尾道「LOG」世界的建築集団スタジオ・ムンバイが手掛けた新空間 ~前編~
2018年12月、広島県は尾道にホテルやカフェギャラリーなどを有するひとつの複合施設がオープンしました。世界的に注目されるインドの建築集団「スタジオ・ムンバイ」が、昭和38年に建てられたアパートメントをどうよみがえらせるのか。「尾道の山の手にあかりを灯す」多目的空間の全貌を前後編記事にて一挙公開。
旅行客と地域の人が行き交う
多目的空間が誕生
2018年12月7日、尾道の千光寺につながる坂道の途中に、宿泊のできる複合施設「LOG」がオープンした。集合住宅として昭和38年に建てられたアパートを、インドの建築集団「スタジオ・ムンバイ」が再構築。インド国外ではじめて取り組む建築プロジェクトとして注目を浴びている。
地上3階、延床面積1180㎡の建造物に、ダイニングやカフェ&バー、ショップ、ライブラリー、ギャラリー、ゲストルームを備える。アパートの部屋数は24戸あったにもかかわらず、LOGの客室はわずか6室。面積の約半分をカフェやピロティ、庭などのパブリックスペースが占めるという、贅沢なつくりになっている。
というのも、LOGは旅行客だけでなく尾道に暮らす人々が足を運び、人と人とが交差する場として計画。3階を宿泊客専用にすることでゲストのプライベートを確保しているが、パブリックスペースは地域の人々の憩いの場としての役割も担っている。そのことからもLOGが一般的なホテルではなく“宿泊も可能な多目的空間”であることがわかるだろう。
地域の課題になっていた建物が
人の才能が発揮できる場に変わった。
日本とインドの、技とセンスが融合
風景の一部になる
“空間づくり”を目指す
「スタジオ・ムンバイのビジョイさんは、『建物が重要なわけではない。建物は、ただの箱で、人が集まる空間をつくっているんだ』とよく言っていました。尾道に観光に来た宿泊ゲストもいれば、散歩がてらにお茶を飲みにくる地域の方もいるし、イベントを目的に足を運んでくれる若者もいる。それらの人が行き交い、交差する風景をLOGの日常にしたいと思っています」
そう語るのは、事業責任者である吉田挙誠さん。空き家の多い尾道の山の手側を開かれた場にすべく、「スタジオ・ムンバイ」に協力を求めた。
「ビジョイさんは、インドで地域の職人を雇用しながらチームで、しかも手作業でものづくりを進めています。それは左官をはじめ、さまざまな日本の伝統技術にも通ずるものがあります。ビジョイさんがかじを取って職人たちが手を動かす。その“人の手の力”が残る仕事によって、尾道の歴史や景観と調和するような、温もりのある空間をつくることができると考えました」
ビジョイさんの建築スタイルは、現場を仕切る吉田さんにとってはじめての経験の連続だった。図面はあるものの図面通りに進むことはなく、建築チームと私たちと職人が現場でサンプルをつくりながら検証し、変更になることも日常茶飯事。外壁の色が決定するまでには3カ月を要し、取り壊した中庭の建物の土壁や瓦を再利用することにもなった。映画の上映やイベントを行うために円形劇場をイメージした中庭をつくる予定だが、オープンから2カ月が経った現在も、まだできていない。スケジュールを考えるとはじめは戸惑いもあったというが、何度も現場に足を運び、納得がいくまで検証するビジョイさんの姿勢は、プロジェクトに携わる人々のものづくりへの意識を高めていったという。
「開業から約1カ月経った頃に現場を見たとき、彼は『いまは80%の状態。これから95%まで仕上げていこう』と言っていました。ゆっくり時間をかけて尾道のランドスケープの一部となり、15年ほどの歳月をかけて土地となじんでいけたらいいと、ビジョイさんもお話していました」。
LOGの全貌を大公開!
個性あふれる空間の集合体でもあるLOG。ゲストルームのある3階以外は宿泊者でなくとも利用できる。訪れれば、各空間の扉を開くたびに驚きと感動を味わえるだろう。
共用部
ダイニング・カフェ&バー
ピロティ
ゲストルーム
読了ライン
LOG
住所|広島県尾道市東土堂町11-12
Tel|0848-24-6669
料金|1泊3万5000円〜(素泊まり、税別・サ込、客室料金。最大4名利用可)
カード|AMEX、DINERS、JCB、MASTER、VISAほか
チェックイン|15:00~20:00 チェックアウト|11:00
アクセス|車/山陽自動車道尾道IC福山西ICから15分
電車/JR尾道駅からタクシーで5分、またはJR新尾道駅からタクシーで15分
施設|ダイニング、プライベートダイニング、カフェ&バー、ショップ、ギャラリー、ライブラリー インターネット|Wi-Fi
https://l-og.jp
※ダイニングでの朝食・夕食は宿泊者限定
※営業時間は9:00〜23:00(施設によって異なる)
text : Akiko Yamamoto photo : Noriyuki Araki, Fuminari Yoshitsugu
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