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温泉好きなら知っておきたい!
旅で役立つ温泉基礎知識
完全保存版!プロ厳選のいい風呂とサウナ
【Column 2】

2023.3.23
温泉好きなら知っておきたい!<br>旅で役立つ温泉基礎知識<br><small>完全保存版!プロ厳選のいい風呂とサウナ<br>【Column 2】</small>

温泉をより深く楽しむために知っておきたい知識を、温泉教授こと、松田忠徳さんにうかがう。今回のテーマは、「旅で役立つ温泉基礎知識」。知っているようで知らない温泉の定義や入浴法を学ぼう。

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そもそも温泉の定義知っていますか?

温泉とは湧出する温水、鉱水、水蒸気、その他ガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)であり、かつ泉源で採取された温度が摂氏25度以上、または下の表の物質をひとつでも規定量以上含むものと定義されている

含有成分以外でも細かく分類できる!
<泉温>
泉源から湧出する源泉の温度により、「冷鉱泉」、「低温泉」、「温泉」、「高温泉」に分類。温泉の中でも37〜40℃の「ぬる湯」は、副交感神経を優位にし、リラックス効果を高める

<水素イオン濃度>
一般的にいう「美肌の湯」は、pH(水素イオン濃度)7.5〜8.5の弱アルカリ性泉が中心。ただし成分が多くなくとも、源泉かけ流しの温泉であれば肌に優しい感触が楽しめる

<浸透圧>
高張泉は細胞膜を通じて含有成分が、低張泉は水分が体内に入りやすい温泉。等張泉は入浴者に負担の少ない温泉といえる。また人体に作用する刺激が強い泉質を「緊張性」、弱い泉質を「緩和性」と大別することも

温泉力を見極めたいなら
温泉分析書を確認すべし!

温泉の質や成分を知る上で重要なのが「温泉分析書」。脱衣所などに掲示されているため、内容をしっかりチェックしよう。しかしこの内容は「源泉」について書かれたもので、「浴槽の湯」が完全に同じものとは限らない。

【温泉分析書】
1 適応症:神経痛、筋肉痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、うちみ、くじき、疲労回復、冷え性、慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、やけど。

2 禁忌症:急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、
悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全。

3 入浴時の注意:
(1) 熱い温泉に急に入ると、
めまいなどを起こすことがあるので十分注意をすること。
(2) 入浴時間は入浴温度により異なるが、
はじめは3分ないし10分ほどとし、慣れるに従って延長してもよい。

4 泉質:塩化物泉
5 pH値:8.1
6 泉温:63.3℃(気温17℃)
7 湧出形態:掘削自噴
8 給湯方式:完全放流式
9 浴槽温度:39〜42℃

10 温泉の処理:源泉温度が高いので加水・加温は行っておりません。
衛生管理のため循環ろ過装置を使用しています。
衛生管理のため塩素系薬剤で消毒しています。

温泉分析書の確認ポイント

1 適応症
泉質を問わず共通する「一般的適応症」と、泉質ごとに定められた「泉質別適応症」がある

2 禁忌症
ここに書かれた症状に該当する方は、入浴を控えること

3 入浴時の注意
1日あたりの入浴回数や入浴時間など、入浴する際の注意事項が記されている

4 泉質
10種類に分類。効能は、それぞれに泉質固有の泉質別適応症がある

5 pH値
源泉の水素イオン濃度を示す。数値が小さいほど酸性、大きいほどアルカリ性が強い

6 泉温
測定時における外気の気温と、測定した際の源泉の温度が記載されている

7 湧出形態
温泉が自然に地上へ湧き出ている場合は「自然湧出」、ボーリングなどで人工掘削後に自力で湧出する場合は「掘削自噴」、人工掘削後に動力でくみ上げる温泉は「掘削・動力揚湯」となる。湧出量の記載がある場合も

8 給湯方式
「完全放流式」、「循環方式」、「放流方式と循環方式の併用」がある。完全放流式は源泉かけ流しの温泉で、加水も加温も行っていない100%源泉かけ流しこそ、温泉本来の利用形態といえる。循環方式は同じ温泉をろ過循環器に通し、塩素系薬剤で殺菌消毒しながら何度も何日も使い回す方式だ。併用の場合もあるが、それは基本的に循環湯が主である

9 浴槽温度
実際に浴槽に入れられている温泉の温度を表記している。源泉の温度とは異なる

10 温泉の処理
源泉温度が高い場合は水を加えて「加水」、低い場合は「加温」をしていることが多い。源泉温度が高くとも、湯口を絞って冷ましたり、成分が濃密過ぎるためあえて水で割っている温泉もある。また、「入浴剤や消毒処理の有無」、「温泉利用施設及び浴槽の清掃状況」、「湯の入れ替え頻度」、「飲用の適否」などの情報もここに記載される

温泉教授流!
温泉分析表に隠された温泉の見抜き方

「『源泉』と『浴槽のお湯』が別物になることはしばしば。温度調節や湯量アップのために水を加えたり、循環風呂なら殺菌を目的に薬剤を投入したり、遠くの温泉地から湯を運んできたり、それらは温泉分析書には反映されません。温泉は生もの。地上に湧出して酸素に触れると酸化が進み、成分が劣化した温泉になってしまいます。水増しや殺菌も避けたい。『源泉率』を確認し、100%源泉かけ流しの“ホンモノ”の温泉を選びたいですね」

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《完全保存版!プロ厳選のいい風呂とサウナ》
1|歴史からひも解く日本人と温泉の関係性
2|温泉好きなら知っておきたい!旅で役立つ温泉基礎知識
3|身体に合う泉質を知れば湯治効果も倍増!
4|伝統的な入浴法

supervision: Tadanori Matsuda text: Nao Ohmori photo: Kei Sugimoto(main photo)
Discover Japan 2023年2月号「癒しの旅と温泉。」

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