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建築家・坂茂が手掛けた自然を取り込む宿
《Simose Art Garden Villa》|前編
建築×自然でめぐる神宿る島・宮島

2023.9.12
建築家・坂茂が手掛けた自然を取り込む宿<br>《Simose Art Garden Villa》|前編<br><small>建築×自然でめぐる神宿る島・宮島</small>
©SIMOSE

広島にある日本三景のひとつ「安芸の宮島」。G7広島サミットの際、各国首脳が訪れたことであらためて注目されたここは、古来「神を斎き奉る島」として、篤く信仰されてきた聖地である。
 
2023年4月、宮島の対岸に美術館・レストラン・ヴィラが融合したアート・オーベルジュが開業。坂 茂さん設計の空間で、感性を刺激する滞在がかなう。

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聖地を見渡す名建築に泊まる

鳥のさえずりに包まれる『壁のない家』。家の三方を囲む引き戸を開け放てば周囲の樹々と一体となり、その先には穏やかな海、そして神宿る島・宮島が横たわる

瀬戸内海を挟んで宮島と向かい合う広島県大竹市晴海に、美術館とレストラン、ヴィラが融合した「Simose Art Garden Villa」はある。この施設全体の設計を手掛けているのは、紙管を用いた建築をはじめ、建築では珍しい素材も操る建築家の坂 茂さん。広大な敷地の中でも注目なのが、坂さんがかつてつくった別荘のリメイクに新作を加えた個性的なヴィラ10棟だ。
 
美術館と庭園を囲うように配された水辺と森のエリア。そこに点在するヴィラは、どれもゆったりと過ごせるように設計されており、瀬戸内海と宮島の眺めが伸びやかに広がる。
 
森に包まれるような感覚の『壁のない家』、風を受けながら檜風呂が楽しめる『十字壁の家』、不思議な断面の木の構造材をあらわにして光を取り込む『キールステックの家』など、どれひとつとして同じものはない。客室には、坂さん設計のナチュラルな色合いの家具も配され、坂建築のファンはもちろん、旅先で自然とアート両方を味わいたい人にもたまらない。10種以上の桜をはじめ四季折々に花をつける樹々やハーブ、鳥のさえずりに囲まれる、まさに自然と調和するヴィラ。澄んだ空気と心潤う環境に、思わず深呼吸したくなることだろう。

どの建築作品に滞在したい?
<Villa>

©SIMOSE

『壁のない家』
1997年に軽井沢の傾斜面に建てられた、別荘を元にしたヴィラ。外壁の代わりにガラスの引き戸が囲み、開け放つと樹々や海、空とつながる。リビング奥には寝室があり、ベッドリネンは伊国・FRETTE製を採用

『十字壁の家』
2枚の壁を十字に組み、その壁に寝室や各室のボリュームを取り付けた坂さんの新作。地面からカラフルな箱が浮いたように見える。3階のバスリビングには、檜風呂とデイベッドが。酒を片手に海を眺めつつ至福の時を。

©SIMOSE

『キールステックの家』
水盤に面した水辺のヴィラは、船の竜骨(キール)に似た特徴的な断面をもつオーストリアの木造素材・Kielstegを、壁や屋根などに使った新作だ。室内や浴室に、木漏れ日のような柔らかな光が注ぎ込む

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text: Kaori Nagano(Arika Inc.) photo: Yuta Togo
Discover Japan 2023年8月号「夏の聖地めぐり。」

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