岩手《道の駅 平泉》
地域活性化につながる「木造」 道の駅

岩手県の南部に位置し、世界文化遺産に登録された「中尊寺」など数多くの国宝や重要文化財を保有する歴史の町、平泉町に設置されている「道の駅 平泉」は、地元平泉町の新鮮な農産物や、地産の新鮮野菜を使ったレストラン、人気のどぶろくなどが揃う。設計を手がけたのは、歴史や風土、文化を継承した建築を行う、関・空間設計。黒に金色が混じった外観は、町にしっくりなじみ、広々として木の温もり感じる空間は、岩手産材をふんだんに使用。北東北の観光ゲートウェイとして広域的な情報や平泉の世界文化遺産をはじめとする町内の情報を発信する「道の駅 平泉町」の魅力を紹介しよう。

関・空間設計
その場に“かけがえのない建築”をつくり続けていくこと「Spilit　Of　Place」を理念として活動。「岡設計・仙台支店」として1960年に開設。1996年に分離独立し「関・空間設計」と社名変更し現在に至る。社員数30人の組織設計事務所。東北6県を中心に多様なスタッフが巾広く設計活動を行っており、公共建築を中心に受賞歴多数。
http://www.sopnet.co.jp/

黄金花咲く理想郷

東北自動車道の平泉前沢ICから国道4号線を南に4km、岩手県南部の平泉町は岩手県で最も小さな市町村。東西に約10km、南北に約6km、県内で最も広い宮古市と比べると面積は約20分の1ほどだ。

平泉町は言わずと知れた奥州藤原氏時代の歴史文化が色濃く残る世界遺産の町。道の駅平泉は世界遺産を中心としたまちづくり事業の中で「情報発信」「史跡めぐり（観光回遊）」「地域連携」など多様な機能を結びつける平泉の拠点「ゲートウェイ」となる大切な役割を担っている。

敷地は交通量の多い国道4号線沿いにありながら、敷地西側に隣接して奥州藤原氏時代に政を司った柳之御所遺跡が隣接し、商業施設としての顔を国道側に向けながら遺跡側からは歴史的風景に配慮したデザインが求められた。

関・空間設計はこの建築を通して平泉の歴史文化の継承と未来の価値創造・向上に貢献したいと考えたそうだ。

地域特性や周辺環境との調和

集客施設としてのにぎわいが求められる国道4号線側は入母屋屋根の妻側を向けて人を迎える表情を創り出し、歴史的景観との調和が求められる柳之御所遺跡側は風景に馴染む大屋根の控えめな外観とした。

不整形な敷地形状を活かした三角形の平面形状は、伸びやかに大地に浮遊する美しい屋根の建築を生み出した。

浮遊する木の大屋根に覆われたにぎわいの空間

施設には、地域の特産物や農産物を販売する物産館、地元食材を提供するレストラン、道路観光情報施設、24時間利用可能なトイレなどが備わっている。

サービス機能のスクリーンとなる杉板の大壁に沿って駐車場から柳之御所遺跡に抜ける利用者動線と各集客機能をレイアウトし、大屋根下のゆったりとした居心地の良い空間を体験しながら柳之所遺跡の大きな空に抜けるシークエンスを演出。

魅力的な「木造」道の駅

岩手産木材を最大限活用した木造の道の駅。大きな集成材の柱梁で建物の力技のフレームをつくるのではなく、無理のないスパンで柱を立て、柱方杖をつけることで梁の支持長さを短くするなどの工夫で断面の小さな一般流通製材を使って繊細に、また経済的に建物をつくり上げた。

木柱が林立し、木の持つ親しみ美しさを感じる明るく開放的な木造空間をデザインへ。

岩手県を訪れた際には、平泉のお土産、岩手県内のお土産を数多く取り揃えている「道の駅 平泉」に、立ち寄ってみてはいかがだろうか。

道の駅 平泉
住所｜岩手県西磐井郡平泉町平泉伽羅楽112-2
Tel｜0191-48-4795
店舗・売店｜4〜11月 9:00~18:00、12〜3月 9:00〜17:00
レストラン｜6:00〜8:30、11:00〜18:00（ラストオーダー17:00）
休憩所｜24時間利用可能
https://hiraizumi.town/

Photo:川澄・小林研二写真事務所