FOOD

沖縄県 南島製菓の
琉球菓子「こんぺん」と「桃菓子」
《菓子研究家・福田里香の民芸お菓子巡礼》

2025.5.1
沖縄県 南島製菓の<br>琉球菓子「こんぺん」と「桃菓子」<br><small>《菓子研究家・福田里香の民芸お菓子巡礼》</small>
平たいこんぺんは大小の2種類がある。桃菓子は皮の頂点から底にひと筋入ることで桃のかたちを表す造形美に感嘆

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香ふくだりかさんの《民芸お菓子巡礼》。今回は沖縄県にある琉球菓子の老舗・南島製菓の「こんぺん」と「桃菓子」をご紹介。

福田里香(ふくだ りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。15年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中。

こんぺんの断面。沖縄方言では「くんぴん」と発音。大146円、小130円

GWに沖縄旅行を計画中の皆さまへ。ぜひお立ち寄りいただきたい、民芸お菓子的菓子舗をご紹介します。1930年代後半に沖縄を訪れた柳宗悦はこの地の工芸品に深く魅せられました。柳の収蔵品には19世紀以前の琉球王朝時代の品が多く、極彩色の紅型びんがた染めの衣装は圧巻。では琉球王朝にはどんな甘味があったのでしょう?

「南島製菓」は柳が絶賛した王朝文化の味を伝える名店です。琉球王朝時代、国外からの訪問者や貴人のもてなしに供していた高級焼菓子が平らに丸い「こんぺん」と円錐形の「桃菓子」です。

こんぺんは中華菓子の光餅くんぺんが由来といわれ、小麦皮に煎り白ゴマと砂糖、県産黒糖というあんを詰めた滋味深い伝統菓子。桃菓子は小麦皮でゴマを混ぜたこしあんを包んでいます。桃形は中国からの影響でつくりはじめたと伝わっているそう。桃は百々とも記されることから、百年前の先祖から続く百年先の子孫の繁栄を祈るという意味が込められています。どちらも旧暦行事に食される祝い菓子。しっとりと香ばしく絶妙な味わい。

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桃菓子の断面。146円

南島製菓
住所|沖縄県那覇市松尾2-11-28 浮島通り
Tel|098-863-3717
営業時間|9:00~18:00、日曜10:00〜17:00
定休日|なし
https://www.nantou-seika.com/

text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2025年5月号「世界を魅了するニッポンの香り」

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