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「SPREAD」人が生きた事実を色に変換。「人を救いたい」からすべては始まった。色で未来をつくるクリエイティブユニット

2019.9.18
「SPREAD」人が生きた事実を色に変換。「人を救いたい」からすべては始まった。色で未来をつくるクリエイティブユニット
Life Stripeエキシビション MILAN DESIGN WEEK 2014
photo: Takumi Ota

色を支配するクリエイティブユニット「SPREAD」に代表作「Life Stripe」の全経緯をたずねた全3回の特集の第2回。「Life Stripe」が生まれた背景にはある意外な理由があった。
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生まれたてのアミメキリンの一日。寛ぎの黄緑。食事のオレンジ。睡眠の紺を細かく繰り返している

長岡造形大学初の卒業生となり、小林さんは社会的メッセージを込めたビジュアルをつくる夢を抱えて広告代理店へ。山田さんは新卒入社の時期を逸しながらもランドスケープデザインの仕事を見つけ、ともに東京へ。やがてはじまった共同生活の中で、SPREADの原点となる作品を仕上げた。それが2000年の読売広告大賞で賞を取った『のりたま』のポスターだ。

「一般公募コンペは何度か応募していましたが、どれもダメで。そこでランドスケープデザインの彼女に相談したら、のりたまで枯山水をつくるというアイデアが生まれました。何よりのりたまは日本人の心なのだからと。彼女らしい発想だと感心しました」。

のりたま
就職後に東京で共同生活していた時期に、一般公募コンペの読売広告大賞のために制作された『のりたま』の新聞広告。後のSPREADの原点ともいえる作品

広告がなりわいの小林さんにとって『のりたま』の受賞は輝かしい経歴のひとつになった。しかしその後、上昇志向の小林さんが移った会社の労働環境は過酷を極め、自身もキャリアに悩んでいた山田さんが退社を促し、小林さんは晴れて無職に。

となれば二人で何でもやろうと、実際に焼鳥店の品書き制作も受けながら、新しい道に踏み出す覚悟を決めた。そんなどん底ともいえる20代後半の二人にさらなる試練が待ち受けていた。

Celvoke
ナチュラルコスメブランドのパッケージとビジュアルを担当。色が重要な化粧品の仕事でも、Life Stripeで培ったカラーに対する解像度の高さが生かされている
photo: Motoki Nihei

「私たちにとって大切な知人が引きこもりになってしまったんです。当時は情報が少なく、心理学者の友人に相談してはみたところ、まずは周囲が行動を観察するしかないとのことで……」。

そこで二人はまず、24時間の行動を記録するノートの交換を試した。当初はほぼ無反応だったが、時間が経つにつれ簡単な問いかけに言葉が返ってくるようになった。その経過を見守る中で、山田さんにアイデアが浮かんだ。

Life Stripeエキシビション KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭
photo: Ooki Jingu

「言葉を色に変換しようと思いました。そのほうが行動の変化に気づきやすくなり、色自体を眺めて考えることができるようになるから。もちろん自分が志したデザインの力を生かしたい気持ちもありました。

それが功を奏したのか、その人は2年かかったものの通院せず社会復帰を果たせた。それで確信したんです。事実という色を見せることで未来をつくれると」。
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文=田村十七男 写真=六本木泰彦
2019年9月号 特集「夢のニッポンのりもの旅」

《色で未来をつくるクリエイティブユニット「SPREAD」》
1|生まれも育ちも違う2人が直面したクリエイターの業
2|人が生きた事実を色に変換。「人を救いたい」からすべては始まった。
3|未来を創造するトリガーをつくり続けたい

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