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「角上楼」フグの名産地、愛知県渥美半島の名宿でフグ三昧。

2020.8.5
「角上楼」フグの名産地、愛知県渥美半島の名宿でフグ三昧。
三河湾の天然とらふぐ

愛知県田原市福江。この地名を聞いて、すぐにその場所が頭に浮かぶ人はさほど多くないだろうが、伊良湖岬のほど近く、と聞けば大方の方には、そのおおよそのありかがわかるに違いない。

渥美半島の西南端にほど近く、古い街並みの中に、ぽつんと佇む宿、それが「和味の宿 角上楼」である。

映画「釣りバカ日誌2」の舞台になった、本館の「萩」(定員6名)。部屋付きの広々とした露天風呂を眺めるのは、10畳の和室。写真左手に8畳の和洋室があり、ベッドが設けられている

和味。その名に恥じない美食の宿である。豊かな自然に恵まれた立地ゆえ、四季を通してウマイものにありつけるが、とりわけ冬のフグは多くの人気を集めている。フグといって、誰もが思い浮かべるのは長州、下関だろう。

南風泊の市場で行われる袋競り。独特のダミ声は冬の風物詩にさえなっている。だが、そのフグの幾らかは、この地から送られたものだと聞けば、伊良湖のフグがいかに豊潤であるかがわかる。雄大な海にはきっと、フグが安らかに育つ環境が備わっているのだろう。

調理場を覗き見ると、大きなフグが横たわっている。自らの腕を振う主人の言葉では、フグの味を決めるのは、漁場の土壌、潮流、それによって生み出される魚体だと。

8㎏にも及ぶ巨大なフグ。中庭に面した食事処で次々と繰り出されるフグ料理の数々。もしもこれを東京で食べるとなれば、はたしていくらかかるだろうかと、下世話な考えがつい頭をよぎる。それほどに贅沢、かつ大胆なフグ料理なのである。

天然のトラフグをコースで贅沢に味わう

御造り。フグ料理の花形といえば、てっさ。身が固いため薄づくりにされ、盛りつけられる。皮や身の湯引きも添えられ、もみじおろし、スダチ、ねぎとともにいただく

華麗なるフグコースは、先付の「フグの皮の湯引き」からはじまる。立派な魚体からは想像もできないほどに繊細な味わい。白身魚のもつ淡白さに、ねっとりとしたコラーゲンの旨みが重なる。

季節を彩る前菜を挟んで、次なる皿は、いきなりメインディッシュにも匹敵する大皿盛りの「てっさ」。藍染めの皿が透けて見えるのもお約束。一枚、一枚丁寧に剥がすもよし、ガッツリとオトナ食いもいい。しっかりとした歯応えとフグならではの旨みが織りなす二重奏。目で愉しみ、舌で味わうてっさに思わず笑みがこぼれる。

焼物(別注)。フグを渥美大根のおろしと浅ねぎとともにいただく、角上楼の名物が焼きふぐ。トラフグをたたきにしたようなもので、レアでも、よく焼いても美味しい

旅館料理の定番ともいえる「茶碗蒸し」にもまた、フグがふんだんに使われ、「炭火焼」へと移る。

多くのフグ料理店で出される焼きフグは、骨付きのアラ身を網に載せる。が、この宿では、幾分厚く引いた身にネギを巻いて、炭火で炙る。纏ったポン酢が芳ばしい薫りを漂わせると食べごろのしるし。てっさにわずかに火が通った加減を味わう。いうなればフグたたき。レアに近い焼き加減で味わう。と、こんな具合に、冬の夜はフグづくしの宴が続く。

鍋物。トラフグをまるごといただくフグ鍋。昆布だしにあらと身、地元の野菜をたっぷりと加えた。少し濃い味に仕立てた自家製のぽん酢とよくからむ。シメは雑炊に

とはいえ、この「和味の宿 角上楼」はただ、フグだけを目指す宿ではない。先ず愉しむべきは、その佇まいである。
どこからともなく、潮の香りが漂ってくる、古い街並みの一角にこの宿はある。まるで伊勢湾の関所を構えるかのような半島の岬。

かつては大いに栄えただろう海の街道。その道筋に佇む宿には、往時の名残りが見てとれる。宿の外観、館内のそこかしこに古き良き昭和の空気が漂っている。そしてそれは、昭和レトロという言葉に留まらず、陰影を際立たせる美しさを魅せる。窓の格子、中庭の木々が生み出す木漏れ日。その中に身を置く安らぎの時間。そんな、ゆったりとした時の流れに身を任せるのも、この宿ならではの愉しみ方である。

中庭は「夢見のテラス」と名付けられ、寛ぎのスペースに

そんな懐かしさを踏まえた上で、更に旅人の目を愉しませてくれるのがシャープでモダンな客室のインテリアだったりもする。あるいは別棟に設えた隠れ家のようなバーや見晴らしのいい大浴場も備え、寛ぎの居場所も供してくれる。

著名な観光地でもなく、温泉があるのでもない。「和味の宿 角上楼」は鄙びた地にあって、燻し銀のようにキラリと光る宿だ。

階段の先の鏡には、戦前に愛知県にあったビール会社「カブトビール」の文字が右から。渥美半島の観光案内図も掛けられる
敷地内の一番高い所に建てられた別館 雲上楼の1階にある、大浴場「かすみの湯」(男性)。温泉ではないが、地下150mから組み上げた天竜川の伏流水を使用しており、湯あたりの柔らかさが特徴だ。渥美湾も望める
玄関を入ってすぐ右側にある「タンズルーム」では到着時お菓子と飲み物を頂ける。窓の格子越しの風景が、昭和の風情を思わせる。角上楼らしい風景

和味の宿 角上楼
住所|愛知県田原市福江町下地38
Tel|0531-32-1155
客室数|本館5室、別館雲上楼2室、別館翠上楼3室
料金|本館1泊2食3万240円〜、別館3万5640円〜(2名1室・天然トラフグコース)、食事のみ昼1万4040円、夜1万6200円〜
カード|AMEX、DC、DINERS、JCB、MASTER、VISA
チェックイン|15:00
チェックアウト|11:00
夕食|和食(個室)
朝食|和食(個室)
アクセス|電車/JR東海道新幹線・名古屋鉄道豊橋駅より豊橋鉄道渥美線にて三河田原駅まで35分、三河田原駅からタクシーまたは送迎約30分 車/東名自動車道豊川インターより約90分 船/鳥羽港より伊勢湾フェリー、師崎港または河和港より名鉄海上観光船にて伊良湖港へ、伊良湖港よりバスまたは送迎約15分
インターネット|無線LAN
www.e-yado.co.jp

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トラフグの旨みを余すことなく味わえる
≫最高級天然とらふぐちりセット(4人前)

トラフグの旨みをシンプルに味わえる逸品
≫最高級天然とらふぐてっさ(2人前)

歯ごたえのある最高級トラフグを唐揚げで
≫最高級天然とらふぐ唐揚げ(2人前)

伊良湖産真鯛の甘みを味わう絶品鍋
≫伊良湖産天然真鯛しゃぶしゃぶセット(2人前)

伊良湖産真鯛の甘みを味わう絶品鍋
≫伊良湖産天然真鯛しゃぶしゃぶセット(3人前)

旬な食材が楽しめる、渥美半島の珍味セット
≫海宝味 詰め合わせセット(高級珍味)

text:Hisashi Kashiwai photo:Koh Miyaji
2014年「いま泊まりたいニッポンの名旅館&一流ホテル」

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