ART

「未来を創造するトリガーをつくり続けたい」
色で未来をつくるクリエイティブユニット「SPREAD」

2019.9.18
<b>「未来を創造するトリガーをつくり続けたい」</b><br>色で未来をつくるクリエイティブユニット「SPREAD」

色を支配するクリエイティブユニット「SPREAD」に代表作「Life Stripe」の全経緯をたずねた全3回の特集。最終回は「SPREAD」の2人にクリエイターとしての今後の展望を聞いた。

HARU stuck-on design;
世界各地で披露された、「色を貼る」という空間装飾テープブランドのクリエイティブディレクション。ミラノ/2017
photo: Ooki Jingu

これがLife Stripeの起源。かつてないデザインの発見に気づいた二人は、すぐさま100人にアンケート調査を行い、行動パターンの選別と色分けをはじめた。やがて項目は21種に絞られ、各行動に沿った色も決まった。配色について山田さんはこんな説明をした。

「たとえば仕事や勉強は暗い色になりがちですが、社会復帰した知人にすれば、仕事ができるのはよいイメージなんです。だからエネルギーを感じる赤にしました」。

HARU stuck-on design;
世界各地で披露された、「色を貼る」という空間装飾テープブランドのクリエイティブディレクション。INTERSECT BY LEXUS – TOKYO/2019
photo: Ooki Jingu

さらに彼らは動物・昆虫の行動にも興味をもち、動物園や研究機関のドアもたたく。やがて一定量に達したLife Stripeは、知り合いを通じて2004年にウェブ上で初披露。この年、正式にSPREADを立ち上げた。それを機に仕事は増えていったが、当時の彼らは積極的にLife Stripeを見せる意志はなかったという。

だが、色で人間の行動にアクセスする方法は誰にとっても斬新な発見だったようで、時を経て世に出ていくことになる。最初は’06年に横浜ベイクォーターの駐車場を利用したアートプロジェクト。そして’11年の震災後に東京のギャラリーで開催された「SPREAD:Life Stripe」につながっていく。そうしたオファーにいくらか迷いがあったと山田さんは話してくれた。

NACT 10TH ANNIVERSARY
国立新美術館の開館10周年を記念した各アイテムとビジュアルデザインを担当。「未来の10色」を選別した

「震災直後は二人で復興活動に参加していましたが、展示のお話をいただき、被害に遭われた方々の一日も記録したい、でも不謹慎じゃないかとしばらく葛藤していたんです。ある日それを地元の方に相談したら、皆さんとても喜んでくださって、色紙で一日と対話するワークショップができました。引きこもりの知人のときは、これが人を救える“何か”になると発見し、震災後の展示からは“過去は未来をつくる”ことに自信をもてるようになりました」。

その後Life Stripeは、ミラノサローネ出展のチャンスをつくり、海外での展示やワークショップの開催を実現していく。そしてまたLife Stripeによって色の解像度が高まったという二人のもとには、カラーを自在にコントロールできるデザイナーとして幾多の依頼が寄せられるようになった。それでもSPREADは、直接的な収益に結び付かずともLife Stripeの活動を止めないと小林さんが断言した。

Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2019
ミッドタウン・ガーデンで「色景に浸る」をコンセプトにした約80mもの色鮮かな巨大インスタレーション「六本木カラー渓谷」を手掛ける。会期は10月18日~11月4日まで

「これ自体は仕組みをつくっただけで、僕らの思いを表現するものではありません。では何を見せたいかといえば、どれひとつよくない色はなく、有名であれ無名であれ一人ひとりが生きた事実はどれも美しいということ。それが社会全体で考えるテーマになるなら、僕らは未来を創造するトリガーになり得るものをつくり続けていくべきです」。

「広げる」という意味をもつSPREADの、彼らクリエイターの業とはそういうものなのだろう。

文=田村十七男 写真=六本木泰彦
2019年9月号 特集「夢のニッポンのりもの旅」

《色で未来をつくるクリエイティブユニット「SPREAD」》
1|生まれも育ちも違う2人が直面したクリエイターの業
2|人が生きた事実を色に変換。「人を救いたい」からすべては始まった。
3|未来を創造するトリガーをつくり続けたい

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