《阿部春弥 個展》
骨董のような佇まいが食卓に華を添える
暮らしに馴染む陶芸家・阿部春弥(あべはるや)さんのうつわ。前から食器棚にあったかのように、使いやすく親しみやすい。しかし、ふとした時に食卓がセンスアップしていると気がつくのだ。
東京・渋谷パルコのDiscover Japan Lab.と公式オンラインショップでは、2022年11月6日(日)〜11月20日(日)にかけて「阿部春弥 個展」を開催。個展に際して、阿部さんの制作背景や取扱い作品ラインアップを紹介します。
阿部春弥・みか
左)阿部春弥さん。1982年、長野県生まれ。愛知県立窯業高等技術専門校修了後、備前陶芸家・山本出さんに師事。2004年に独立。右)阿部みかさん。1978年、愛知県生まれ。愛知県立窯業高等技術専門校修了後、Fitz&Floyd社にて原型師として勤務。2007年に夫の春弥さんとともに三窯設立。
手間暇が生み出す、骨董のような佇まい
陶芸家・阿部春弥さんの工房があるのは長野県上田市。自身が生まれ育ったこの地に窯を構え、裏山にすむ鳥のさえずりに耳を傾けながら、作陶を続けている。
陶芸家の父をもち、幼少期から焼物は身近にあった。しかし4兄弟の末っ子である阿部さんにとって、陶芸家は「兄が継ぐ仕事」という認識。ものづくりに興味を抱くこともなかったという。「将来は料理人に」と、職業を意識するようになった高校時代、阿部さんに転機が訪れる。
「陶芸の修業をしていた兄が、別の道を歩むことになったんです。それならば自分が焼物をやるという選択肢もあるなと思って」
高校卒業後は陶芸の訓練校へ入校。修了後、備前焼作家の山本さんの下へ弟子入りをする。
「陶芸家というと僕は父の背中しか見ていません。ほかの陶芸家がどのような生き方をしているのか、間近で感じたかったんです。山本先生の工房にいたのは約3年。仕事に対する真摯な姿勢など、多くを学ばせていただきました」
上田市に戻った阿部さんは、2004年に独立。「暮らしの中で使えるうつわがつくりたい」と、作家としての想いを掲げた。
「僕がつくるのは磁器のうつわです。磁器は扱いやすく、耐久性に優れ、再現性が高いため、普段使いのうつわに適している。数枚揃えた皿が10年後に1枚欠けたとしても、同じ皿を買い足してもらえる仕事がしたいんです」
ゆえに阿部さんのうつわは、基本的に廃盤がない。少しずつ買い足していくのも、楽しみとなる。
「作陶をする上で大切にしているのは、『一つひとつ』の考え方。一つひとつに手を抜かず、うつわと向き合っていきます」
料理を引き立てる
“ちょうどよさ”を 追求して
阿部さんがつくるうつわは、非常に使い勝手がよい。ジャンルを問わずさまざまな料理と馴染み、陶器やガラス、木製品など手持ちのうつわとの相性も抜群。主役にも脇役にもなれる個性をもちながらも、主張し過ぎることはなく、食卓に溶け込んでいく。
「作家としてのオリジナリティや想いなどは、前に出てこなくてよいと思っています。僕のうつわに料理を盛って、『すてきだな』、『美味しそうだな』と感じてくださることがベストですから」
サイズは5.5寸や7.5寸など、一般的なうつわよりやや大きめ。盛りつけた際に余白が生まれ、料理を引き立てる。皿の縁も立ち上がっているため、多少汁気のある料理でも安心して使えるのがうれしい。色合いは食卓に並ぶほかのうつわとうまく調和するよう、釉薬を調合していったという。
「植物や花をモチーフにした文様が多いのも同じ理由です。料理とのバランスが取りやすいので」
これらは阿部さん自身が料理をする中で、導き出したもの。だからこそ自然と使用頻度の高まるうつわが生み出せるのだろう。
「僕のうつわは、決して派手ではありません。だけど『食卓にあると安心するな』と感じていただけるうつわを、ずっとつくっていけたらいいなと思っています」
冬の食卓に迎えよう!
≫阿部春弥 作品ラインアップ
阿部春弥 個展
会期|2022年11月6日(日)〜11月20日(日)※11月18日(金)は阿部さんも在廊予定
会場|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00〜21:00(〜11月17日は11:00〜20:00)
定休日|不定休
※新情報は公式Instagram(@discoverjapan_lab)でも随時紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
※掲載商品は一部であり、店頭にはさまざまなうつわが並びます
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text: Nao Ohmori photo: Shimpei Fukazawa
2022年12月号「一生ものこそエシカル。」