建築家・坂茂が手掛けた自然を取り込む宿
《Simose Art Garden Villa》|後編
建築×自然でめぐる神宿る島・宮島
広島にある日本三景のひとつ「安芸の宮島」。G7広島サミットの際、各国首脳が訪れたことであらためて注目されたここは、古来「神を斎き奉る島」として、篤く信仰されてきた聖地である。
2023年4月、宮島の対岸に美術館・レストラン・ヴィラが融合したアート・オーベルジュが開業。坂 茂さん設計の空間で、感性を刺激する滞在がかなう。
ヴィラの宿泊者は、夕・朝食を海に面したフレンチレストランで味わえる。メニューは、東京・白金台の「OZAWA」を率いたフレンチの巨匠・小沢貴彦さんが監修し、「OZAWA」広島店を経て久重浩さんがシェフに就任。シェフ自ら生産者を訪ね選び抜き、主に広島とその近郊で採れる有機野菜や魚介類・肉類を使用。大野産のアサリやムール貝から取ったジュースでソースをつくる。そして美しく繊細なうつわを彩るのは、敷地内で育つハーブ。「料理に合わせフェンネル、タイム、セルフィーユなどのハーブを添えています。召し上がるときにパッと広がる香りも楽しんでいただけたら」と久重さん。動物性脂肪をあまり使わない軽やかな味も特色で「お腹いっぱい味わってもまったくもたれない」と評判だ。
滞在期間中、宿泊者であれば何度でも鑑賞できる「下瀬美術館」は現在、約500点のコレクションから企画展を開催中。とりわけ所蔵品の中でも重要な位置を占めるのが、フランスのアール・ヌーヴォーを代表する工芸作家、エミール・ガレの作品群だ。草花をモチーフにした麗しいガレ工房の作品は、各ヴィラにも飾られている。さらに、世界初という可動展示室も。まるで海に浮かぶ島々のように、8つのカラフルなキューブが水盤に並んでいる。7つのパターンに配置を変えることができ、訪れるたび新鮮な景観に。各室をつなぐ廊下の窓からは、ガラスや水面に映るキューブが幻想的な表情を見せてくれる。大胆な木組みに目を奪われるエントランスにはミュージアムショップも設けられ、ユニークな建築をモチーフにしたグッズを選ぶのも楽しい。
アートと自然が溶け合う新感覚のアート・オーベルジュ。美術館の利用もオールインクルーシブのため、ぜひ聖地をめぐる旅の最終目的地に選んで、ゆっくり時間をかけて過ごしたい。
ハーブを添えた“食べる広島のアート”
<Restaurant>
卵料理が選べる身体が喜ぶ朝食
スクランブルエッグ、目玉焼、オムレツの3種から選べる卵料理に、サラダやフルーツ、ヨーグルト、スムージー、自家製パンなどが身体を目覚めさせてくれる
目玉のアートは景色との調和で完成する
<Museum>
自然を愛した工芸家、
エミール・ガレの世界を庭園に
下瀬美術館ではゆったり配置したガラスケースによって、立体作品は360度鑑賞可能(写真上)。コレクションの中心となるエミール・ガレの作品には、植物モチーフが多い。登場する植物を中心にランドスケープデザイナー・団塚栄喜さんがデザイン
聖地旅の最後は建築やアートを持ち帰る
<Shop>
光注ぐ大空間でお気に入りを探したい
檜の集成材が柱と梁を兼ね、まるで大木のような曲線を描くエントランス。木漏れ日のように自然光が降り注ぐ一画にミュージアムショップがあり、独創的な品が集う
読了ライン
Simose Art Garden Villa
住所|広島県大竹市晴海2-10-50
Tel|0120-907-090
客室数|10棟
料金|1泊2食付7万円〜(税・サ込)
カード|AMEX、DINNERS、JCB、Master、UC、VISAなど
IN|15:00
OUT|11:00
夕食|レストラン
朝食|レストラン
アクセス|飛行機/岩国錦帯橋空港から車で約25分 電車/JR玖波駅から車で約10分
施設|レストラン、美術館、カフェ、ショップ、ジム、テラス、ラウンジ
https://artsimose.jp
1|海に浮かぶかのように建つ広島《嚴島神社》前編
2|海に浮かぶかのように建つ広島《嚴島神社》後編
3|歩くたびご利益に出合う、空海ゆかりの聖地《弥山》
4|建築家・坂 茂が手掛けた自然を取り込む宿《Simose Art Garden Villa》前編
5|建築家・坂 茂が手掛けた自然を取り込む宿《Simose Art Garden Villa》後編
text: Kaori Nagano(Arika Inc.) photo: Yuta Togo
Discover Japan 2023年8月号「夏の聖地めぐり。」