愛知県瀬戸市 米泰の「おこしもの」
《菓子研究家・福田里香の民芸お菓子巡礼》

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は愛知県瀬戸市にある和菓子店・米泰 の「おこしもの」をご紹介。
福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。13年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中。

日本民藝協会の機関誌『民藝』のバックナンバーをつらつらと読んでいると、お菓子の型を紹介しているページを見掛けます。国内外の信仰や祭事にまつわる素朴な金属製や陶製の菓子型から、老舗菓子舗の洗練された美しい木型まで多岐にわたり、特に柳宗理の館長時代には「日本民藝館」で和菓子の菓子型展を2回も開催。そう、菓子型は優れた民藝品なのです。
愛知県には桃の節句のお雛さまに供えられる「おこしもの」または地域によって「おこしもん」、「おこしもち」と呼ばれる餅菓子があります。おこしものの木型は桃などの花型に加え、鯛や鴛鴦、蝶、宝船など多彩。米粉をこれらの木型で抜いて赤、黄、緑の食紅で着彩して、蒸し上げます。

お雛さまにお供えした後は、焼いて砂糖醤油などをつけていただきます。米屋も営む「米泰」のおこしものは滋味深い味わい。昔ながらの製法でつくるため、1日100袋の限定販売だそう。型の種類は松、鞠、鶏、花。手作業のかわいらしさを愛でつつ召し上がっていただけます。これはもう食べる民藝品です。
line
米泰
住所|愛知県瀬戸市上水野町141
Tel|0561-48-1767
営業時間|10:00~17:00
定休日|土、日曜・祝日
https://www.komehiro.jp/
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2025年3月号「ニッポンのまちづくり最前線」