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展示だけじゃもったいない!研究員に聞く、ミュージアム建築の楽しみ方。
日本ミュージアム建築大全

2019.10.2
<b>展示だけじゃもったいない!研究員に聞く、ミュージアム建築の楽しみ方。</b><br>日本ミュージアム建築大全
群馬県立近代美術館
磯崎 新/設計
磯崎が二度目の日本建築学会賞を受けた作品。ルイス・カーンの影響を受け、プラトン立体で構成された特徴的な意匠

美術館を訪れて、展示だけを見て帰ってしまう人も多いのでは? それではもったいない! 美術館の“建築”を鑑賞のターゲットにすれば、より充実した美術館めぐりができること請け合いだ。江戸東京博物館研究員の米山さんにミュージアム建築の楽しみ方を聞いた《日本ミュージアム建築大全》前編。

講師:江戸東京博物館研究員
米山 勇さん
1965年、東京都生まれ。早稲田大学大学院修了。博士(工学)。専門は日本近現代建築史、江戸東京の建築・都市史。 著書に『時代の地図で巡る東京建築マップ』、『米山勇の名住宅鑑賞術』、『けんちく体操』、『日本近代建築大全』など

日常生活で意識することは少ないかもしれないが、実は、日本は世界屈指の美術館のメッカなのだ。「東京国立博物館」、「東京国立近代美術館」などの国立の博物館や美術館、「根津美術館」や「大原美術館」などの著名な私立美術館はもちろんだが、地方自治体が設立した美術館から、個人が開設した小さな美術館やギャラリーを含めると、ゆうに1000件は超えるといわれる。

江戸東京博物館
菊竹清訓/設計
バブル期の東京で計画された大規模な博物館。菊竹が高度成長期から実践している“メタボリズム建築”の流れをくむ

さて、美術館を訪れる目的といえば、企画展がメインになるケースが一般的だ。ところが、近年は美術館のハコ、すなわち建築そのものが鑑賞の対象になる例が少なくない。安藤忠雄や黒川紀章、谷口吉生など、建築界の巨匠が設計した美術館は、その建築空間を味わうために足を運ぶだけの価値がある。

美術館をこれほど多くの建築家が手掛け、しかも、傑作揃いなのはなぜだろう。建築史家の米山勇さんはこう解説する。

三菱一号館美術館
ジョサイア・コンドル/設計(復元)
コンドルが設計し、一度は取り壊された丸の内初のオフィスビル「三菱一号館」を忠実に復元し、美術館として開館

「建築家にとって、美術館は非常にやりがいがあるテーマです。美術館の立地は広大な公園内など、環境がよい場所が選ばれることが多い。地方に優れた美術館建築が多いのはそのためです。また、空に向かって伸びる高層ビルよりも、横に広がっていく低層の建築というのも、建築家にとって魅力的。都市部では、低層の建築を手掛けるチャンスはなかなかありませんから」。

とはいえ、美術品から陶磁器、考古資料まで、さまざまなものを収蔵・展示するのが美術館だ。地域のシンボルになるべく、そのデザインにも期待や関心が集まることが多い。設計上の制約や、プレッシャーも大きいのではないだろうか。

ホキ美術館
山梨知彦(日建設計)/設計
コンピューターを使った設計を行う山梨知彦の代表作。展示室が突き出た構造は神社の鳥居から着想を得たという

「“前向きな制約”は建築家にとって魅力でもあります。与えられた条件をクリアしながらデザインを進めていくほうが、優れた建築が生まれやすい場合もある。たとえば、『東京都美術館』は上野公園の中にあるため、高さを抑え、景観に配慮することが求められました。前川國男はこの条件を生かし、低層で、周辺の環境と調和した名建築を生み出しています」。

建築家がどのような意図でデザインを決め、なぜこの素材を選んだのか。美術館が立つ環境を見渡しながら読み解くのもおもしろい。建築的な観点をもてば、美術館がより深く楽しめるようになるはずだ。

文=山内貴範
2018年11月号 特集「ミュージアムに行こう!」

《日本ミュージアム建築大全》
前編|展示だけじゃもったいない!研究員に聞く、ミュージアム建築の楽しみ方。
後編|時代の巨匠が手掛けたミュージアム建築クロニクル

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