和歌山・白浜町《くろしお想》
美酒、温泉、工芸……、土地の風土に出合う宿へ。
あなたは和歌山の魅力を、どれくらい知っていますか? 訪れるたびに、ホテルスタッフと会話をするたびに新しい発見に出合える、和歌山に浸るステイを紹介します。
和歌山に浸る滞在。
「ずっとここにいたい……」。そう唸らせられる美食や銘酒、源泉かけ流しの名湯。さらに空間、しつらえ、アメニティなどの一つひとつに感じられる、和歌山の新たな魅力。それらを堪能できる稀有な宿泊施設が、和歌山・白浜にある「くろしお想」だ。
エントランスから館内へ入ると、陽の光がたっぷり入る開放感のあるロビーが広がる。和歌山県内の土中に眠っていたという樹齢約100年の迫力ある杉の大木をインテリアに使用。県産のプロダクトが並ぶショップやライブラリースペースもあり、買い物や読書を楽しんでもいい。ロビーからテラスへ出て、白浜の町並みや海を望むのもいいだろう。
客室は、ガーデンビュースタンダードルームが8室と、コーナージュニアスイートルームが3室の計11室。地場産業工芸品やインテリア、紀州材を随所に取り入れた和モダンな空間だ。
コーナージュニアスイートルームには、信楽焼の浴槽の半露天風呂が完備されている。居間空間は木材で囲まれ、木の温かみと癒しを感じるメディテーションルームをイメージ。自分自身と向き合う時間をゆっくり過ごすことができる。
食事は、東京・南青山にあるミシュラン一つ星の日本料理店「てのしま」の林亮平シェフが監修。従来の旅館料理の形式にとらわれず、和歌山の郷土料理に現代的なアレンジを加えながら無駄を削ぎ落とした日本料理を提供している。また、食を通じて和歌山の自然や四季を感じてほしいと、夕・朝食ともに地元生産者から直接届く食材を多用。こだわりのうつわとともに味わうローカルガストロノミーは、五感を刺激し、心身を健やかにしてくれる。
和歌山らしさ、
いくつ見つけられる?
オリジナルの館内着や寝具が肌触りのよい素材であったり、客室に置かれた和歌山生まれのクラフトビールやオレンジジュース、菓子のパッケージのデザイン性も高い。アメニティがスキンケアブランド「OSAJI」で統一されていたり、大浴場には「リファ」のシャワーヘッドが採用されていたり。随所に配慮された優しさに、いつの間にか心身がゆるんでいく。
それらのどれもが洗練されているため、不思議に思う人がいるかもしれない。くろしお想は、数々のアパレルブランドで知られる「パルグループホールディングス」のグループ会社「フリーゲート白浜」が運営。くろしお想は、2023年1月まで同グループが料理旅館として営業していた建物をリブランディングしたところだ。
くろしお想のスタッフの一部は、かつてアパレルを担当していたこともあり、美的感覚の高さがうかがえる。若いスタッフも多く活気のある雰囲気だ。同社の代表取締役社長を務める井上真央さんは、こう話す。
「くろしお想は、私たちの伝えたい想い、地元の生産者や作家、本プロジェクトをともにつくり上げてくださった方々の想い、そして自然の美しさを詠う『徒然草』の第137段からインスピレーションを得て生まれました」
心が瞬く、地産ペアリング
井上さんは、学生時代を過ごしたスイスの学校の授業で『徒然草』を読んだことが心に残っていた。「この世界観を日本の宿として表現したい」と考えたという。そうして「authenticという本物の美しさを味わい、inspirationが沸き、mindfulな旅」を提案する宿が生まれたのだ。自分らしい旅をデザインしたい人に、すすめたい。
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くろしお想
住所|和歌山県西牟婁郡白浜町1155
Tel|0739-42-3555
客室数|11室
料金|1泊2食付3万6300円~(税・サ込、入湯税別)
カード|AMEX、DINERS、JCB、Master、UC、VISAなど
IN|15:00
OUT|11:00
夕食|和食(レストラン)
朝食|和食(レストラン)
アクセス|車/阪和自動車道南紀田辺ICから約25分、電車/JR白浜駅からタクシーで約10分、飛行機/南紀白浜空港からタクシーで約10分
施設|レストラン「緑月」、貸し切り半露天風呂、大浴場、ショップなど
text: Yoshino Kokubo photo: Azusa Todoroki
Discover Japan 2024年1月号「ニッポンの酒 最前線 2024」