岡山の銘品「児島産ジーンズ」をはこう。
モノ選びを考えるいまだからこそ選びたい
岡山県倉敷市の南側に位置する児島は、日本が誇る国産ジーンズの生産地として知られている。私たちが慣れ親しんでいる国産ジーンズ発祥の地で、銘品が生み出される秘密を探った。
お話をうかがった人
JAPAN DENIM DAYS
実行委員長、ジャパンブルー/桃太郎ジーンズ創設者
眞鍋寿男さん
一本の通りからはじまる
夢がかなう町づくり
江戸時代の綿栽培にはじまり、明治には足袋、大正・昭和には学生服の一大生産地という独特な背景をもつ繊維の町・児島。1973年には服飾メーカーのマルオ被服(現・ビッグジョン)が日本初の純国産ジーンズを生み出し、「国産ジーンズの発祥地」として知られている。
「児島のようにジーンズのすべてを同じエリアで完結できる場所は、実は日本でも世界でも珍しい。だから、その強みを地域の目玉として産業観光の分野で役立てたかったのです。寂れていた商店街を日本一のジーンズストリートにしようと考えました」と話すのは、ジーンズストリートの生みの親・眞鍋寿男さん。2009年に彼が手掛けた通りには、個性的なジーンズショップが並び、通りをまたいで吊るされた、たくさんのジーンズが、観光客を出迎える。
「現在では、約40店舗が参加しています。発案当時は、とにかく大変でした。騒音問題などの住民のクレームに備えて、地域の方々を説得し、行政に足を運び、店舗の賃料の交渉や入店希望者を募りました。次第に参加者が増え、10店舗を超える頃には、希望者が多くて抽選を行うほど人気でしたね」と、眞鍋さんは当時を回想する。つくり手の高齢化や継承者の不足などさまざまな課題を抱える日本において、世界からも注目される児島産ジーンズの存在は希望だ。デニム加工の集積地という強みを生かし、地域が一体化することで、新製品や新技術が生み出されている。また最近では、SDGsの取り組みがアパレル産業でも急務となっているが、「児島の繊維産業には、昔から環境や資源に対しての高い意識がありました。さらに言えば私たち日本人には、古くから『もったいない』という精神がありますからね」とSDGsへの取り組みにも自信を示す。
「コロナ禍で大変な時期ですが、ジーンズストリートを中心に、ジーンズにかかわりたい人たちが、夢をかなえられるステップアップの場所であり続けたいですね」
つくり手の熱い思いが込もった児島産ジーンズに再注目したい。
児島を代表するジーンズメーカー
JAPAN BLUE
テキスタイルメーカーのジャパンブルーは、自社の長所を生かした桃太郎ジーンズ(2006年〜)や、ジャパンブルー ジーンズ(’11年〜)などオリジナルブランドも展開する会社。中でも、シャトル織機と呼ばれる旧型織機である豊田自動織機製G型自動織機「GL9」9台を稼働した、本物のセルビッチデニムに定評があり、国内はもちろん、海外の有名ブランドからのオファーも多い。綿、紡績、染色、織布、裁断、縫製、加工のすべてにこだわり、日本の伝統的なものづくりを次世代に引き継ぐための技術や職人の育成にも励んでいる。
ジャパンブルー本社
本社|岡山県倉敷市児島味野4048-2
Tel|086-476-8555
国産ジーンズの第1号
BIG JOHN
ビッグジョンは、1965年に米国のキャントンミルズの生地を使用し、国産ジーンズ第1号を生産したメーカー。ジーンズストリートでは、最大の売り場面積を誇り、ファクトリーをイメージした店内は、デニムの雑貨づくりやインディゴ染めの体験コーナーに加え、職人が実際に作業しているコーナーも併設されている。
ビッグジョン
本社|岡山県倉敷市児島田の口4-11-31
Tel|086-477-3800
デニム加工のパイオニア
豊和(ほうわ)
豊和は、現在では当たり前に使われているストーンウォッシュ加工を1970年代後半に生み出した、児島を代表する企業。開発当時は、さまざまな物で実験的に試験をし、たどり着いたのが軽石だったそう。現在では、資源(水使用量)の削減化と効率化に取り組み、よりサステイナブルなモノづくりを目標に掲げている。
豊和
本社|岡山県倉敷市児島田の口4-4-18
Tel|086-477-6501
レディースデニムの概念を生んだ
Betty Smith
ジーンズの加工技術を得意とする児島で、レディースジーンズの火付け役となったのがベティスミス。ビッグジョンのガールフレンド役をイメージしたキャラクターを元に、国産ブランドとして人気を博した。現在は、ジーンズミュージアム&ファクトリーをオープンさせマニアからファミリーまで幅広い層に支持されている。
ベティスミス
本社|岡山県倉敷市児島下の町5-2-70
Tel|086-473-4460
独自の加工を発展させる
WHOVAL
フーヴァルは、薬品・水を減らした色落ち加工技術であるナノミスト加工などの洗い加工を手掛ける。それらの技術を結集したオリジナルブランドのBLUE SAKURAは、ジーンズストリートにもショップを展開。また、昨年の東京オリンピックでは、正式種目になったBMXフリースタイル・パークのライダー用ジーンズを手掛けた。
WHOVAL
本社|岡山県倉敷市児島下の町5-1-50
Tel|086-474-0080
Youtubeでトークショーが観られます!
眞鍋さんと小誌編集長・高橋俊宏が、産地内のつくり手に向けてトークショーを行いました。読者の皆さんにも、児島産ジーンズのディープな話題をお届けします。ぜひ観てください!
text: Shigeo Kanno photo: Kazuya Hayashi
2022年4月号「身体と心をととのえる春旅へ。」