オークラ東京から「The Okura Tokyo」へ。
名ホテルはいかに進化したのか?
日本中が見守ったホテルオークラ東京の本館建替えには、温もりあふれる伝統の“ロビー”を残してほしいと願うファンの声が大きな渦となって舞った。そして「令和」を迎え、復元された「The Okura Tokyo(旧:ホテルオークラ東京)」のロビーを見た感動は……。違いがわからないほどの忠実な再現に絶賛の声が響いた。
日本を代表するホテルは
伝統を生かし、新たな展開を見せる
1962年に本館を開業した日本を代表するホテル「ホテルオークラ東京」。その開業は、折しも初の「東京オリンピック」開催(1964年)直前であった。
そして、新元号の“令和”として新たな時代を歩みはじめたいま、「The Okura Tokyo」と名を変え、2019年9月12日に再開業を迎えた。くしくも再び東京オリンピック・パラリンピックのタイミングと重なった。
「建替えはオリンピックが決まる前に決定したことで、本当に偶然なんです」と、広報責任者。偶然ではなく奇跡的だが必然なのかもしれない。
新たなホテルは、地上17階建ての「オークラ ヘリテージウイング」(客室140室)と、地上41階建ての「オークラ プレステージタワー」(客室368室)という2棟で構成されている。
オークラグループ最高峰のラグジュアリーブランドとして、日本の迎賓館的な役割を果たすという「オークラ ヘリテージ」。自国の文化や歴史的遺産、意匠を継承し、プライベートで静謐な空間が演出されている。
一方、ヘリテージとは差別化を図った「オークラ プレステージ」は、コンテンポラリーなラグジュアリーブランドとしての展開である。プレステージブランドはすでに台北とバンコクに展開され、東京では、都会の洗練さに上質なマテリアル、そこに和の魅力がアクセントとして加わった。
総支配人の梅原真次氏に話を聞いた。「今回の建替えをするにあたり、最初から変える部分、変えない部分、変えてはいけない部分がありました。資材が見つからず、建築技術にも苦労はしましたが、ロビーや宴会場は同じ印象になるように再現しています。
細かく言えば見えないところでもいろいろ変わっているのですが、大きく変わったのは、客室、レストランです」。そして、たとえば昔の陶板壁面装飾を再利用するなど、いまでは再現できないような貴重な芸術的意匠を、随所に残していると語る。
伝統の名店も進化して登場
今回の再開業において、重要なコンセプトに「伝統と革新」を掲げた。ホテル内7つの料飲施設にもその哲学が生かされている。意匠はもちろん、料理にも基本を変えず未来へと向かう斬新さが見える。
特にフランス料理「ヌーヴェル・エポック」は内装も含め変化した。日本の食材や発酵食品なども取り入れ「ヘルシー&ガストロノミーという芸術性を追求」と料理長は言う。そして各レストランやバーにも、歴史の分だけファンがいる。まるで“我が店”のように通う上顧客たちだ。
人気の「鉄板焼 さざんか」には、開業を待ち望んだお客が通い、予約も取り難い。日本の高級食材をダイナミックに使い、味つけやソースは繊細という、“鉄板焼を超えた鉄板焼”ともいえる技が光る。カウンター越しに交わす焼き手との会話も弾み顧客満足度が高い。
こうしてホテル全体を遠目に俯瞰すると、オークラが培った伝統やサービスマインドの原型はいまも礎として残っている。
総支配人の梅原氏は言う。「もてなしは、紙一重でもいいからどこよりも上を行くように。それがオークラの魂」と。日本文化の発信地でありたいと願う、本来のオークラスピリットはこうしていまも健在である。
世界が認めるラグジュアリーな施設が揃う
オークラファン必見! 受け継がれる意匠
The Okura Tokyo
住所:東京都港区虎ノ門2-10-4
Tel:03-3582-0111
料金:1室オークラ ヘリテージ11万円〜、オークラ プレステージ7万7000円〜(税別・サ込)
IN:15:00 OUT:12:00
夕食:各レストラン 朝食:各レストラン
アクセス:車/首都高速道路霞が関ランプから約5分 電車/東京メトロ神谷町駅から徒歩6分
文=せきねきょうこ 写真=若原瑞昌
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