サイズ:約φ105×H40㎜
重さ:約95~100g
あんの種類:つぶあん
甘さ:甘めでとろ~り
生地:きめ細やかでふっくら
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うさぎや
住所:東京都台東区上野1-10-10
Tel:03-3831-6195
営業時間:9:00~18:00
定休日:水曜日(16時以降に来店する場合、どら焼き要予約)
これ以上はないバランス「すずめや」のどら焼き
池袋の路地裏にひっそり佇む「すずめや」。砂糖をカラメル化させて炊くあんこには、小豆の1.5倍の砂糖を使うそうですが、それを感じさせないほどキレもよい後味です。「固まりきらずにひっくり返せるぎりぎりのタイミングで返す」という皮は、しっとりなめらかな口どけ。姿かたちはまったく王道のどらやきですが、皮とあんのバランスは究極の域です。
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どら焼き:1 個190円
サイズ:約φ90×H40㎜
重さ:約95g
あんの種類:つぶあん
甘さ:旨みを感じるキレのよい甘さ
生地:きめ細やかしっとりシルキー
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すずめや
住所:東京都豊島区南池袋2-18-5
Tel:03-5391-0196
営業時間:10:00~売り切れ次第
定休日:日曜、祝日
黒糖の香りとコクが広がる「草月」のどら焼き
1958(昭和33) 年に誕生した、草月の代名詞的どら焼き「黒松」。第15 回全国菓子大博覧会で金賞を受賞し、いまでは東京土産の代表にもなっています。黒糖とハチミツを使った皮が、黒松の幹に似ていることから命名されました。口に入れると黒糖の風味が広がり、甘すぎず自然でまろやか。この味わい深い皮を引き立てるように、相棒の小豆あんは甘さ控えめであっさりしています。小振りなサイズ感で、皮とあんこの比率も絶妙です。
————おいしいd a t a————
どら焼き:1 個108円
あんの種類:小倉あん
甘さ:控えめでふっくら
生地:ふんわり&軽い食感
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草月
住所:東京都北区東十条2-15-16
Tel:03-3914-7530
営業時間:9:00~19:00
定休日:火曜(繁忙期変動あり)
今回紹介した各店の営業は、売り切れ次第終了のところも多いので、買いに行くなら午前中の早めがおすすめです。お気に入りの「どら焼き」を探しに出かけてみてはいかがでしょうか。
(text: Akiko Yamamoto, photo: Yuji Imai)